こんな記事を読みました。

 

 

2025年1月以降、REINSのステータス管理機能を最新の登録内容にする義務を国交省が課したことを受けての記事ですね。

 

「REINSのステータス管理機能」について説明しだすと長くなるので端折りますが、要は、売主が、自分が売りに出した物件が現在どのような状況なのかを把握できる(筈の)画面です。

 

これなら、売主側業者は悪いことができないだろう、という訳です。

ですが、コトはそう単純ではないのです。

 

■REINSのステータスを売主側業者に任せてはダメ

X(Twitter)でも書きましたが、両手仲介(囲い込み)での一番の問題は、このREINSのステータスを「売主側業者が好きなようにいじれる」という点です。 

 

問合せが何件あったのか?

内見申込が何件あったのか?

買付証明書の提出があったのか?

 

これを、売主側業者だけが受理し、管理する“仕組み”になっていることが問題なのです。

 

買主側業者の申込みをREINSのシステムで受けるようにし、その数字を公開するようにすれば、数のごまかしができなくなります。

 

「内見申込が全然入りません。価格下げましょう!」という詐欺トークを防げます。

本当に内見申込がない場合は詐欺ではないですが、この本当に申込があったのかなかったのかが、現在の“仕組み”では分からないのです。

 

売主側の媒介契約さえ取ってしまえば、後はブラックボックスの中で進められる“仕組み”が問題なのです。

 

■不動産業界の諸悪の根源は「両手仲介(囲い込み)」

「両手仲介(囲い込み)」は一見、防災と無関係に見えますが、「災害に強い物件を勧める」「専門家として物件の正しい評価をする」という作業を現在の不動産業界から奪っているのが「両手仲介(囲い込み)」だと思っています。

 

上の段落は売主視点だったのに対し、ここからは買主視点でも「両手仲介(囲い込み)」がダメな理由を述べます。

 

不動産屋は良いことしか言わない

契約を急かすばかりで、リスクについて詳しく説明してくれない
後で色々なことが判明し、買ったことを後悔した

等々、不動産購入者が不動産屋に対して感じる不満を作っている原因がこれだとさえ思っています。

例えば、当サイトで発信しているような災害リスクについて、通常の不動産屋は法律で決められた範囲でしか説明しません。

これは、
「その不動産屋やその担当者が悪徳だから」
なのではなく、不動産流通の仕組みの問題なのです。

 

要は、現在の不動産流通の仕組みの中では、

当該物件を詳しく調査し、正しく評価する手間は無駄

なのです。

 

■物件評価にインセンティブがない

不動産の専門家というのは、何の専門家でしょうか?

お客様に対して、専門家として提供しなくてはならない最たるサービスは、その知見を活かした「物件評価」なのではないでしょうか?

 

「この物件は、購入しても大丈夫なのか?」

 

この問いに専門家としての根拠を添えて答えることが、最も必要なことだと考えています。

 

ただ、現在の不動産流通の仕組みの中では、これは非常に無駄な作業です。

物件評価というのは、それなりに労力と時間を必要とします。

それだけの労力と時間をかけて1件の物件を選別し、お客様にお勧めしたとしても、その物件の売主側業者が大手不動産会社だと、“終了”です。

 

「両手仲介(囲い込み)」をやっているのは、大手不動産会社だけではないですが、大手はほぼやっています。

 

■選別した物件が「両手仲介(囲い込み)」に該当した場合に起きること

お客さまに物件をお勧めする工程は以下の通りです。

 

現在マーケットに出ている物件から、予算・エリア等で候補を絞り

一つ一つ評価をして、これなら問題ないと思える物件を選別し、

売主側業者に連絡をすることになります。

 

で、当該物件が「両手仲介(囲い込み)」だった場合に起きることは以下の通りです。

 

[内見]

買主側業者から「内見申込」の連絡を入れると、「すみません、既に買付が入っちゃいました。」と断られる。

→仕方がないので、お客様から直接電話していただくと「すぐに内見できます。」と言われる。

 

[買付証明書]

内見はさせてくれて、お客様が気に入って、買付証明書を出したとしても“1番手”が取れない。

 

要は、買主側業者を挟みたくないのです。

買主とも自分たちで直接取引できれば、買主側の売買手数料も売り上げにできます。

これが「両手仲介(囲い込み)」です。

 

【参照】説明が長くなるので、もっと知りたい方は以下のページをご覧ください。

 

 

■物件評価にインセンティブがない Part2

以上の通り、買主に寄り添って物件評価をし、「買主にとって一番良い物件をお勧めする」という機能は、現在の不動産流通の世界では経済合理性を欠いているのです。

 

買主に寄り添ったって、売り上げは「売主側業者が両手をやっているか否か」という運に左右されるので。

 

物件評価なんてするのは時間の無駄であり、売主に寄り添うことはしても、買主に寄り添うことは時間の無駄なんです。

購入希望者が運良く事務所にやって来ても、「両手仲介(囲い込み)」をやっていない物件の中からしかお勧めはできません。

こんな制約の中で「買主に寄り添え」って方が無理でしょ!!

 

これの解決策は簡単です。

「両手仲介(囲い込み)」を禁止

にすればいいだけです。

 

そうすれば、買主側業者は、買主を掴まえれば“物件が売れる”のですから、買主を掴まえることに力を入れます。サービスも高度化する(物件評価が当たり前になる)ことが期待されます。

 

海外では「両手仲介(囲い込み)」が禁止の国の方が多いくらいです。

売手と買手の代理を同時にすることは、利益相反ですものね。

 

大手不動産会社が力を持っている業界団体の圧力で、「両手仲介(囲い込み)」を禁止にできない国交省が情けない。

 

今年は、この問題にももっと向き合っていきたいと思っています。