源氏物語イラスト訳【末摘花167】後ろ髪引かれる朝帰り
踏み開けたる跡もなく、はるばると荒れわたりて、いみじう寂しげなるに、ふり出でて行かむこともあはれにて、
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)との初夜を終えた光源氏。なんだか思っていたのと違って、幻滅したものの、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏は気が向かなかったけれど、彼女の人となりを確かめようと、彼女の様子をうかがいます。
源氏物語イラスト訳
踏み開けたる跡もなく、はるばると荒れわたりて、
訳)踏んで道をつけた足跡もなく、はるか遠くまで 一面に荒れわたって、
いみじう寂しげなるに、
訳)ひどく寂しそうな様子であるのに、
ふり出でて行かむこともあはれにて、
訳)振り捨てて出立するようなのも気の毒なので、
【古文】
踏み開けたる跡もなく、はるばると荒れわたりて、いみじう寂しげなるに、ふり出でて行かむこともあはれにて、
【訳】
踏んで道をつけた足跡もなく、はるか遠くまで 一面に荒れわたって、ひどく寂しそうな様子であるのに、振り捨てて出立するようなのも気の毒なので、
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■【踏み開け】…カ行下二段動詞「踏み開く」連用形
※【踏みあく】…踏んで道をつける
■【たる】…完了の助動詞「たり」連体形
■【跡】…足跡
■【も】…強意の係助詞
■【なく】…ク活用形容詞「なし」連用形
■【はるばると】…はるか遠くまで
■【荒れ】…ラ行下二段動詞「荒る」連用形
■【―わたる】…一面に~する
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いみじう】…シク活用形容詞「いみじ」連体形ウ音便
※【いみじ】…ひどい
■【寂しげなる】…ナリ活用形容動詞「寂しげなり」連体形
■【に】…逆接の接続助詞
■【ふり出で】…ダ行下二段動詞「ふり出づ」連用形
※【ふり出づ】…振り捨てて出て行く
■【て】…単純接続の接続助詞
■【行か】…カ行四段動詞「行く」未然形
■【む】…婉曲の助動詞「む」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【あはれに】…ナリ活用形容動詞「あはれなり」連用形
※【あはれなり】…気の毒だ
■【て】…単純接続の接続助詞
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【本日の源氏物語】
平安時代は、貴族たちは雪が降ったら、庭園の雪景色を観賞したようです。
雪は真っ白で、足で踏んだらすぐにその風情は消されます。
まったく足で踏み荒らされた痕跡がない……つまり、誰も人が来るような場所ではない……。
これが、この常陸宮邸です。
このような寂しげな場所を、光る源氏は「後朝(きぬぎぬ)」だからといって、すぐに退出するような、思いやりのない行為を、したくはなかったようですね;;
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
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