<Sside>
幸せな目覚め。
それなのに、届く知らせは不吉な物ばかり。
明日に迫った、初日の新作コレクションのショー。
初日は、潤が着る服以外は、マネキンに服を着せることになっていたが、そのマネキンのうち1体に、火薬は入ってはいなかったが、マネキンが破壊できるくらいの装置が仕込まれていた。
1週間前に、あのビルに搬入してから、誰かが仕込んだものだ。
警察がこれだけ配置されている中、どうやってあれを付けたのか・・・。
あの手紙が、嘘では無い。
確実に実行に移そうとしている人物は存在していると、主張しているようだ。
それに・・・
「まだ寝ているようだから、静かにね。」
「はい、畏まりました。本日のスケジュールは・・・・・・・・・・・・・。」
「午後のリハを、時間を少し遅らせてもらえますか?先にディスプレイを完成させてからの方が、集中できそうなので。片手間に確認したら、何か見落としそうな気がするんです。」
「分かりました。では、そのように手配します。」
「あ、あと、明日のショーの為に用意した衣装が、一部が切り裂かれていたと・・・今朝、連絡がきました。」
「それは本当ですか?昨日の朝、全て確認したはずですが・・・分かりました。もう一度チェックします。」
「今日手直しして、補修した衣装は、直接ここに保管します。」
「分かりました。」
「搬入は、俺が直接ここに持ってきます。やはり・・・内部犯だって思っていますか?」
「まだ特定できていません。ですが、確かに怪しい人物はいるかと。仮に外部犯の犯行だったとしても、内部に協力者がいることは間違いないです。数名に絞り込んではいますが・・・。まだ確証を掴めてはいません。」
「そうですか・・・分かりました。」
「松本さんの様子に変わりは?」
「ここに居るからか、余計な事は耳に入っていないようです。二宮さんには一応報告は入れていますが、松本君には伝わっていないようです。」
「そうですか。でも、油断禁物ですから。」
「分かりました。」
「それでは後ほど。」
まだ、犯人に繋がる証拠が何も掴めていない状況で、もう明日は初日のショーが始まる。
綿密な計画。
隙のない警察官の配置。
それだけの事をしているにも関わらず、犯行を示唆するモノが、あちこちから見つかっている。
マネキンや衣装の細工は、確かに内部の人間の可能性の方が高い。
それに、同じ様な段ボール箱に保管しているにも関わらず、確実にショーに使うものだけを狙っているのだから。
だから、犯人の狙いは、『ショーだけ』という事になる。
だけど、余程計画を知っていなければ、ここまで大胆な行動はできないだろう。
という事は、犯人はこちら側の計画の詳細を知っているという事なのだろうか?