ソーシャルゲームの仕様を考える際、コンシューマーとは
違った常識で考えなければならないことが多く、
戸惑うことが多くあります。


ものすごく大雑把な言い方になりますが
コンシューマーゲームでは、基本的に「面白ければ正義」。

ユーザーが心から満足できるコンテンツを提供することで
会社や作品ブランドの評判があがり、
ひいては売上につながっていくという考え方です。

もちろん実際には面白いだけでは全然ダメで、
面白いのに売れていない作品も現実にはたくさんあります。
様々な要素を複合的に考える必要がありますが、そうは言っても、
最も最優先かつ根幹として考えるべきスピリットはやはり

「それはユーザーにとっての『面白い』につながっているか」

かどうかだと思います。


ところが、ソーシャルゲームの場合はちょっと違います。
面白いことももちろん重要なのですが、
仕様を判断する上で、それ以上に大事な要素として

「それは『マネタイズ(=収益)』につながっているか」

という観点が色濃く出てきます。

要するに、その仕様の導入が課金動機につながっているかどうかを
見極めることが大切、ということです。

この観点は、場合によってはユーザーにとっての
快適さや面白さと相反することがあります。

なぜなら、無課金で完全にストレスフリーにプレイできてしまっては、
課金する理由がなくなってしまうからです。

あえてストレス的な要素を入れて
「それを解消したい → 課金しよう」
と、つなげていく導線。

しかも、これもあまり露骨にやってしまってはダメで、
ソーシャルゲームに明るい先輩企画者からは、よく
「ユーザーに"気持よく課金してもらう"ことが大事なんだよ」
なんて言われたりします。


私を含む、元々がコンシューマー業界出身の人間が
ソーシャルゲームの仕様を考えようとすると、
どうしても「ゲームそのものの面白さ」だけを追求してしまい、
マネタイズについて意識が欠落している(あるいは薄い)という
ミスを犯しがちになります。

私も一応頭ではわかっているつもりなのですが、
身についたものの性というか、あえてリミッターをかけるような
仕様を入れるのにはどうしても抵抗が出てしまいます。

我々のチーム内ではこれを「コンシューマー脳」と呼んでいて、
仕様会議などの際、よく「それはコンシューマー脳の発想じゃない?」
などと言ってお互いの目を覚まし合っています。


もっとも、自分的には完全にソーシャルゲーム開発一辺倒の
人間になりたいわけではないので、「コンシューマー脳=悪」とは思っていません。
(逆にあまりに「ソーシャル脳」に漬かってしまうと、
 再びコンシューマーを開発する時に障害になるかもしれません。)

どちらが良いとか悪いとかではなく、
企画にあわせて切り替えられることが重要なのだと思いますし、
そうありたいと思っています。

……その極意に至るのは、そう簡単なことではないでしょうけど。