少女が見上げた空には、いつも特別な光景が広がっていました。空から舞い降りてくる、無数の落下傘。それは、陸上自衛隊習志野駐屯地の近くで育った彼女にとって、幼い頃から心に刻まれた憧れの姿でした。
「私も、あの空へ――」
その一心で自衛官の道へ進んだ彼女。しかし、その夢の前に、大きな壁が立ちはだかります。全国の隊員から選び抜かれた者だけが入隊を許される、世界最強クラスの精鋭部隊「第一空挺団」。当時、その門は「女性」というただ一つの理由で、固く閉ざされていたのです。
それでも、彼女は諦めませんでした。「いつか必ず、時代は変わるはず」。その信念を胸に、来るべき日のために黙々と訓練を重ね、心と体を磨き続けました。
そして、ついにその時は訪れます。時代の流れが、彼女の不屈の想いに追いついたのです。女性にも空挺団への道が開かれ、彼女は長年の夢であったその扉を、自らの手でこじ開けました。
しかし、それは新たな挑戦の始まりに過ぎません。体重の倍近い約60kgもの装備をその身にまとい、遥か上空のヘリから身を投じる。男性隊員ですら音を上げる過酷な訓練を、彼女は歯を食いしばり、見事にやり遂げてみせました。
かつて、取材の中で彼女はこう語っています。
「小学校の窓から空を見上げたとき、無数の落下傘が降りてきて、『私もあの中に入りたい』と思いました。今度は、私を見て同じ夢を持つ人が出てくるかもしれない。その子たちに、恥じない姿を見せたいんです」
幼い日に空を見上げた一人の少女は、今、新たな世代の道しるべとなりました。彼女の挑戦は、多くの人々の胸に灯をともす、一つの伝説として語り継がれています。


※忘れられた真実より




リッドキララ