源氏イラスト訳【若紫264】舞人
十月に朱雀院の行幸あるべし。舞人など、やむごとなき家の子ども、上達部、殿上人どもなども、その方につきづきしきは、みな選らせたまへれば、親王達、大臣よりはじめて、とりどりの才ども習ひたまふ、いとまなし。
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【源氏物語イラスト訳】
十月に朱雀院の行幸あるべし。
訳)神無月に朱雀院への帝のお出かけがある予定だ。
舞人など、やむごとなき家の子ども、上達部、殿上人どもなども、
訳)舞人などを、高貴な家柄のご子息たちや、公卿、殿上人たちなど、
その方につきづきしきは、みな選らせたまへれば、
訳)その方面においてふさわしい人々は、皆お選びあそばしたので、
親王達、大臣よりはじめて、とりどりの才ども習ひたまふ、いとまなし。
訳)大臣をはじめとして、それぞれ多様 な伎芸を練習なさることで、なかなか暇がない。
【古文】
十月に朱雀院の行幸あるべし。舞人など、やむごとなき家の子ども、上達部、殿上人どもなども、その方につきづきしきは、みな選らせたまへれば、親王達、大臣よりはじめて、とりどりの才ども習ひたまふ、いとまなし。
【訳】
神無月に朱雀院への帝のお出かけがある予定だ。舞人などを、高貴な家柄のご子息たちや、公卿、殿上人たちなど、その方面においてふさわしい人々は、皆お選びあそばしたので、親王たちや、大臣をはじめとして、それぞれ多様 な伎芸を練習なさることで、なかなか暇がない。
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■【十月】…初秋。「かんなづき」と読む
■【に】…時を示す格助詞
■【朱雀院8すざくいん)】…朱雀大路の西にある上皇の御所
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【行幸(みゆき)】…天皇のお出かけ
■【ある】…ラ変動詞「あり」連体形
■【べし】…予定の助動詞「べし」終止形
■【舞人(まいびと)】…舞を舞う人
■【など】…例示の副助詞
■【やむごとなき】…ク活用形容詞「やむごとなし」連体形
■【やむごとなし】…高貴だ
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【―ども】…複数の接尾語
■【上達部(かんだちめ)】…公卿。三位以上の上級役人
■【殿上人(てんじょうびと)】…清涼殿の「殿上の間」に昇ることを許された人。四位以上の人
■【―ども】…複数の接尾語
■【など】…例示の副助詞
■【も】…強意の副助詞
■【その方(かた)】…その方面。舞人などの方面
■【に】…対象の格助詞
■【つきづきしき】…ク活用形容詞「つきづきし」連体形
※【つきづきし】…似つかわしい。ふさわしい
■【は】…取り立ての係助詞
■【みな】…皆。全員
■【選ら(えら)】…ラ行四段動詞「選る」未然形
※【選(え)る】…選ぶ
■【せ】…尊敬の助動詞「す」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒帝)
■【れ】…完了の助動詞「り」已然形
■【已然形+ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【親王(みこ)】…天皇の兄弟および皇太子以外の皇子の称号
■【達(たち)】…~たち(複数の接尾語)
■【大臣(おとど)】…大臣(だいじん)に同じ
■【よりはじめて】…~をはじめとして
※【より】…起点の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【とりどり】…色とりどり。様々な。多様
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【才(ざえ)】…技能。技芸
■【―ども】…複数の接尾語
■【習ひ】…ハ行四段動詞「習ふ」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【いとま】…暇
■【なし】…ク活用形容詞「なし」終止形
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ここで急に「行幸」の話が出てきましたね。
尼君が危篤、という知らせを光源氏が聞き、
若紫を引き取る手続きをしたかったでしょうが、
「行幸」の「舞人」には、光源氏も選ばれているはずで、
その練習にも余念がなく、
このような煩雑な時に、なかなか手順通りに事を進める時間が取れなかったのだと分かります。
結果だけを見ると、
光源氏が若紫を略奪したという事実だけが残ってしまいますが、
このような状況も踏まえて鑑賞すると、
こうせざるをえなかった光源氏の立場も
なんだか、わかるような気がします。
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