亜子ちゃんの部屋は如何にも女の子の部屋と言う感じで、ピンクと白を基調に綺麗に整われていた。その壁の所々にカズの写真が飾ってある。
櫻井くんがカズを気にかけて、
「気持ち悪かったらゴメンね」と言ってくれる。
カズは首を振って「うれしい」と笑みを浮かべた。
それほどたくさん飾ってある訳ではないし、芸能人好きの子の部屋ってもっと凄いだろう。
そんな俺の思いを潤が聞いてくれた。
「好きな芸能人とかいなかったんですか?」
「カズくんとメル友になる前は少しはいたみたいだけど、身近な人の方が良いって言ってた。
カズくんとはいつか会えるって信じていたからね」
そこに突然、別の男性の声がした。
「亜子は好きだったんだと思う。カズくんを……」
「雅紀、いきなり失礼だろう」
「すみません。従弟の雅紀です。翔ちゃん本当にいたんだね」
「雅紀。だから失礼だって…」
櫻井くんがあたふたしているのに、全く気にせずに続ける。
「だって俺達、絶対に騙されているって思ってたもん。
メル友なんて信用できない。きっといたずらだって、今日の今日まで信じてなかったじゃん」
「もう、お前は黙ってろ」
櫻井さんのあわてぶりと、あっけらかんと話す雅紀さんがおかしくて3人で笑っていた。
「ゴメンね。雅紀の言う事は本当だよ。
病気で友達がなかなか出来なかったのもあって、俺の知らない間にメル友なんて出来ていて
大反対したんだ。絶体騙されるからやめろって…」
「でも、その辺の区別は出来るなんて言っちゃって、結局何人かとやっていたみたいだけど
最後まで残ったのはカズくんだけだった」
「他にもいたんですね」
「そう言う方法でしか友達が出来ないからね。だけど他の子はすぐに会いたいと言ってきたり、
病気だと分かった途端に連絡が途絶えたみたいで、それもあって病気の事は隠していたんだと
思う。だけど結局3年間も続いたのはカズくんだけで、一度も会いたいといわなかったのも
カズくんだけだったらしい。それで亜子は信じたんだ」
「逆に俺達は怪しいと思ったけどね。
だって3年も付き合っていれば会いたいと思うじゃん。どうして会おうとしなかったの」
雅紀くんがストレートに聞いてくる。
「僕、嘘ついていたから……」
「嘘?」
「住んでいる所が教えた場所よりもっと田舎なんだ」
「たったそれだけで?」
「カズくんにとっては大きかったんだよね。嘘を付いたまま会えなかったんだよね。
だから今回会う時は正直に話すつもりだったんでしょう」
「僕は卑怯なんだ。亜子ちゃんはこのままだったのに僕だけ嘘をついて…」
「そんな事ないよ。亜子だって病気の事を隠していた。これだって嘘だよ」
そう言って優しい笑顔を見せる櫻井くんが凄く大人に見えた。