「わかってあげる」 


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田村先生が近江学園にいらっしゃる頃、曽根君という”火付けの子”が預けられて来ました。 


ほかの癖なら用心の仕方がありますが、放火癖は用心の仕方がございません。 


マッチの軸、数を数えて帳面につけて出し入れなさっても、付けようとすれば、ひとつき付ける隙はいくらでもありますから、曽根君が入って来て1月も経つと、先生方が神経衰弱みたいになってしまった。 


ところが田村先生「あの曽根君を、僕にまかしてくれんか」 

「まかしてどうするんか」

 「あの子に風呂の責任まかしてみようと思うんや」 

「火付けに風呂をまかせる?そんな危ないことできるかい!」


先生方、大反対だったそうですが、田村先生一生懸命。


 「じゃあ、どんな事件が起きても、あんたの責任やぞ!」と言うので、田村先生の責任に移されたそうです。 


それから曽根君が変わりました。 


お昼ご飯がすみますと「先生、風呂たいてもいいですか?」 


一生懸命水運んでくる。 


その美しい顔の輝きをごらんになりながら「君のようないい子が、なんでこんなとこへ来るようになったんかい」 


おっしゃった時、にわかに涙を浮かべたそうです。 


「先生、僕は学校で理科の時間“火というものは、酸素があるから燃えるんや。


酸素は新しい空気の中にある。


だから、コンロの戸を開けると、新しい空気が入って炭火がおこる。


新しい空気が入らなければ火が消える”と教わりました。 


火というものはそんなもんだったんか。 


その日ぼくは家に帰って、家のわら小屋で、火をもやして、フタしましたら消えました。 


『ほんとや、はよう友だちに知らしたろ』 


友達の家のほうへ駆けて行ったんですが、遊びに引き入れられて、遊びほうけているうちに気が付いてみたら燃え上がっている。


 “しまった!”駆けつけた時にはとうとう母屋も丸焼け。 


ぼくがいくら理由を話しても本気にしてくれません。 


『恐ろしい子だ。火付けだ』 


『あんなやつが近所にいては、安心して寝ることもできん』 


村の人がさわぎますので、お父さんはぼくを京都の不良少年の学校に預けました。 


ところが京都の先生もぼくを『火付けだ。火付けだ』と…… 


ぼくはむかついて『こんな学校、おったるかい!」と脱走しました。 


行くところがないので村へ帰ったら『火付けが帰って来た』

 『不良少年の学校、脱走したげな』

 『恐ろしいやつが帰って来た』とさわぎますので、今度はここへ預けられたんですが、ここの先生もやっぱりぼくを『火付けだ、火付けだ』


……マッチの軸まで数を数えて帳面につけたりして……


 『そんなに”火付けだ、火付けだ”言うんなら、こんな学校ぐらい本当に燃やしたるぞ』


思うようになった時、ちょうど田村先生がぼくに風呂の責任まかしてくれはったんです。 


世界中ぎようさん人間いるけれど、ぼくをわかってくれるのは田村先生1人だと思ったら、田村先生のおっしゃることやったら、どんなつらいことだって頑張るぞと、ぼく頑張ってるんです」 


泣きながら話したそうです。 

 

そうだったのか、そうだったのか。このいい子をもう少しわかってやることがおそかったら”本当の火付け”にしてしまうところだった。 


わかってもらうことがどんなに嬉しいことか、わかってもらえないことが、どんなにつらいことか、中学生ぐらいになったらなかなかわかってやることがむずかしゅうございますが、しかし、わかってやりましょう。 


そして、何よりも聞いてやりましょう。 


プスッとしてるやつにも聞いて、たずねてやりましょう。 


そしてわかってやりましょう。


 出典元:(子どもの心に光を灯す 東井 義雄)



 


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