こちらの記事のコメントで、レジャー白書の将棋人口はかなり粗いのではないか?との指摘があるのを見て、以前から私なりに思っていたことを書いてみます。

 

国民の余暇意識・余暇活動の参加実態についてある程度網羅的・継続的に調査・報告され手軽に参照できるのが公益財団法人日本生産性本部のとりまとめている「レジャー白書」のデータに限られることもあり、将棋人口について語られるときによく参照されます。直近の2023年の白書(調査対象は2022年の実態)では将棋人口460万人とされているようです。しかしレジャー白書の数字は、調査対象年齢や調査サンプル数が限られるなどの問題があることはすでに他の方も指摘されています。なかでも調査対象者の年齢が15〜79歳に限られていることは、将棋普及に興味があり子ども世代の中での将棋普及に関心のある自分にとって参考になりません。

 

そんなレジャー白書ですが、2016年については「少子化時代のキッズレジャー」という特集が組まれており、5歳から14歳の子どもの余暇活動について調査報告がされています。サンプル数は383名、子どもの保護者が回答する形のインターネット調査となっています。将棋については「参加率」(ある余暇活動を、1年間に1回以上おこなった人の割合)が掲載されているのですが、残念ながら「参加人口」(レジャー白書では総務省統計局の推計による人口を掛け合わせて推計する)については掲載されていません。そこで、総務省統計局のページから年齢・男女別人口の表をダウンロードし、レジャー白書2016の数字と掛け合わせて作成したのが以下の表となります。

レジャー白書の考え方で5〜14歳の子どもの将棋人口を算出すると161万人となります。いっぽう、私は以前から全国規模で開催される、初心者でも安心して参加できるテーブルマーク子ども大会の参加者数はひとつの将棋普及の指標になると考えていて、近年の推移について記事も書いています。テーブルマーク子ども大会の場合、参加できるのは小学校6年生以下なので、レジャー白書の調査対象年齢のうち5〜12歳を母数とした数字も出してみました。たとえば総務省によると2016年の5〜12歳人口は854万人であり、レジャー白書の5〜14歳全体での参加率14.9%をかけ合わせると、小学生以下将棋人口は推計127万人、という具合です。(男女別推計の合計だと125万人)テーブルマークこども大会の参加者数を再掲すると、下図のようにコロナ対策禍前で1〜1.1万人程度でしたから、レジャー白書2016の調査とは2桁ほど乖離があります。

大会に参加する子は将棋経験ある子のなかでも特に家族外の人と将棋するくらい将棋が好きな子でしょうから乖離があるのは当然ですが、「将棋人口」というと日常生活の中に将棋が組み込まれている人口を連想する私としては大会参加者数の100倍というのは大きすぎで、せいぜい10倍くらいが妥当なんじゃないかと感じます。

 

レジャー白書の将棋の「参加人口」については、実態はその1/10くらいと見なすのが適当な気がします。