2-3月は休んで過ごしたい | 王様の耳はロバの耳

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ゆがんだかがくしゃのたのしいにっきだよ

留学生にこっそり教えよう。
日本の一年、特に教育がらみの組織はこんな風に過ぎる。

全ては、なぜか4月に始まる。
これは農耕を中心としていた日本の政(まつりごと)に由来すると思われる。
春が来て、めでたい気分でサクラを見て、何もかも忘れるぐらい酒を飲むのだ。
訪問者にとってはこの時期が訪問しやすい時期であると言える。
ただし初めて日本をこの時期に訪問すると、印象が良く成りすぎるので注意だ。

5月にはゴールデンウィークなる休みがやってくる。
冷静に考えれば欧米の春休みが種まき時期に組織的/宗教的に1週間休むのに比べ、
日本の場合はカレンダーで上手くつながった休みを基準に連休が構成される。
つまり運次第と度胸次第では休めるが、そうでなければ逆に精神的苦痛をともなう。
「休み」といいつつ、全業種が休みではないので、サービス業の場合は、逆に苦
役を伴うことも。

6月は雨。とにかく雨だ。
この時期に初めて日本を訪問すると、印象が「熱帯雨林」になる。
運が悪いと7月下旬まで雨が続くこともある。

7-8月は夏休みだ。
学校は休みだが、それにかこつけてどこの観光地に行っても人が一杯。
事務関係は完全に停止するわけではないが、期待してはいけない。
サービス業は忙しすぎて、頭が真っ白になる。
時々来る台風も、まるでイベントを楽しんでいるかのようだ。
外国人にとって楽しいかもしれないのは花火大会と浴衣ぐらいだろう。
それにしてもただ暑いだけではなく、湿度が高く深いきわまりない。
この時期に初めて日本を訪問すると、印象が「サウナ」になる。

夏休みのダメージが大きすぎて、9月の中旬までは正気が戻らない。
夏休みにしっかり勉強をしていた学生は、別人になっている。
夏休みにしっかり遊んでいた学生も、別人になっている。
9月の中旬から突然、思い出したように真面目に事が進む。

10月は日本を過ごすのに一番いい時期かもしれない。
寒くもなく暑くもなく。
夜は長く、何かクリエイティブな作業に集中するのに向いている。
都会を離れれば収穫祭など楽しいイベントに満ちあふれている。

11月もそれほど悪くない。
北の町は冬支度を始めるが、赤く色づく山々も美しい。
そしてすばらしい季節ほど、あっという間に過ぎ去る。

12月は日本がいちばんせわしくなる時期だ。
欧米がクリスマス休暇で家族と過ごす時期に、
日本人は忘年会と称して同僚と酒を飲みまくる。
普段から家族ではなく同僚と晩餐をし、年始も新年会で飲むのに。
宗教観もせわしない。クリスマスを祝い、年神も祝い、神社にも寺にも行く。
大学は特にせわしない。
そもそも日本では12月を「師走」と呼び、先生と呼ばれる職業は走り続ける。
たかだか1月に7日ほど休暇をとるために、そこまで忙しくする必要があるのか。
年賀状の風習はすばらしいが、電子メールの時代に、
さらにストイックな時間と労力をかけすぎる行為ではあるまいか。

1月はめでたい。
せわしない気分が元旦になると突然失せ、日本人は酒と惰眠をむさぼる生物と化す。
テレビは駅伝など目が離せない番組や、ムダな電波を垂れ流し、時間を浪費する。
欧米では2日から市場は動いているのにくらべ、なんと愚鈍な一年のスタートか。
そんな一般の状況とは裏腹に、大学受験生は1月の2週目には大事な試験がある。
年始の急速の巻き返しに、決してヒマではない大学ではあるが、
この試験に大学教員を強制的にかり出したり、学位論文に必死になっている
大学院生を研究室から閉め出したりという不思議な状況も特筆に値する。

そんなわけで2月から3月は、今年のすべてをまとめ、来年の全てを計画する時期
でもある。
しかしどういうわけかこの時期の日本には杉花粉という人間の正常な思考を破壊し、
強制的な睡眠や、鼻水すら制御できない状況を生み出す。
公共の場で手術用のマスクを装備することを許されるため、表情も読めなくなる。
農耕時代で言えば種をまく準備をする重要な時期なのである。
学位論文の審査も、入試の結果も、新入生の受け入れの準備も、来年度の予算とか、
スケジュールとかもうほんとうに大変なことばかり。
でも花粉が日本人の脳を狂わせる。
加えてとんでもなく寒い。また雪が降ると、電車はあっけなく止まる。
この時期に日本に来ると、どうしてこの国がGDP世界第2位なのか疑問に思うはずだ。
しかし年度予算の中でどうしても年内に片付けなければならないものなどがあり、
突然羽振りの良い買い物や、どう考えても1週間ぐらいで仕上げた内容だけれども、
1年分ぐらいの成果を含んだ報告書などが仕上がってくるのもこの時期だ。

まあそんなわけで、日本人、特に教育機関で働く人間の
ライフサイクルを年間を通してみると、こんな感じなのだ。
ちなみに学期が4月で始まることから、会社企業も同じような傾向がある。

つまりこの2-3月に温泉やら海外やらでしっかり休める日本人こそ、
本当の意味で幸福な日本人であると言える。
逆にこの前後2年ぐらい、社会的な立場が期待されていないのかもしれない。
大学生の卒業旅行などは、その最たる例だろう。


・・・というか、本当に休みたいです。
(それがいいたくてこんなに長い話…)
1ヶ月でいいから温泉で湯治していたい。
仕事が激しいからとかじゃなくて、
自分のエンジンがフル回転しないことに腹が立つ。

病院でもらった花粉症の薬がそろそろ効かなくなってきたし。
だいたいこのペースだと4月のサクラの頃は、ほぼ肺炎ってぐらいまで進行する
しなあ…。