源氏物語イラスト訳【末摘花117】複雑
命婦、「あな、うたて。たゆめたまへる」と、いとほしければ、知らず顔にて、わが方へ往にけり。
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【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君の噂を聞いた光源氏は、「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱き、大輔命婦に手引きを頼んでようやく逢瀬を迎えます。
【源氏物語イラスト訳】
命婦、「あな、うたて。
訳)大輔命婦は、「まあ、ひどい。
たゆめたまへる」と、いとほしければ、
訳)油断させなさったの」と、気の毒なので、
知らず顔にて、わが方へ往にけり。
訳)知らない顔をして、自分の部屋の方へ行ってしまった。
【古文】
命婦、「あな、うたて。たゆめたまへる」と、いとほしければ、知らず顔にて、わが方へ往にけり。
【訳】
大輔命婦は、「まあ、ひどい。油断させなさったの」と、気の毒なので、知らない顔をして、自分の部屋の方へ行ってしまった。
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■【命婦(みょうぶ)】…大輔命婦。光源氏の乳母子の1人
■【あな】…ああ(感動詞)
■【うたて】…不快だ。ひどい
■【たゆめ】…マ行下二段動詞「たゆむ」連用形
※【たゆむ】…油断させる
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(命婦⇒光源氏)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【いとほしけれ】…シク活用形容詞「いとほし」已然形
※【いとほし】…気の毒だ
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【知らず顔】…知らないふり
■【にて】…状態の格助詞
■【わが】…自分の
※【が】…連体修飾格の格助詞
■【方(かた)】…方向
■【へ】…方向の格助詞
■【往(い)に】…ナ変動詞「往ぬ」連用形
※【往(い)ぬ】…行ってしまう
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
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命婦の複雑な心情と行為です。
光源氏が末摘花のいる御簾のなかに押し入ります。
自分がそこにいることは光源氏は承知しているため、
これから事に及ぼうとする2人のそばに、いるわけにもいかず…
末摘花に対しても気の毒で…
かなり、複雑な感情をかかえて、彼女は退散したように想われますね。
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