『アレキサンドリア・ニューヨーク』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2009-11-12の投稿

アレキサンドリア・ニューヨーク

 

 

米国に文明はあるか

 

「文明とは軍隊の力が作るものではない!」実の息子の前でシルベスタースタローンを批判するヤヒヤ監督。9.11以後、変わり始めた米国への思いを語った自伝映画四作目。かつて米国の映画に憧れ米国の娘に恋した青年。今やその暴虐で多くの同胞を失う。自由至上や科学万能などというくだらない迷信が蔓延り欧米的価値観で目隠しをされた現代人。文化の創作に関わる者として疑問を呈する。スピードだけを加速させる偽物の文明を賛美するなんて自分では何一つ生み出せない野蛮人の詭弁。ツールがなければ何もできない能なしと違って自分の肉体ひとつで創作も表現もできる本当のクリエイターとして大いに共感。文明とは詩人が言葉だけで人の心を動かすように人類が幸せを求めて自らの肉体で積み上げて来たもの。歴史の蓄積に裏付けされず利便性の為に人間らしい幸せを忘れてしまうような産業を文明とは呼べない。シャーマニズムの方がまだ信じるに足る。文明を忘れた今の米国は本末転倒。

 

この作品では晩年にニューヨークで個展を開いたヤヒヤ監督が、かつて学生時代に渡米した先で付き合った女性との間に実の息子が生まれていた事を知り、欧米のメディアに毒されアラブ諸国に批判的な息子との溝を埋めようと奮闘する父の姿が描かれている。「君は女性をナンパする時、わざわざ相手の国籍を尋ねるかね?」政治的に穿った視点で批判する米国のジャーナリストにヤヒヤ監督が返した言葉。その通り。私だって恋に落ちたら相手が中国人だろうが韓国人だろうが関係ない。思想なんかに被れる前に恋でもしなさい。本で読むよりずっと深く相手国の事情が理解できるから。地べたを這いずり回った事がない奴らがいくら客観した所で、それは空論でしかない。どの国にも美しい女性はいる事を知ろう。偏見に閉ざされず互いの美しい文化に触れなければ。シャヒーン監督が最期に発したメッセージ。