四国
『なに!伊達軍が来ねぇだと!』
家康は井伊直政に詰め寄った
『どうやら、四国を目指すようですな』
直政、淡々と言った
『くっそぉ!政宗めが!なめやがって!』
家康は悔しそうに爪を噛んだ
この殿も、もう少し大人になれば、幸村などに遅れをとらないんだがな
井伊直政はため息を一つついた
『山内への援軍はどうします?』
『やらん!熊本の加藤と鹿児島の黒田に援軍を出させろ!』
家康、顔を怒りで上気させたまま吐き捨てた
もちろん、家康にそんな権限がない事くらい、井伊直政にはわかっている
直政はため息を一つついた
京都
『ほぉう。伊達が四国へ攻め込む気じゃと?』
信玄は何故か嬉しそうに呟いた
『信玄さん、何がそんなにうれしいんですか?』
聞いたのは、もちろん真田幸村
『面白いではないか。今や、我に刃向かう者は上杉くらいかと思っておったが。なかなか楽しませてくれる。伊達政宗。いや、土方歳三と言うべきか』
信玄は大声で笑った
『やれやれ、もの好きだなぁ、信玄さんも。ま、僕は興味ないですけどね。』
『ふん。お前の目的は戦だけであろう。』
『まあ、否定はしませんよ。ところで信玄さん。家康さんが、加藤と黒田を四国の増援に出してはどうかって言ってるみたいですよ』
『捨て置け。どのみち四国は落ちる。兵力の無駄遣いはしたくはない。そんなに気にかかるなら自分で行け、と伝えよ』
『またそんな意地悪を言って。家康さん、びびっちゃいますよ。信玄さんも人が悪いなぁ』
『幸村よ。お主に言われたくないわ。』
二人とも、顔を見合わせて笑った
『結局、信玄さんも僕も、ただ退屈してるだけかもしれませんね』
幸村が微笑みながら呟いた
三笠
どうにも静か過ぎる
一体、武田信玄は何を考えている
今川の時といい、今回の四国攻略といい全く手を打つ様子がない
どういう事だ?
まあいい 今のうちに陥せる所は陥させてもらおう
歳三は考えに沈んだ
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