龍 「さぁ、ちょっと時間が空いちまったが、今度は右心不全だ!
ここで、前に言っていた血液循環の流れを思い出そう。
全身 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 全身
右心不全は、単独で生じることはほとんどないんだ。普通、左心不全に続いて生じる。
つまり、こんな順番で障害されていく。
①全身 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 全身
②全身 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 全身
③全身 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 全身
④全身 ⇒ 右心房 ⇒ 右心室 ⇒ 肺 ⇒ 左心房 ⇒ 左心室 ⇒ 全身
結 「なるほど!渋滞がどんどん手前に延びていく感じなんですね!!」
龍 「その通りだ!さて、こんな感じで右心系が障害されると、最終的に渋滞はどうなる?」
玉 「全身です!」
龍 「だよな。じゃあ、結。右心不全は、全身で血液が渋滞している状態だ。具体的な症状で言うと、何が思い浮かぶ?」
結 「えーっと、左心不全が肺うっ血と低灌流だったから~…。ふ、」
神楽坂 「はい!右心不全の症状は浮腫です!!」
龍 「そうだ、神楽坂。 結、先越されたな。 じゃあ、玉!浮腫とはむくむことだが、どこに浮腫が出る?」
玉 「よく見かけるのは、下肢の浮腫です!」
龍 「その通り。これは本当によく見かける症状だ。他に何か思い当たる右心不全症状はあるか?」
結 「はい!理由はよくわからないですけど、心不全+食欲不振の人もよく見かけます!」
龍 「良い視点だ。心不全で生じる食欲不振にはいくつかの理由が考えられるが、その一つには消化管浮腫というのもある」
結 「腸に浮腫が生じるんですか?」
龍 「そうだ。腸管に浮腫が生じるせいで、消化機能が低下し、食欲不振を招くことがある」
玉 「知らなかった!」
龍 「ただ、食欲不振は低灌流でも生じる可能性がある。全身倦怠感と一緒にな」
結 「なるほど。決めつけることは出来ないんですね」
龍 「その通り。循環器が苦手な看護師が多いのは、恐らく、『心不全』ひとつでも様々な症状があるのと、その症状の機序が特定しにくいからだろうな。消化器内科で食欲不振といえば内視鏡やエコーなどで原因を精査するが、心不全で食欲不振の場合、血管内のボリュームをあげて低灌流を解消すべきなのか、利尿剤で消化管浮腫を解消すべきなのかを判断しなきゃいけない」
玉 「色んな症例を見て、アセスメントの経験を積む必要があるんですね」
龍 「脳みそをフル回転させなきゃ難しい。さて、次に行こう。国家試験の勉強中に、『肝腫大』っていうのを聞いたことがあるだろう?」
結 「はい!・・・あ!もしかして、それも肝臓の浮腫なんですか?」
龍 「そう!イメージとしては、肝臓が浮腫んで大きくなって、機能低下を起こす」
神楽坂 「浮腫って厄介ですわね~」
玉 「じゃぁ、頸動脈の怒張も血液の渋滞のせいで見られる症状なんですね」
龍 「正解だ。みんな試してほしいんだが、健常であれば仰臥位になると頸静脈が怒張し、45°にギャッジアップすると消失する。ところが右心不全になっている場合、45°に起き上がっても、怒張したままなんだ」
結 「なるほど」
神楽坂 「仰臥位なのに、頸静脈が怒張しない人っているんですか?」
龍 「良い質問だ。極度の脱水状態だと、仰臥位なのに頸静脈の怒張が見られない場合がある」
結 「へぇ~!心不全も脱水も、高齢者に多いし、結構大事なポイントですね!」
龍 「そうだ!循環器に強いと、症状をうまく訴えられない高齢者や小児、言葉なき患者の変化を拾うことが出来る。オレはあらゆる分野の看護師に循環器を知ってほしい。それから、循環器分野が既に得意な看護師は、他の内科分野や、緩和ケアなどを勉強しておくと、もっと幅広い視野を持てるし、勉強すべきだと思っている」
結 「わかりました!」
龍 「さぁ、まとめに入ろう。 右心不全は血液の渋滞と浮腫がメイン。下肢、腸管、肝臓に浮腫が生じ、頸静脈の怒張が見られる」
玉 「結構、シンプルですね」
龍 「まずは簡単なイメージで捉えていくのが大事なんだ。今日はここまで!これで、やっと定義の意味がイメージで掴めるようになったはずだ。次回は、心不全の進展ステージについて説明しよう」
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今回のまとめ
【右心不全】 左心不全に続いて発生する。右心不全単独で生じることは普通ない。
右心不全=体うっ血
=全身での血液の渋滞(頸静脈怒張)+浮腫(下肢、腸管、肝臓)