4台の車両が姿を消してから、ほんの10秒ぐらいたった頃だろうか、建物の陰から次々に人影が現れて整列を始めた。
フルフェイスのヘルメット、鈍い銀色に光る盾、完全武装の機動隊だ。
全身に金属プレートが入ったプロテクターを装着した姿は、人間の骨格とは別物のまるでロボットのように見えた。
これを追い返せってのか。
笑える。
人影は次々に集結していた。
完全武装組の他にも、背広姿の男が何人かいた。
総勢で20名程だろうか。
機動隊一個小隊。
非常事態にもかかわらず、「有明省吾ってどんだけ天才なんだ。」
などという、意味不明な思考が脳裏をよぎる。
道路を挟んで向こう側、10メートルほどの距離を隔てて機動隊が整列している。
すぐに点呼を終えて、移動を開始した。
こちらへ向かってくる。
見事だ。
全く見事な集団行動だ。
最初にパトカーが視界を横切ってから、まだ1分も経ってはいないのではないだろうか。
その間に各人が自分の役割を把握し、正確に行動している。
どこにもミスがない。
残念ながら、オウムはこれほどまでに見事な行動力は持ち合わせてはいない。
たとえ頭数は多くとも、所詮は烏合の衆だ。
無駄のない警察の動きを見ながら、オウムにいる悲しみを感じずにはいられなかった。
教団ナンバーツーから与えられた指示は、ただ「追い返してください。」だけなのだから。