『空とぶじゅうたん』と『アーマッド王子ものがたり』 | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

小さいころ読んだ絵本で、とても印象に残っているものとして、川端康成が文を書き、杉全直という人が絵を描いてトツパンから出版された『アラビアンナイト2――アーマッド王子ものがたり』(1954年)というのがあります。

アラビアンナイト 川端康成 〜 の在庫検索結果 / 日本の古本屋 (kosho.or.jp)

 

同じ話とみられるものが今でも『空とぶじゅうたん』という題で語られているのをときどき見ますが、現在出版されている『空とぶじゅうたん』の話は、どうも『アーマッド王子ものがたり』の後半の肝心な部分、末っ子のアーマッド王子が従妹と結婚することはかなわなかったあと、別のすてきな女性ペリーバヌー(地底王国の女神)に地底王国に招かれて結婚し、数々の試練をくぐってペリーバヌーと一緒に地上の父の国を継ぐ、というすてきな話を含んでいないみたいです。

空とぶじゅうたん―アラビアン・ナイトの物語より | マーシャ ブラウン, Marcia Brown, 松岡 享子 |本 | 通販 | Amazon

 

『空とぶじゅうたん』アラビアン・ナイトの物語より | 親子で能力開発!日本初の絵本教育コンシェルジュ響野なおこオフィシャルブログ (ameblo.jp)

 

わたしは『アーマッド王子ものがたり』の中の「地底王国でペリーバヌーと結婚したアーマッドが、父のもとにときどき里帰りしても、彼女との約束を守って、だれと結婚しているかは秘密のままにしておく(最後に、父の君側の奸である悪大臣たちを滅ぼしてペリーバヌーを地上に招くときに、ようやく封印を解く)」という部分が大好きでした。

 

わずか小学校四年生ぐらいのときに、わたしはこの物語に触発されたステキな夢を見ました。夢の中のわたしは、森の中の秘密の家の王女さまのような人(10歳ぐらい年上!)とめぐりあったと思ったら、ただちに周囲の人々から祝福されて「結婚式」を挙げてしまい、そのあと、彼女から「わたしと結婚したことはだれにも内緒よ」と言い含められていったん親の家に帰り、表向きは普通の小学生を続けるという甘いロマンに満ちた体験をしました。目ざめて後もわくわくした記憶があります。

 

↓こちらのブログが紹介している『空とぶじゅうたん』は、その後半の話がちゃんと載っているバージョンのようです。

講談社『少年少女世界文学全集 41巻 東洋編(1)』~「王書物語」など~ (showhyuga.blogspot.com)

 

その「わくわくする」物語に比べると、「三人兄弟が優劣つけがたい不思議な宝をみつけて、みんなの力が合わさって従妹を救うことができたので、王様はだれが一番と決めることができなくて、結局弓矢の競技で決めることにした」という部分は、前座にすぎません。

 

その「わくわくする物語」に触発されて生まれた「森の中の秘密の家の王女さまのような人と結婚して……」という夢は印象が強烈だったので、その後、大人になって文芸同人誌に参加して小説を書くときにも、そのストーリーを現代によみがえらせて、「18歳の高校三年生である主人公が、ある日、東京郊外のあるところで雨宿りのつもりで立ち寄った家で、あれよあれよというまに『結婚式』を挙げさせられてしまう」というおとぎばなしめいた筋を取り入れたことがありました。

 

もっとも、そのあと、そのストーリーには、当事者どうしの合意に基づかない集団結婚を奨励する「世界統一真理教会」というどこかで聞いたような名称の組織が登場し、日本の隣の国でその運動を起こした「パク・チョギル先生」とかいう〝救世主〟の名前が出てくるという、おかしな展開となるのですが(笑、笑、笑)。