社員の声上げ | がんばれ熊さん

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食品スーパー店員の絵日記

 

お年寄りを集めて高額な健康食品を売る宣伝講習販売。

 
オープンして3日目からサンプルを配る。
 
「寝る前に必ず飲んでくださいね」
 
商品名も中身も記載されていない銀色の袋。中身は若干緑がかった白い粉。
 
誰がそんな怪しいもの飲むか?と思われるだろうがほとんどの人は飲んでくれる。
 
本社も○○市にあり、2か月ごとに各地を回って宣伝している会社である。間違っても変なものは配らない。ほとんどの人がそう思ってくれている。
実際にちゃんとしたものである。害のあるものを配るわけがない。
 
前で話している講師が価値づける。
 
この銀色のサンプルは
 
私たちの会社が大きく急成長する一番のきっかけとなった健康食品です。
他では絶対に手に入らないもので、大手の製薬会社の研究室の元室長だった人が研究に研究を重ねたものです。
 
癌だろうが、心臓病だろうが、脳卒中だろうが、糖尿病だろうが症状を選びません。
 
他の何を試しても駄目だった方に多くの奇跡を起こしてきました。
 
しかも飲む人を選びません。健康な人もこれを飲めば何らかの違いは分かります。
 
朝の目覚めが良くなった。肩こりが良くなった。目のかすみがましになった。そんなのは当たり前です。
 
時代は変わったのです。
 
効いているのか効いていないのか分からないようなものとは違うんです。
 
体全体のあらゆる不調をこの一袋で解決できる次世代の健康食品です。
 
さぁ、みなさん欲しいですか?
 
「は~~~~い」
 
次の日、講師の話が始まる前の接客で飲んでくれた人の生の声を引き出すのが私たちの大事な仕事だった。
 
私たちは声上げをする。
 
「先ほどの方も、昨日のサンプル飲んで朝の目覚めが良くなったと言ってますよ~」
 
「こちらでも、お通じが良くなったと言ってますよ~」
 
と社員同士で声をあげる。
とにかく飲んで良くなった声を私たちの声上げで演出してしまう。
 
 
私 「じゅんちゃ~~~ん」
 
じゅんちゃん 「は~~い」
 
私 「いや~~嬉しいことに、こちらの方も肩こりが楽になったと言ってますよ~」と。
 
じゅんちゃん 「良かったですね~せいの~ばんざ~~い、ばんざ~~い、ばんざ~~い」
 
と万歳三唱をする。
ムード商法なのでとにかくムードを盛り上げるのだ。