保険を活用した法人利益の確保 | 保険日記

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生命保険会社9社、損害保険会社1社の保険代理店経営者です。

昨日は、溝の口のお客様のご契約をいただいたあと、都内の法人のお客様を訪問しました。


この法人のお客様は長年取引きをいただいているのですが、「今期の決算を4月に控え、収益状況が厳しいので相談をしたい。見通しでは約500万円程度の赤字になる。」とのことでした。


昨今の厳しい経済状況から同じような悩みを持つ会社も多いのではと思います。


私は6年間掛けてきた保険を一部解約または減額し、赤字を埋めることを提案しました。


保険種類によっては解約することで発生する解約返戻金全額を利益(雑収入)に計上することが可能となります。

法人の場合、解約返戻金という現金という要素に加え、損益にも影響をおよぼすため、個人保険に比べて留意すべき点が多岐にわたります。


今回のことを解説すると以下のようになります。少し難しいかもしれませんがよろしければお付き合いください。


このお客様は6年前から社長自身の退職金積立と節税(課税の繰り延べ)を目的に支払い保険料の全額を損金(経費)に算入できる保険に加入していました。


毎年の保険料を仮に200万円とすると各年度の仕訳は次のようになります。


借方 保険料(費用) 200万円 / 貸方 現金(資産) 200万円


これを6年間繰り返すことになります。

6年間の累計の支払い保険料は1,200万円です。


つまり保険料200万円分だけ当該年度の利益が減少するため、支払う税金が少なくなります。

利益にかかる税率を40%とすれば80万円税金の支払いを節約できることになります(200万円×40%)。

6年間の累計では480万円、税金を節約できることになります。


もちろん利益を減らし支払う税金を減らす手段は他にもあります。経費を増やせばいいわけです。税法上認められている範囲で交際費を増やしたり、事務用品やその他もろもろの経費を増やせば利益は減少し、結果として支払う税金は少なくなります。


しかし保険の場合、他の経費と違う点は保険料を経費として落としながらお金が貯まっていく点が他の経費と大きく異なります。


この法人の場合、現時点の解約返戻金が約1,000万円ありました。経費で落としながら貯まったこの1,000万円、これはいったいどこにストックされているのでしょうか。


実はこの解約返戻金1,000万円は帳簿(貸借対照表や損益計算書)にはどこに載っていません。これが帳簿の外の資産、つまり簿外資産というものです。


このように経費で落としながら貯まった簿外資産1,000万円は利益をストックしていることになります。


今、この保険を解約し解約返戻金を受け取った場合の仕訳は次のようになります。


借方 現金(資産) 1,000万円 / 貸方 雑収入(収益) 1,000万円


つまり現金1,000万円と同時に1,000万円の利益を捻出できることになります。


この保険を解約することによる利益1,000万円を通常の事業売上で上げようと思った場合、どのくらいの売上が必要となるでしょうか。


売上総利益率(売上に対する売上原価の割合)が30%の場合は3,300万円、20%の場合には5,000万円の売上を上げないと1,000万円の利益にはなりません。


この企業の場合には赤字の見通しが約500万円なので全部を解約する必要がなく、500万円の解約返戻金が発生するように減額金額を調整していけば、新たに500万円の利益を生み赤字を埋めることができます。

つまり本業での儲けを表す営業利益は500万円の赤字となっても、営業外収益500万円を計上することで、経常利益ベースでは赤字を回避できることになります。

また業績悪化時には現金も枯渇している場合が多いので、解約返戻金500万円という現金についても会社の資金繰りに大きく寄与することは言うまでもありません。


今回の場合には加入当初の目的が退職金の積立でしたので、保険を一部であっても取り崩すことは退職金積立が目減りしてしまうことになり、社長としては残念な気持ちもあるかと思います。

しかし会社があっての退職金であり、退職金に固執して、会社の業績を悪化させては元も子もありません。


業績が好調時に保険を活用して課税の繰り延べをしていきながら利益を簿外にストックして、業績悪化時には、過去の利益を必要な分だけ取り崩し、会社の財務内容を維持していく。


このように業績のよいときに将来の会社の収益性の悪化を想定して備えておく、ということも立派なリスクマネジメントと言えるのです。


このような法人保険の留意点など詳細がお知りになりたい方に、オーナー経営者向けの小冊子をご用意しています。ご希望の方は、以下の問い合わせフォームからお申込みください。

http://www.romluss.com/form1.html


※本件は、全額損金型でかつ解約返戻金が貯まっていくタイプの保険に加入していた場合です。保険種類によって必ずしも解約返戻金がすべて雑収入に計上できるわけではありませんのであらかじめご了承ください。