今回から、角道オープン中飛車についての記事になります。

この作戦の思想については、前回の記事で書きましたので省略します。

 

また、この作戦に関しては、自分はまだ実戦で試したことがないので、実感としてお話しすることはできません。

 

よって、この角道オープン中飛車シリーズは、自分の研究内容だけをそのままご紹介する感じになります。その点はご了承ください。

 

では、具体的に見ていきます。

 

まずはこの「角道オープン中飛車」と「5筋位取り中飛車」の違いをご紹介します。その違いを見てみて、「角道オープン中飛車」が自分に向く中飛車だと思う方は、ぜひ実戦で試していただければと思います。

 

前回の記事を投稿した後、将棋AIで色々と検討したところ、「角道オープン中飛車」と「5筋位取り中飛車」の大きな違いは、下記の2点らしいという事がわかりました。逆に言えば、他の点については、5筋位取り中飛車の将棋と概ね合流すると思われます。

 

(A)△64銀型系の急戦に対しては、▲66銀型ではなく▲66歩型で対応する。

(B)将棋AI的には、「丸山ワクチン」が居飛車側の最有力手段になる

(A)については、▲66銀型が苦手な自分にとってはとても嬉しい事ですが、押さえ込み派の中飛車党にとっては、あまり嬉しくないのかもしれません。

 

例えば、下図のような局面を好きな方には、「角道オープン中飛車」はあまりお勧めできません。

 

 

 

(B)については、角交換振り飛車が好みかどうかという一点に尽きるかと思います。例えば、下図が一例です。

 

 

この局面で先手を持ちたくないという方には、あまりお勧めできません。評価値的には、後手の居飛車に150点ほど振れる局面です。

 

ただ、どうでしょう?攻めの棋風の方であれば、すぐに仕掛けができそうな先手を持ちたい局面のような気がします。すぐに仕掛けなくても、先手がここから木村美濃等に組み替えて、手厚い形を目指す事もできます。

 

また、このように向かい飛車に振り直さず、中飛車のまま戦ったり、石田流を目指す指し方もあるでしょう。

 

個人的には、振り飛車も十分やれる局面に見えます。



 

では次に、具体的に局面を見ながら、広く浅く検討していきます。今回は居飛車が△85歩と△34歩を決めてきたケースを考えていきます。

 

下図が基本図です(▲58飛まで)。

 

 

 

ここから、基本図以降の変化を軽くご紹介します。詳細な変化については、後日、別の記事で扱うかもしれません。

 

 

(1)基本図から△77角成

 

この手が将棋AIの示す最善手です。この角交換型の将棋については、概ね丸山ワクチンと合流しますので、後手ゴキゲン中飛車の棋書等を参考にしてください。少なくともこの記事では、具体的な変化は議論しません。

 

 

(2)基本図から△54歩

 

色々指し方があると思いますが、個人的には戸辺先生流で、▲22角成から角交換中飛車の将棋に持っていきたいと思っています。少し手損になりますが、ここで角交換してしまえば5筋を切れる確率が高いので、指し手がわかりやすくなります。

 

(1)と同様、これも従来からある形なので、詳細は割愛します。

 

 

(3)基本図から△74歩

 

居飛車が急戦を志向した場合の手です。ここで▲55歩では、5筋位取り中飛車の形と合流しますので、先手は▲48玉です。


そこで△73銀なら、▲66歩と応じ、△64銀に▲65歩を用意します。

 

 

▲66銀型で厚く受けるのではなく、▲65歩からノーマル振り飛車風に捌いて受けるイメージです。▲55歩型でないため、中飛車側の負担が軽減されています。

 

この△64銀型系の急戦への対応については、後日詳しくやっていければと思っていますが、いつになることやらw

 

 

(4)基本図から△42玉

 

ここで▲55歩では、やはり5筋位取り中飛車に合流しますので、「角道オープン中飛車」である以上、▲48玉の一手です。

 

次に居飛車が△77角成では(1)、△54歩では(2)の将棋です。また、△74歩では▲22角成△同銀▲55角がありますので、△32玉としましょう。

 

さて、ここで先手が▲55歩と突き、次に▲54歩を狙うとどうなるでしょうか?

 

▲55歩以下、△74歩▲54歩△同歩▲同飛△86歩▲同歩△77角成▲同銀△45角が一例です。角交換振り飛車の天敵である△45角がこれでもかと刺さります。

 

 

飛車取りかつ▲34飛を封じられた上、27と67への両成までかかっており、受からない格好です。中飛車が望む展開ではないでしょう。▲55角は△72飛▲91角成△54角でダメです。

 

ただし、この変化はダメですが、△32玉に▲55歩はダメな手ではありません。

 

好み(主に丸山ワクチンが嫌かどうか)にもよりますが、居玉模様からの後手の急戦が消えた段階で、「△64銀型が間に合う前に、負担になりそうな▲55歩を捌く準備(▲54歩と突く準備)をする」+「丸山ワクチンを封じる」のは有力になります。

 

例えば、△32玉▲55歩△74歩にいったん▲38玉と寄っておき、そこで例えば△73銀なら、▲54歩と指して大丈夫のようです。先程の変化の△45角には、▲57飛(この場合は▲53飛成も有力)で受かるため、後手の指しすぎです。

 

 

もちろん、丸山ワクチンの将棋を歓迎の方は、△32玉に▲38玉として、▲55歩をまだ保留しておくのも手です。ここら辺の細かい手順に関しては、研究の深さと棋風次第で変わると思います。

 

ただ、△32玉に▲38玉とした場合でも、その次に後手が何を指そうとも、そろそろ先手は▲55歩でいいような気がします。

 

要するに、▲38玉まで行ったら▲55歩を必ず突くと決める、という事です。この一番の理由はわかりやすさのためで、そろそろ丸山ワクチンの変化を消した方が、実戦で迷いにくいと思います。

 

もちろん▲55歩に代えて、▲28玉もありますが、▲28玉型を決めて片美濃を目指してしまうと、そのタイミングで後手から角交換してきて、丸山ワクチンの将棋になった場合、▲38玉型から速攻する筋が消えるという事情もあります。

 

 

というわけで、今回は△85歩+△34歩型の基本図からの変化について、自分が調べてみた概要をご紹介しました。

 

特に、(3)の急戦に対して、▲66歩型を選んだ時の具体的な対応の方法は、この作戦において重要な部分ですので、しっかり準備したいところです。

 

もちろん、△84歩+△33歩型の居合抜き超速についてもです。

 

逆に言えば、それ以外の部分については、通常の5筋位取り中飛車や丸山ワクチンと概ね合流しますので、中飛車党の方であれば、すぐに使える作戦だと思います。

 

「△64銀型に対して、▲66銀型で受けるのはもう嫌だ」という方は、ぜひ試してみてください。

 

自分は、中飛車については殆ど素人なので、まだまだ覚える事が多そうです。