哲学者、小川仁志(ひとし)氏の心に響く言葉より…

《成功するまで試行錯誤を繰り返すプラグマティズム》
次の二人の偉大な人物に共通するのは何でしょうか? 一人目は、建国の父の一人ベンジャミン ・フランクリンです。アメリカで最も金額 の大きい100ドル札に肖像が描かれているあの人物です。卓越した政治家、外交官であり、かつ避雷針や薪ストーブを発明した科学者としても有名な万能人です。もう一人は、21世紀の発明家、アップルの創業者。 答えは、二人とも体系的な理論に従うというより、とにかく結果を求めて徹底的に思考錯誤を繰り返すことで、成功を勝ち得てきたという点です。 それから、アメリカ人であるという点も共通していますね。実はこの二つの共通点には関連性があります。 それは、失敗をものともせず、成功するまで試行錯誤を繰り返す「プラグマティズム」です。これはアメリカで生まれ、アメリカで展開してきた唯一の思想なのです。一般には「実用主義」と訳されたりします。そういえば、失敗を重ねながらも、飛行機による世界初の有人動力飛行に成功したライト兄弟もまた、アメリカ人です。アメリカにはこんな天才的なプラグマティストがたくさんいるのです。 いや、プラグマティストであるがゆえに天才になれたのかもしれません。というのも、天才の偉業には一度や二度の失敗はつきものだからです。一発で偉業を成し遂げた人の話を聞いたことがありますか? むしろたった1回の成功は、数百回、数千回の失敗のもとに初めて実現したと考えるべきでしょう。 物事は実際にやってみないとわからないものです。実際にやってみると、想定していたこととは違うことが起こったり、手間取ったりするものです。緊張もあるかもしれません。 ケン・ロビンソンは、こんなふうにいっています。「創造性は想像を一歩超えるもので、ただ座して考えるのではなく、実際に何か行動を起こす必要がある。これは、何か新しいものをつくるための、ひじょうに現実的な過程なのだ」と。 つまり、頭の中で思い描いているだけの段階だと、それは想像にすぎません。想像は天才の条件ではあっても、実践ではないのです。それを実践して初めて、創造になる。つまり、新しいアイデアや行動として世に認知されるわけです。 何度も日本人の弱点に言及するのははばかれますが、それを克服するために、あえていいたいと思います。日本人は行動することに臆病だといえます。だからこそ、この国にはプラグマティズムが必要なのです。 器用でまじめで頭もいい日本人がもっと成果を挙げるには、行動あるのみです。アメリカ人はいろんな分野でよく成功し、世界ナンバーワンの国として君臨していますが、失敗の数も相当です。要は、打っている球の数が圧倒的に異なるのです。
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30年前(1989年・平成元年)、世界の時価総額ランキング上位50社のうち、日本企業が32社を占めていた。しかも、上位5社はすべて日本企業。第1位は日本電信電話(NTT)。当時の日本は、まさに経済大国として世界の中心に立っていた。ところが、2019年にはその面影はほとんどなくなってしまった。同じランキングで、日本企業はトヨタ自動車の1社のみ。一方、上位を占めたのはアメリカのGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)や中国のIT企業。30年間で、世界の勢力図は完全に塗り替えられてしまった。行動のスピードと試行の数で、アメリカや中国が圧倒的に前に出たのだ。事実、1989年の世界一・NTTの時価総額と、2019年のAppleのそれを比べると、約9倍もの差がある。日本の製造業は「完成度の高さ」「ミスを許さない品質管理」に価値を置いてきた。このアプローチはモノづくりの世界では強力だったが、変化の速いデジタル時代にはブレーキになってしまった。AIやITの分野では、完成を待っていたら、もう時代が次に進んでしまうからだ。たとえば、Googleはβ版のままサービスを公開し、ユーザーのフィードバックで改良していく。OpenAIも、完全ではないモデルを公開しながら、実際の利用から学習を重ねている。まさに、行動しながら完成させるという手法、これがプラグマティズムの真骨頂なのだ。NTTはどちらかというと、GAFAMに近い業態だが、長年、公共インフラの企業として通信の「安定」「安全」「正確さ」が要求されてきた。「失敗が許されない」、「官僚的な」企業風土の中に長年どっぷりつかってきたということだ。また、国の規制にがんじがらめにされてきた、ということもある。今一度、日本が世界のトップグループに肉薄するのに必要なのが「プラグマティズム」。「プラグマティズムが必要」という言葉を胸に刻みたい。
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