源氏物語イラスト訳【末摘花168】雪の光に照らされて…
「をかしきほどの空も見たまへ。尽きせぬ御心の隔てこそ、わりなけれ」
と、恨みきこえたまふ。まだほの暗けれど、雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを、老い人ども笑みさかえて見たてまつる。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅したものの、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏は気が向かなかったけれど、彼女の人となりを確かめようと、彼女の様子をうかがいます。
源氏物語イラスト訳
「をかしきほどの空も見たまへ。
訳)「趣深い風情の空を御覧なさい。
尽きせぬ御心の隔てこそ、わりなけれ」と、恨みきこえたまふ。
訳)いつまでもなくならないお心のわだかまりが、何とも耐えがたいものだ」と、お恨み申し上げなさる。
まだほの暗けれど、雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを、
訳)まだほの暗いけれど、雪の光にますます美しく若々しく見えなさるのを、
老い人ども笑みさかえて見たてまつる。
訳)年老いた女房どもは、顔じゅうに笑みを浮かべて見申し上げる。
【古文】
「をかしきほどの空も見たまへ。尽きせぬ御心の隔てこそ、わりなけれ」と、恨みきこえたまふ。まだほの暗けれど、雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを、老い人ども笑みさかえて見たてまつる。
【訳】
「趣深い風情の空を御覧なさい。いつまでもなくならないお心のわだかまりが、何とも耐えがたいものだ」と、お恨み申し上げなさる。まだほの暗いけれど、雪の光にますます美しく若々しく見えなさるのを、年老いた女房どもは、顔じゅうに笑みを浮かべて見申し上げる。
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■【をかしき】…シク活用形容詞「をかし」連体形
※【をかし】…趣深い
■【ほど】…様子
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【見たまへ】…ご覧なさい
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」命令形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒末摘花)
■【尽きせ】…サ変動詞「尽きす」未然形
※【尽きす】…尽きる。なくなる
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【御―】…尊敬の接頭語(光源氏⇒末摘花)
■【心】…心。気持ち
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【隔て】…わだかまり
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「わりなけれ」)
■【わりなけれ】…ク活用形容詞「わりなし」已然形
※【わりなし】…何とも耐えがたい
■【と】…引用の格助詞
■【恨み】…マ行上二段動詞「恨む」連用形
■【きこえ】…謙譲の補助動詞(作者⇒末摘花)
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【まだ】…今はまだ
■【ほの暗けれ】…ク活用形容詞「ほの暗し」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【に】…対象の格助詞
■【いとど】…ますます
■【きよらに】…ナリ活用形容動詞「きよらなり」連用形
※【きよらなり】…清らかに美しい
■【若う】…ク活用形容詞「若し」連用形ウ音便
■【見え】…ヤ行下二段動詞「見ゆ」連用形
※【見ゆ】…見える
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【を】…対象の格助詞
■【老い人】…年老いた女房
■【―ども】…複数の接尾語
■【笑みさかゆ】…顔じゅうに笑みを浮かべる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【たてまつる】…謙譲の補助動詞(作者⇒光源氏)
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