今回は、先手中飛車が美濃囲いに囲った場合の対居飛車穴熊の将棋を見ていきます。中飛車が穴熊を選ぶのも有力ですが、個人的には美濃で中飛車が攻める順を検討したいので、美濃で行きたいと思います。

 

このブログでは角道オープン中飛車を研究していきたいのですが、居飛車穴熊に対しては5筋位取りの中飛車と合流する予定です。

 

戸辺先生の本を参考にしつつ、実戦的な手段を検討していきます。冨田先生の本もあるのですが、(第二図の時点で)▲16歩をなぜ突いているのかもよくわからないので、今回は取り上げません。

 

 

上図(△43金まで)の局面は中飛車の手番で、▲65銀、▲46歩、▲16歩あたりが候補手です。ただ、▲46歩と▲16歩は直接的な意味はわかりづらいので、▲65銀と素直に出る手を考えます。居飛車は△12香で穴熊を目指しますが、▲54歩と仕掛けてみます。

 

 

△同歩▲同銀の進行は中飛車ペースです。△同金▲同飛なら攻めの銀を捌いて十分ですし、△42金▲53歩も拠点が大きく十分でしょう。

 

△54同歩に代えて△42銀で厚く受ける手もありますが、それなら穴熊を放棄した事になるので、中飛車不満なしでしょう。また、△64歩は▲53歩成△同銀▲54歩△42銀▲64銀でやはり中飛車十分です。

 

そこで、△11玉と穴熊に潜ります。中飛車は手が広いですが、▲75歩を選んでみます。戸辺先生の「1手ずつ解説する先手中飛車」で、推奨されている手です。△22銀には▲74歩と仕掛けます。

 

 

次に▲53歩成(△同銀は▲73歩成△同桂▲74銀、△同金は▲54銀)があるので、普通は△74同歩ですが、▲55角と出て中飛車ペース。

 

△73銀には▲74銀、△73桂には▲53歩成△同金▲73角成△同銀▲53飛成があるので、△92飛はやむなしですが、▲74銀△54歩▲83銀不成△55歩▲92銀成で、形勢は互角ですが、飛車を取った中飛車が実戦的にわかりやすいでしょうか。

 

 

以下、△92同香には▲52飛△73銀▲32飛成△42金▲33竜△同銀▲55飛△53歩▲74歩△同銀▲54歩が一例で中飛車よしです。

 

 

 

では、次に居飛車が右銀を早めに玉側に寄せてから、穴熊に潜りに行く順について考えてみます(下図は△42銀右まで)。

 

 

ここで▲65銀は▲54歩からの金銀交換が狙えないですし、すぐに△64歩で追い返される可能性もあります(▲同銀は△62飛)。

 

そこで、▲46歩で▲45歩や▲47銀引のような手を用意します。居飛車がまだ△43金型ではないので、潜在的には▲45歩△同歩▲同銀から、▲34銀を狙うような手が生じています。

 

▲46歩には△43金▲75歩と7筋の位を取ります。ちなみに、▲75歩を防ぐために△43金に代えて△74歩と突くと、▲65銀△72飛▲54歩で中飛車ペースでした。

 

▲75歩以下、△32金▲47銀引△12香と進むのが一例ですが、中飛車はそこで▲56飛と浮きます。石田流(▲76飛型)への組み換えが真の狙いでした。

 

 

▲56飛に△11玉は、▲66飛(次に▲63飛成)が意外と受けづらく、△62飛には▲86歩が好手(▲74歩△同歩▲95角や▲76飛も有力)。

 

 

△82飛と戻るくらいですが、▲85歩△同飛▲86歩△82飛▲63飛成があります。

 

よって、▲56飛には△84飛と浮き飛車で対抗します。一旦、▲66飛△64歩(△64飛からの飛車交換は、▲69金型が活きて中飛車よし)の交換を入れておく事で、後に▲74飛~▲64飛の捌きが可能になります。

 

そして、▲76飛△11玉に▲74歩と仕掛けます。居飛車の応手に△74同歩と△86歩が予想されますので、順に見ていきます。

 

 

(1)△74同歩

 

△74同歩には、▲95角と▲66角があります。

 

▲95角は△82飛▲74飛△73歩▲64飛で中飛車ペースではありますが、△45歩▲61飛成△86歩のように開き直って反撃されると、意外と大変な印象もあります。

 

 

以下、▲71竜には△85飛▲86角△55角のような感じで居飛車の角が捌けてきます。

 

▲95角に代えて▲66角の方が、中飛車の角が居飛車の角と同じラインにいるため、△45歩が緩和されています(単に△45歩で角道を開けるだけでは、△55角と出られない)。

 

反撃筋が△86歩だけであれば、△74同歩に▲66角△82飛▲74飛△73歩▲64飛△86歩▲61飛成△87歩成のような変化の時、▲83歩△同飛▲84歩で居飛車の飛車を押さえておけば、明らかに中飛車よしです。

 

 

▲66角には、△75歩▲同飛△73歩とひねって受けるのが最善のようですが、▲77桂と活用して中飛車十分。

 

 

例えば、△22銀▲58金左(▲77桂型のため、一段金の価値が低い)と固め合った後、好きな時に▲85飛(▲72歩のような手段もある)から決戦に行けます。中飛車陣も十分に固いですし、左桂が捌ける事もあり、その飛車交換は中飛車に分があります。

 

 

(2)△86歩

 

▲73歩成が飛車に当たらない△84飛型を活かして、△86歩から攻め合ってきた場合です。これにも▲66角と切り返します。

 

 

(A)△74飛

 

▲同飛△同歩▲83飛△73桂!▲同飛成△87歩成は、互角の捌き合いで居飛車にと金が出来ているのが大きく、穴熊が遠くて堅い居飛車よしのようです。中飛車の竜の位置も良くないでしょう。

 

 

よって、飛車交換には応じません。そもそも、▲69金型のため△74飛が飛成の先手ではありませんので、▲86飛△65歩▲88角△84歩▲56銀△64飛▲72歩のように進めます。▲72歩が7筋が切れた場合での振り飛車側の常套手段。これなら中飛車十分です。

 

 

(B)△85飛

 

この逃げ場所は▲86歩 or ▲77桂が飛車取りの先手で入るので、居飛車は単に△83飛の方が勝ります。

 

▲86歩(▲77桂)△83飛▲73歩成△同飛▲74歩△83飛▲77桂のように進めて中飛車十分。次に攻めるなら▲75角や▲85歩~▲84歩、固めるなら▲58金左です。ちなみに、▲85桂は△72歩で大したことありません。

 

 

(C)△83飛

 

中飛車は▲73歩成です。△同飛は先手ではないので、▲86飛△83歩▲72歩で中飛車よし。よって△73同桂が本命です。

 

△73同桂にすぐに▲74歩もなくはないですが、飛車先が重くなるため遅く、△65桂で居飛車の右桂に活用される罪の方が大きくつくようです。

 

 

また、▲74歩に代えて▲86歩も微妙な可能性があります。▲86歩を支えるために▲76飛が動きづらくなる事情もありますし、そもそも△86歩を放置してすぐに△87歩成とされても▲84歩で居飛車の飛車を押さえる手が生じて、逆に中飛車が指しやすくなります。

 

よって、▲58金左と中央に固めておくのが好手。中飛車は次こそ▲74歩から攻めたいので、居飛車はここで△45歩から仕掛けてきます。

 

しかし、△45歩▲同歩に△65歩と突かざるを得ないのが居飛車の悩ましいところ。▲74歩に△65桂と跳べなくなります。

 

 

以下、▲57角△55角▲74歩△72歩▲73歩成が一例で、中飛車まずまずの分かれ。△同飛なら▲同飛成△同歩▲61飛。△同歩なら▲98香△88角成▲44桂が一例です。

 

 

という事で、今回は先手中飛車(美濃囲い)と居飛車穴熊の将棋を検討しました。

中飛車の攻撃力が高い事もあり、美濃囲いでも互角以上に戦えそうだと思いました。