【※今回は番外編のミニ小説となります。設定はすべて架空のものであり、フィクションです。】
僕は、相咲萌江(以下、もえ)の夫である。
前回に続いて、今回も妻との妊娠中の回想と記録について語っていきたいと思う。
妊娠がわかった途端、もえの元気度は急に低下した。
妊娠超初期症状に悩まされ、常に熱っぽく、下腹の張りが気になると言っていた。
妊娠前はあれだけいつも笑ってテンション高かったのに、急にその様子に変化がきてしまった。
あれだけ妊婦さんになることに憧れていたのに、もえの顔に喜びの笑顔はなくなっていった。明らかに弱ってる様子だった。
特に下腹の張りが気になっていたらしく、「まるで子宮が引っ張られているみたい」と常に漏らしていた。
この期間、もえは何度もオーバーオールのお腹をさすっていた。
妊娠6週頃になると、今度は吐き気にも悩まされるようになった。いわゆる、「つわり」である。
いつもゼエゼエいいながら吐いていて、僕はどうしたらいいのかわからないくらい困惑してしまった。
もえが吐いている姿をいつも後ろから見ていたので、この時は僕は何度も後ろから、彼女が着ているオーバーオールの背中の「Y」文字のような形(オーバーオールの背中のデザインのこと)を目撃した。
こんなにも彼女のオーバーオールの背中の「Y」文字を目撃したのは、付き合ってから実はこれが初めてだった。
そしていつも僕は、その「Y」文字の背中をやさしくさすってあげた。
彼女はとても感謝してくれ、吐き気がいったん収まるといつも笑顔で僕を見つめてくれた。
妊婦さんって想像以上に大変なんだな、とこの時痛感したが、彼女はこの時弱音を一切吐かなかった。なんて素敵な女神なんだろう。
もえはたまに調子がいいときは、いつもオーバーオールのお腹を撫でながら、
「ここにあなたの赤ちゃんがいるんだね。私本当に嬉しいな。」
と言ってくれて、僕も本当に嬉しくなっていた。
妊娠11週になった頃、彼女は常に「もうそろそろお腹出てくるかな?嬉しい反面、ちょっと怖い気もするよ。うう、そろそろお腹出てくるのかな・・・」としきりに気になる様子だった。
いつも鏡で自分のお腹をチェックしていたり、僕も彼女のお腹をチェックしていた。
すると、11週の半ば頃からちょっとだけお腹が少し膨らみ始めているようにも感じられた。
妊娠12週を過ぎると、徐々にもえのお腹は膨らみ始めていった。
僕は毎晩もえのお腹をチェックしていったが、日に日にお腹は膨らんでいき、より厚みを増していき、硬く丸みを増していった。
このころからつわりも落ち着き始め、徐々にもえも行動的になり、かつてのテンションが高いもえに戻っていった。デートする機会も増えていった。よく公園や海岸でデートしたりして、その度にもえのオーバーオールのお腹は膨らんでいっているのに気づいた。そして、いつも僕はもえのお腹を撫でてあげた。
また図書館で読書に励んだり、資格の勉強をしたりともえのアクティブさにはいつも感心するばかりだった。
そして妊娠13週、14週、15週・・・とすぎるうちに、もえのお腹はどんどん大きくなっていき、日に日に彼女のオーバーオールのお腹周りはふくらみを増していっている様子に気付くばかりだった。
(次へ続く)
