源氏物語イラスト訳【紅葉賀149】古りがたう
「さも古りがたうも」と、心づきなく見たまふものから、「いかが思ふらむ」と、さすがに過ぐしがたくて、裳の裾を引きおどろかしたまへれば、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
「さも古りがたうも」と、心づきなく見たまふものから、
訳)「それほど年を食っていないな…」と、心惹かれずにご覧になる一方で、
「いかが思ふらむ」と、さすがに過ぐしがたくて、
訳)「どのように思っているのだろうか」と、やはり見過ごしがたくて、
裳の裾を引きおどろかしたまへれば、
訳)裳の裾を引っ張って注意を引きなさったところ、
【古文】
「さも古りがたうも」と、心づきなく見たまふものから、「いかが思ふらむ」と、さすがに過ぐしがたくて、裳の裾を引きおどろかしたまへれば、
【訳】
「それほど年を食っていないな…」と、心惹かれずにご覧になる一方で、「どのように思っているのだろうか」と、やはり見過ごしがたくて、裳の裾を引っ張って注意を引きなさったところ、
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■【さも】…それほど。たいして
■【古りがたう】…ク活用形容詞「ふりがたし」連用形ウ音便
※【古(ふ)りがたし】…古びることなく、変わらない。昔のままである
■【も】…強意の係助詞
■【心づきなく】…ク活用形容詞「心づきなし」連用形
※【心づきなし】…気にくわない。心惹かれない
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ものから】…逆接の接続助詞
■【いかが】…どのように
■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【さすがに】…そうはいってもやはり
■【過ぐし】…サ行四段動詞「過ぐす」連用形
■【―がたし】…~することができない
■【て】…単純接続の接続助詞
■【裳(も)】…平安時代、成人した女性が正装のときに、最後に後ろ腰につけて後方へ長く引き垂らすようにまとった衣服
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【裾(すそ)】…衣服の下の端の部分
■【を】…対象の格助詞
■【引く】…引っ張る
■【おどろかす】…気づかせる。注意を促す
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【れ】…完了の助動詞「り」連体形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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主上の御梳櫛にさぶらひけるを、果てにければ、主上は御袿の人召して出でさせたまひぬるほどに、また人もなくて、この内侍、常よりもきよげに、様体、頭つきなまめきて、装束、ありさま、いとはなやかに好ましげに見ゆるを、「さも古りがたうも」と、心づきなく見たまふものから、「いかが思ふらむ」と、さすがに過ぐしがたくて、裳の裾を引きおどろかしたまへれば、かはぼりのえならず画きたるを、さし隠して見返りたるまみ、いたう見延べたれど、目皮らいたく黒み落ち入りて、いみじうはつれそそけたり。
【問】 傍線部の敬語の説明として最も適当なものを選べ。
1.光源氏に対する尊敬語
2.光源氏に対する謙譲語
3.源典侍に対する尊敬語
4.源典侍に対する謙譲語
5.光源氏に対する丁寧語
「たまふ」は、基本的に尊敬語っですが、
文脈によっては謙譲語にもなる、多義敬語です。
見分け方は、
直後の「れ」に着目!
「る」「れ」の直前に何が接続しているかで、受身系統の「る」なのか、完了の「り」なのかを識別します。
特に、「たまへり」「たまへる」「たまへれ」の場合は、この助動詞の接続から、「たまふ」は四段活用・已然形に決まっていますので、、確実に、尊敬語となります。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】