愛する人を亡くす事って


どれだけ辛いものなんだろう。


いくら想像してみても、恐ろしくて想像出来ない。


想像を絶する苦しみだから。


友人。


好きな人。


恋人。


家族。


残された人が、一番地獄かもしれない。


大切な人を失う経験をするぐらいなら


短命でもいい、自分が真っ先に死んでしまいたいと思う。





マモルは、生きていてくれた。


まだ完全に乗り越えられたわけではないだろうけど


後追い自殺などしなくて、良かった。


マモルは今、大切な人はいないのかな。


いてくれたら、マモルをどうか


救ってあげて欲しい・・・。





あれから、マモルはすぐに涙をグシグシ拭いて


「時間遅れるとまずいからもう行こっか!ここいたら俺たちが凍死しちゃうし!」


と、明るく振舞って車に戻った。


「辛かったね」なんて言葉すら、言えない。


そんな安い言葉なんてかけられない。


上の組織さん。


世界的秘密組織なんでしょう?


それなら陰で、死者を蘇らせる研究とかしていてよ。


そしてひかるさんを、元気な姿で蘇らせてよ・・・。





「あー!早くシャンパン飲みたーい!」





いつも通りのマモルになっていた。





???「ん・・・?もう着きました?」





ユウトか風が起きた。





あたし「だれ?」


???「だれとは?」


あたし「風?」


???「うん」





戻ったんだ!


40分ぐらいしか寝てないけど戻れたんだ!





DAI「ここどこ?」





DAIも起きた。


二人してむにゃむにゃしてる姿が、可愛い。





マモル「山梨だよ〜富士山近いよ!暗いから見えないけど」


風「ええ!見たい!!」


DAI「すげ!富士山久しぶり!」


マモル「そーそー!近いよ!樹海もね!」


風「おぉ!」


DAI「じゅっ・・・樹海・・・!」


あたし「そっか。ここらへん樹海か」


マモル「若い君たちに忠告だけど、面白半分に来たらダメだよ?ガチで呪われるよ」


DAI「・・・俺、テレビの心霊番組とか全然信じてなかったけど、最近幽霊っているんじゃないかと思い始めましたよ」


風「いますよ幽霊!俺何度も見るし」


あたし「風は霊感強すぎな・・・」





風は物心ついた時から、霊を視てきたらしい。


風は普通に友達とかにその話をしてきてて


正体バレちゃうから詳しくは書けないけど。


幼稚園の頃から視てきて


それは虐待される前だから、


別人格を霊と間違えたわけではない。


逆に解離の症状が出始めた小学校高学年ぐらいの時は、


最初「別人格」ではなく「幽霊」が取り憑いたものだとずっと思っていたらしい。





DAI「誘拐事件の呻き声・・・あれから信じたね」


あたし「まだ言うか!」


風「それ俺も聞きたかったなぁ」


マモル「HALまで聞こえたって言ってたもんね?それはガチっぽいよな〜」


DAI「誰だっけ、あの時同じチームだった美人さんも聞こえたって言ってましたし!」


あたし「あ。アイナさんでしょ!?アイナさん達元気かなぁ」


マモル「お?」


あたし「ん?」


マモル「アイナさんも来るよ!今日!」


あたし「ええ!?そうなの!?」





久しぶりだ、アイナさん。


・・・HALとあたしが付き合ってるのバレてなければいいけど。





あたし「なんだっけ、あのデカいおじさん。広告代理店の。あの人は来るの?」


マモル「あ、成田さん?あの人は仕事で無理だって」


あたし「そっか・・・」





あの日、ちゃんとみんなに挨拶できなかった。


何も役に立てなかったこと、謝りたかったのにな。





マモル「お、着いた!あそこ!」


風「え?どこどこ!?」





小綺麗なホテルが見えた。


周りは山の中で真っ暗だから、余計に綺麗なのが際立つ。





あたし「あーあ。HALも来れたら良かったのにな」


マモル「だよねぇ。せっかくのクリスマスなのに・・・まぁリベルテと関係ない会社に就職しちゃったからねぇ」


あたし「HALってリベルテの中でかなり高い階級じゃん?なんで関係ない弁護士事務所入ったのかなぁ」


マモル「詳しくはわからないけど、そこで何かやらなくちゃいけない事があるとか言ってたよ?」


あたし「やらなくちゃいけない事・・・?」


マモル「俺の勘だけど、それが終わったら弁護士辞めるんじゃないかなー」





は?




弁護士になるのがHALの「夢」だったんじゃなくて・・・!?




いや。


確かに学長の話だと、HALはどこかに勤めなくても


遊んで暮らせるほどの金持ちだ。


資産運用、投資家・・・


あたしは庶民だからよく分からないけれど


投資家とかって、世界情勢とか調べまくって


家でパソコンと睨めっこしてるイメージしかない。


わざわざ、弁護士として働く意味が・・・ない。


マモルの勘は、当たってるのかもしれない。





マモルはホテルの駐車場に車を停めた。


トランクを開けて、それぞれの荷物を取り出す。


マモルの荷物は、かなり小さかった!





あたし「マモル!?なんでこんなに荷物小さいの!?」


マモル「なになに!?そんな驚くこと!?」


あたし「お酒は!?持参してないの!?」


マモル「へへへ。このホテルには大量の高級ワインやらシャンパンがあるのだよ!ルームサービスでも取れるし、しかもタダで飲める!安い酒持参なんてするわけないでしょー?」





マモルはめっちゃドヤ顔だ。


マモルの事だからてっきり、部屋でも飲めるように


大量にビールとか持ってきてるかと思ってた。


一方、心配性の風の荷物は、相変わらず大量。


DAIは、あたしと同じぐらいの量だった。





それにしても・・・ロビーがとんでもなく広い。


しかも旅館とかではない。


シャンデリアとか花とか


とんでもなく、デカい。


飾りの「小物」が、「大物」だ。


HALと風と仲の良かった


イギリスにパティシエ修行に行った優が泊まっていた、


成田空港のホテルを彷彿とさせる。


マモルは嬉しそうにチェックインしている。


ここもリベルテ関係のホテルなのか・・・?





風「なんか・・・やべー。広いなここ・・・こんな凄いホテル泊まるの初めてかも」


DAI「Lも可哀想にな。こんないいホテル泊まれないなんて」


風「あ。大志さんからLINEだ」


あたし「え!?大志ってあの大志!?なんて来た!?」


風「んーと。あ、バンタンだ」


あたし「ほぇ?」


風「大志さん、防弾少年団好きなんだよね。この曲いいよっていつも送ってくれるんだ!俺もまだ勉強不足だから助かる!」


DAI「あー、韓国の歌手か。風もBIGBANG好きだし、KPOPばっかだな」


風「うん。顔もかっこいいけど、ダンスが凄いかっこいいんだよね。部屋着いたら後で観よ〜っと」





大志が防弾少年団好きだったのか。


その影響で風が聴き始めて、


風の影響であたしも聴き始めて・・・


・・・って!


事の始まりは大志のオススメだったのか!


風がハマり出したからあたしも観始めたのに


最初は大志だったなんて。


なぜかちょっとムカッ腹が立った。





マモル「よし、とりあえず部屋に荷物置きに行くよー!」


風「はーい!」





あたしは女だから一人で泊まるのか?


それともアイナさんと?


一人で泊まるのはちょっと寂しいけど


アイナさんと同部屋なのも凄い気遣うんだけど・・・。


それなら一人の方がマシだ。





マモル「ほいよー!愛美ちゃんと風愛友とDAIは305号室!」


あたし「うえええええええっ!?!?あたし女一人!?」


マモル「ごめん!急に決まってかなり急いでたからこうなっちゃった・・・でもHALは風愛友とDAIなら安心だろうからさ」


あたし「ま、まあそうかもしれないけど・・・」


風「大丈夫でしょ。愛美が俺んちに泊まるの日常茶飯事だし」


DAI「着替えとかする時は、俺ら目つぶってますから」


あたし「そ、そういう問題じゃないんだけどな・・・」




風の家に泊まるのは、確かに何度かあったけど。


なんていうか、こんな高級ホテルで泊まるというのは・・・。


一緒に寝る・・・?


いや、ベッドは別だとしてもよ。


同じ部屋だよ?


思春期の男の子だぞ?


・・・って、風もDAIもあたしの事、女として見れないか。





マモル「はい。これルームキー。クリスマスパーティーは二階の鳳凰の間に、19時開始。もしわからなくなったら、俺301の部屋にいるから!LINEでもいいしピンポンしてもいいよ!」


風「了解しましたー!」


あたし「ちなみにマモルは誰と同部屋?」


マモル「レイジだよ!まだ来てないけど」


あたし「あ、そっか」





レイジの事忘れてた。


レイジはあたしのこと、とっくに忘れたのかな。


「HALと付き合ってると知ってから諦めたから!」とは言っていた。


でもこの前、風が緊急入院した時


ハグ・・・したんだよな・・・。





部屋に入ると、かなり広い!


もちろんHALと一緒に泊まったスイートよりは断然狭いけど


大きい部屋に、ベッドが三台、小さい冷蔵庫に、テレビ。


その奥には、大きな窓付きの12畳ぐらいの部屋もある。


なんの為に使う部屋なんだ。


普通にこの部屋だけで十分なのに。





風「すげー!俺、和室のホテルしか泊まった事ない!」


DAI「ラブホってこんな感じなのかな?」


あたし「やめれ。一応あたし女なんですが」


DAI「愛美さん、ラブホってこんな感じ?」


あたし「いや。ラブホはベッド三つもない。一つだけ。あとこんな開放感たっぷりの大きな窓もありません」


DAI「へーえ。早く高校入ってバイトして彼女とラブホ行きたいなー」


風「DAI先輩・・・・・・」





そっか。中学生はまだお金ないから


ラブホなんて利用しない。


相手が年上のお姉さんならまだしも。





それにしても、高級ホテルでクリスマスパーティーか。


こんな経験初めてかも!


大好きな風もいる。


本当なら、HALとラブラブクリスマスを期待してたんだけど・・・。


それでも、ウキウキしてきた。


美味しい食事をしっかり食べられるように


デパスを飲んだ。





この時はまだ


あんな事になってしまうなんて


誰も思っていなかった・・・。