接ぎ木の呪い | 台本、雑記置場

台本、雑記置場

声劇台本・宣伝を書き綴っていく予定です。
御用の方はTwitter、mail、またはブログメッセージにてご連絡頂けましたら幸いです。
Twitter:@akiratypeo913
mail:akira3_akira3★yahoo.co.jp ★→@に変えてください


テーマ:

 Kさんの実家には、広大な庭があった。  

 東北地方にあるその家は旧華族の流れを組む古い邸宅で、立派な木が何本も立ち並んでる。 

 半年ほど前、その庭の手入れをしていた祖父が入院してしまった。 

 

 そこで年々手入れが大変になってきた庭を片付け、古くなった老木を処理して貰うために

植木屋を呼んだのだという。

  植木屋の作業が終わったころを見計らって、Kさんは差し入れのお茶を持って行った。

  やってきた植木職人さんは師弟と思しき壮年の男性と、若い青年である。

 二人とも無口なタイプでお茶を受け取っても「どうも」と言うだけで、場に沈黙が訪れた。

 

  居心地の悪さを感じたKさんは家の中に戻ろうかとも思ったが、広い庭を綺麗に手入れしてくれた

職人さんたちをきちんと見送りたい気持ちもあった。 

 

「植木屋さんのお仕事をなさっていて、不思議なことってあったりしますか?」

 

  なんとか間を持たせようと、Kさんは仕事にまつわる話を切り出してみた。 

 

「いや、べつに」

 

  青年のほうはちょっと間を置いて、首を左右に振った。

  失敗したかなぁ、とKさんが作り笑いを返すと、壮年の男性が小さく唸った。

 

 「……接ぎ木かな」 

 

 壮年の男性が、指で頬を何度か掻いた後にぼそりと言ったらしい。 

 

「接ぎ木、ですか?」

 「広い庭園や農家の畑なんかでよく見るけどさ。接ぎ木ってのはあんまり良くないんだ」

 

  接ぎ木というのは、二つ以上の植物を人為的に作った切断面で接着してひとつの植物に

することらしい。

 

「良くない、と言いますと?」 

「あれはさ、人間で言えば自分の身体に他人の腕を植え付けるようなものだろう。

もちろん、上手に適合する時もある。逆に全くダメで、すぐに枯れちまうことも多い」

 

  接ぎ木は植物の相性や行う人の腕次第なのだ、と説明してくれた壮年の男性が、大きく息をついた。 

 

「でも一番良くないのは、接ぎ木が上手くいかなかったのに枯れることもなく育ち続けてしまう状態でね」 

 

 だってそうだろう、と言って男性が自分の身体をさすった。 

 

「自分の腕ではない何かが、ずうっと身体のなかで生きているんだ。

 当然そんなことをされた木は苦しいだろうね」

 「植物でも、そんな風に感じるのでしょうか?」 

 

 Kさんが問いかけると、男性は小さく頷いたという。 

 

「そういう木はさ、ぱっと見た感じは普通の木と変わらない。

 でも、掘り起こして根を見るとわかるんだよ。普通、木の根っていうのは広がって伸びていくだろう。

 だけど、そういう木は違うんだ」

 

  首を傾げるKさんに、植木屋が低い声で言った。

 

 「接ぎ木がうまくいかなかったのに生き延びてしまった木の根は、苦しんで悶えているように絡まって、

 地面の中をのたうち回っている。そういう木は、人を呪うってウワサを聞くよ。こんな身体にした人を、

 苦しいまま育て続ける人を呪い続けるってね」

 

  息を吐いた植木屋が、消え入りそうな声で呟いた。

 

 「……この家のは、大丈夫だと思うんだけどね」

 

  ぞっとしたKさんが、老木の立っていた場所を覗き込んだ。

 今はすでに何もなくなったそこは、深くまで掘り返された土で黒々としていたらしい。

 

  Kさんの祖父が一ヶ月前に他界したことは、彼らには伝えなかったそうだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【当サイトは怖い話や奇妙な話、不思議な体験談を随時募集しております】

お話の投稿先はアメブロのメッセージ、または
Twitter:@akiratypeo913
mail:akira3_akira3★yahoo.co.jp (★→@に変えてください)
 
までご連絡くださいませ。皆様からのお話をお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。