昨日(1月28日)発生した八潮市の道路陥没事故ですが、運転手の救出にこんなにも手間取るとは思ってもみませんでした。

周囲にも地下の空洞が広がっているようなので、この場所が軟弱地盤であることが救助さえも困難にしてしまっているのかと思わずにいられません。

一刻も早い救助を願っています。

 

TVなどの映像を見ると、トラックが落ちた穴にはコンクリートの壁のようなものが見え、そして、その壁の亀裂から水が流れ出ている様子が把握できました。

 

道路の下に空洞ができた理由

道路の下に空洞ができた理由については、

「下水道管が腐食して穴があき、徐々にその穴に土砂が流れ込むことで地中に空洞ができていた可能性がある」(県の下水道事業課)

 

[出典]

 

そして、下水道管が腐食した理由については、

「下水道管を流れる下水に含まれる生ゴミなどの有機物から硫化水素が発生し、空気に触れることで硫酸となって水道管を溶かした可能性がある」

とのこと。

 

しかし、県が陥没箇所の下水道管を2021年に検査した際には「直ちに工事が必要な状況にないBランク」という判定だったらしいのです。

 

[出典]

 

下水道管が破損した別の要因は「軟弱地盤」?

確かに、下水道管の老朽化は全国的な課題となっています。

上述したような硫化水素の問題もあるのでしょう。

ですが、硫化水素が発生するのは、この場所に限った話ではないですよね。

それに上述の通り、点検した際には「Bランク」だったとのことですし。

 

軟弱地盤も、この交差点だけでなく周辺にも軟弱地盤が広がっている訳ですが、地盤の良い台地などと比較すると、下水道管の破損はやはり軟弱地盤で起きやすいと考えています。

 

熊本地震の際に下水道管の被災状況を調査した資料があります。

 

平成28年熊本地震における下水道管路施設被災の特徴と対策

https://www.nilim.go.jp/lab/ebg/pdf/kumamoto_report_0609.pdf

 

被害の特徴の一つに「後背湿地に被災管路が集中」していたことが挙げられています。(P.16以降)

 

震度7が連続して発生した熊本地震を、八潮市の事故の参考にするには不適当かもしれませんが、地盤が悪いところでは、地中構造物も破損する可能性が高くなるという点は参考にすべきだと考えます。

 

軟弱地盤では、地中も揺れる

シンプルに考えれば、管の周りが柔らかい地層の場所と固い地層の場所を比較すれば、柔らかい地層の方が管に対するホールド感は緩いですよね。

ということは、関東でも何度かあった地震や日々の通行車両による振動などによるダメージも、管の周りが柔らかい地層の場所の方が大きくなるのが普通ですよね。

 

下水道管の亀裂を招いた原因の一つは、周囲が軟弱地盤だからであり、過去の地震や日々の振動でダメージを蓄積した結果だと考えています。

 

軟弱地盤で揺れるのは、基礎杭も同じ

これ、下水道管に限った話ではないですからね。

軟弱地盤の上に、長~い基礎杭を支持層まで伸ばして建っている、人間が住んでいるマンションなんかも同じリスクがあるということです。

 

ピロティ(1階は柱だけの駐車場にして、2階以上を居室にする形式)の建物は地震に弱い!

 

という話をよく聞くと思いますが、

 

軟弱地盤に数十メートルもの基礎杭をまっすぐ立てて、その上を居室にしている建物も同じようなもの

 

ではないかと思うのです。

 

実際に起きた大地震後の被害調査結果でも、軟弱地盤エリアにある建物について「液状化した地盤においては杭頭付近のみならず地中部における杭の損傷も確認されている」のです。

地震が発生すると、軟弱地盤エリアでは液状化による“側方流動”が発生する可能性があります。

これは「液状化に伴い地盤が大きく側方に動く現象」で、地中構造物にも大きな被害を与えることが分かっています。

 

「軟弱地盤エリア」に建つ大規模マンションに、倒壊リスクはないのか?

デベロッパーは、法律的に問題のない範囲での建物の強度を満たすだけで「安心だ」といって、軟弱地盤エリアでも平気でマンションを販売しています。

「軟弱地盤エリア」に建つ大規模マンションに、本当に倒壊リスクはないのでしょうか?

液状化による側方流動にも耐えられるのでしょうか?

 

“想定外”については、デベロッパーは責任を取りません。

「我々は建築基準法で定められた強度は保つ建物を販売しています。この地震の揺れや液状化による基礎杭の損傷は“想定外”のことなので責任は取れません。」

ということです。

 

確かに、「現在の法律で決まっている強度」を満たせば、後で責任を追及されることはないでしょう。

ですが、何度も触れているように

震度7で倒壊する可能性があるとされる「耐震等級1の建物」をいまだに震度7になる可能性が高い軟弱地盤エリアで供給し続けている

というのは責任問題にならないだろうかと疑問を持っています。

 

震度7になる可能性があるというエリアが分かってて、そこに耐震等級1の建物を供給している。

これで倒壊しても、「想定外」ですか?

 

 

デベロッパーに法的な責任がない以上、後は消費者の自己責任となります。

「軟弱地盤エリア」の物件には手を出さないようにしましょう。