イランの核開発に対するアメリカの制裁をめぐり、緊迫の度合いが高まっています。
 イランについては2002年に核開発疑惑が浮上して以降、何度にもわたり国連安全保障理事会や国際原子力機関(IAEA)理事会により制裁決議が採択されてきました。それにもかかわらず、イラン政府はウラン濃縮活動を継続・拡大を続け、国際社会は「対話」と「圧力」のアプローチにより解決を図ろうとしてきましたが、いまだに解決を見ていません。
 アメリカは圧力の一環として昨年12月31日に「米国防授権法」を成立させました。
概要は以下の通りです。

 
○制裁対象・内容
  イラン中央銀行等と取引を行った外国金融機関に対し、アメリカにおける決済口座の開設禁止等(アメリカ国内での銀行活動ができなくなることに等しい)の制裁を科す。これは国際金融機関にとって致命的なダメージとなり、銀行にとどまらず取引先である国内企業に大きな影響を与えます。

★原油取引
 原油に関し、イランと金融取引を行った外国金融機関に対し、アメリカ大統領がイラン以外の国から十分な原油等の供給が可能であると決定した場合、法律の施行から180日以降に上記の制裁を発動。

★非原油取引
 原油以外に関し、イランと金融取引を行った外国金融機関に対し、法律の施行から60日以内に上記の制裁を発動。

 
☆例外規定
 イラン産原油の購入を相当程度削減した国とアメリカ大統領が決定する場合、同国の金融機関は制裁の対象とならないとの例外規定があります。

 かねてより石油開発の分野で日本とイランは深い関係にありました。米国イラン関係と比べ、イランとの両国関係は友好的に推移してきました。それでも核開発疑惑以降輸入量を減らし、これまで5年間で40%減らしています。2010年度でイランからの原油輸入量第4位9.8%を占めています。震災による原発停止により石油の必要性は高まる中で、さらに原油価格は高騰しており、大変厳しい情勢下ではありますが、日本としては輸入量を減らすことで、制裁を回避する構えです。
 
 イギリス、フランス、ドイツなどは制裁積極推進派であるのに対し、ギリシャ、スペイン、イタリアなどはイランからの原油輸入量が多いことから、債務危機を抱える国々は制裁に対し、少し慎重であるといえます。また、中国やインドは消極的であり、各国で温度差が見られます。

 しかしながら、核開発を中止すべきであるというのは国際社会の一致した意見となっています。
 
 ここでアメリカの姿勢が重要となってきますが、 この「米国防授権法」は上記の例外規定にあるとおり、「相当程度」「顕著に」原油決済を減らした場合に制裁対象からはずすとされています。しかし、非常に国際社会に大きな影響を与えるものでありながら、判断基準は具体的な数値ではなく、あくまでも「アメリカの大統領に委ねられている」という点において問題のある内容であると思います。
 
 日本は、隣国に同じような核開発を続ける北朝鮮があり、そして中東に多くの原油輸入を頼っています。国内で石油が必要である国内問題を優先させたい現状において一方で世界の平和と安定にも貢献できる枠組みやルールとのバランスを取る必要があります。非常に重要なこの問題について外務委員としてしっかりと注視してまいります。