源氏物語イラスト訳【紅葉賀99】ただ人にて
ただ人にてかたじけなき御ありさま、容貌に、ねびもておはするを御覧ずるままに、心苦しく思し召すを、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は離宮に下がり、光源氏との不義密通の御子を出産しました。四月になり、藤壺宮と御子が宮中に戻りました。
源氏物語イラスト訳
ただ人にてかたじけなき御ありさま、容貌に、
訳)臣下としてもったいないご様子、容貌で、
ねびもておはするを御覧ずるままに、
訳)成長していらっしゃるのをご覧になるにつけ、
心苦しく思し召すを、
訳)おいたわしくお思いになるので、
【古文】
ただ人にてかたじけなき御ありさま、容貌に、ねびもておはするを御覧ずるままに、心苦しく思し召すを、
【訳】
臣下としてもったいないご様子、容貌で、成長していらっしゃるのをご覧になるにつけ、おいたわしくお思いになるので、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【ただ人】…臣下
■【にて】…資格の格助詞
■「かたじけなき】…ク活用形容詞「かたじけなし」連体形
※【かたじけなし】…もったいない。ありがたい
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒光源氏)
■【ありさま】…ようす
■【容貌(かたち)】…顔かたち
■【に】…対象の格助詞
■【ねび】…バ行上二段動詞「ねぶ」連用形
※【ねぶ】…成長する
■【もて―】…語調を整える接頭語
■【おはする】…サ変動詞「おはす」連体形
※【おはす】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【を】…対象の格助詞
■【御覧ずる】…サ変動詞「ごらんず」連体形
※【ごらんず】…「見る」の尊敬語(作者⇒桐壺帝)
■【~ままに】…~につけ。~につれて
■【心苦しく】…シク活用形容詞「心苦し」連用形
※【こころぐるし】…気の毒だ。いたわしい
■【思し召す(おぼしめす)】…「思ふ」の尊敬(作者⇒帝)
■【を】…順接の接続助詞
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【大学入試予想:マーク問題】
ただ人にてかたじけなき御ありさま、容貌に、ねびもて⒜おはするを御覧ずるままに、心苦しく⒝思し召すを、
【問】 傍線部⒜⒝の敬意対象の組み合わせとして正しいものを1つ選べ。
1.⒜ 光源氏 ⒝ 桐壺帝
2.⒜ 光源氏 ⒝ 光源氏
3.⒜ 御子 ⒝ 桐壺帝
4.⒜ 桐壺帝 ⒝ 光源氏
5.⒜ 御子 ⒝ 桐壺帝
【敬語の敬意対象】は、大学入試頻出の文法事項です。
『源氏物語』の仲でも、身分の高い人々ばかりが出てくる場面でのやりとりは、主体にも、客体にも敬意が用いられているので、敬語から主語を判別することは、非常に難易度が高いです。
しかし、今回のように、一方が帝の場合には、
【御覧ず】
【思し召す】
【おはします】
などの最高敬語が使われます。
それに対し、光源氏には、
【思す】
【おはす】
などの普通の尊敬語が用いられています。
⒜は、「おはす」という通常の尊敬語、
⒝は、「思し召す」という最高敬語。
このような敬語の微妙な使われ方の違いにも着目したいですね。
※【答え】は最後にあります。ぜひやってみてね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
答え…【1】