前回は、嬉野流側が▲57銀型から▲35歩と早仕掛けに来たケースについて、検討してみました。

 

振り飛車が有利な変化が多いものの、一手一手が結構繊細な上、力戦調の展開になる事も多く、実戦的に大変な印象も受けました。

 

ただ、前回のような変化が実戦的に自信ないという場合は、一応、裏技的な解決策がありそうだったので、ご紹介していければと思います。

 

その裏技は、▲35歩に△同歩と応じないというルートです。振り飛車的には、早仕掛けの▲35歩には堂々と△同歩と取るものという感じもありますが、それを自重して、穏便に済ませようという魂胆です。

 

そもそも、振り飛車側は△43銀型ですし、居飛車は▲77歩型ですから、山田定跡のような仕掛けとは本質的に異なります。

 

▲35歩には△42角と引いておき、すぐに△35歩と取らない方針で、今回は考えてみます。これは三間飛車だからこそできる指し方です。

 

 

この局面で▲34歩と取り込むなら、△64角が一発入ります。▲46銀には△45歩▲37銀△34飛で振り飛車が好調ですし、▲46歩で受けるなら、一生▲46銀と出られません。

 

実は、▲34歩と取り込んでくれたからこそ、△34飛が発生し、△64角と出る事が出来ています。

 

例えば、▲34歩に代えて、▲58金右に△64角と出ると、▲55歩△同歩(△同角には▲46銀)▲24歩△56歩▲46銀△45歩▲37銀の時に△34飛がないし、3筋の歩が切れていないため、歩を持っていても△36歩が打てません。

 

▲34歩に代えて▲46銀と出てきたら、一旦、△52金左と上がっておきます。振り飛車舟囲いの完成です。ここまで組めれば、振り飛車はある程度強く戦えます。

 

ちなみに、▲46銀にすぐ△45歩は、▲同銀△35歩に▲76歩があり、△33角▲55歩(△同歩なら▲34歩△42角▲55角)が好手で居飛車よしです。

 

 

△33角に代えて△33桂には▲44銀△同銀▲同角で、次に▲53銀や▲43銀や▲24歩があります。

 

▲88角型の時は、安易に△45歩は突けません。ただし、△52金左が入っている形であれば、▲53銀や▲43銀が消えるので、△45歩▲同銀△35歩▲76歩△33桂はあり得る手です。▲24歩だけであれば、△64角と出て勝負できるところです。

 

△52金左で53や43をカバーしておくことは、それだけ重要なようです。

 

△52金左に▲34歩なら、ここでも△64角と出るのがわかりやすいです。間接的に28の飛車が64の角に睨まれているため、居飛車は▲35銀と出れません。▲55歩には△45歩が利き、▲同銀なら△55角です。

 

▲34歩に代えて▲37銀上で△64角を二重にケアしてくるなら、ここで△35歩と取るのがタイミングです。次の△36歩が銀に当たるため、攻めがわかりやすくなっています。

 

次に△36歩▲48銀△45歩▲57銀△64角があるので、▲76歩で△45歩を牽制しますが、△34飛と浮いて24に利かせておき、次に△64角~△45歩を狙って振り飛車十分です。

 

 

▲37銀上に代えて▲79角なら、居角のラインから外れるため、△45歩がより突きやすくなります。△45歩に▲同銀なら△35歩で、次に△44歩を狙って十分です。今回は△42角型のため、▲34歩と取り込む手もありません。

 

 

また、▲79角に代えて▲58金右のような手なら、△35歩と取っておきます。どうやら原則として、△52金左さえ間に合えば、この歩は取っても大丈夫なようです。

 

△35歩に対して、ならばと▲79角と引いて▲35銀を狙っても一手遅く、振り飛車は△36歩と伸ばします。それでも▲35銀と出るなら、△64角が利きます。振り飛車が十分です。△36歩に▲26飛なら、△53角として次に△45歩を狙います。

 

 

 

このように、早仕掛けをあえて咎めようとせず、△35歩を取らないでおき、自陣が少し整備されてから△35歩と取ったり、相手の形が決まってから△45歩や△64角で反撃した方が、ひょっとしたら振り飛車ペースかもしれません。

 

この課題局面における手の考え方の具体的な基準は、自分が調べた限りでは、以下のような感じです。

 

・▲34歩と取り込まれる手を恐れる必要はない。△64角と出れば、▲35銀とは出られない。むしろ3筋の歩が切れる上、△34飛が生じる。

 

・△52金左が間に合ったら、振り飛車がある程度強く戦える。43や53をカバーしたり、玉の脇腹をカバーしているので、一手でかなり引き締まる。よって、△52金左以降なら、△35歩や△45歩がやりやすくなる。特に△35歩は、原則的に取っても大丈夫だと思う。逆に言えば、△52金左が間に合っていない限り、△35歩や△45歩は指さない方が無難。

 

・▲46銀と出てきたら、銀挟みの形を狙って、△45歩を突く手を考える。ただし、居角のラインを開ける手のため、▲76歩型や▲88角型では少し突きづらいので注意。明確にいい手順だと読めれば突く。わかりやすい基準としては、△52金左が間に合っていれば突けるケースが多く、▲77歩+▲79角型ならばかなり突きやすいっぽい。

 

・▲79角+▲46銀型を作ってきた時、まだ△35歩を指してないなら、△45歩がたいていの場合で有効。▲同銀は△35歩。▲57銀は△44銀。

 

・▲79角+▲46銀型を作ってきた時、既に△35歩を指しているなら、△36歩と伸ばしてしまう。▲35銀と出てきたら△64角が絶好。

 

・▲26飛に対しては、△64角が少しぬるくなっているため、▲34歩に△64角と出てもいまいちになっている。よって、まだ△35歩を指してないなら指しておく。▲24歩が入ってるかどうかにもよるが、もし間に合うなら△53角として△45歩を狙う。特に▲46銀型なら両取りになる。間に合わなくても、△36歩~△64角はある。▲17歩型なら△15角もある。
 

要約すると、▲34歩と取り込まれても△64角があり、△52金左まで間に合えば△35歩と指しやすく、▲46銀が出てくれば△45歩を考えるべきで、▲79角型なら△45歩や△36歩を考え、▲26飛型で△64角を緩和してくるなら、△53角~△45歩を考える、です。

 

ちゃんと整理できていない部分もあるかと思いますが、大まかに言えばこんな感じかと思います。

 

次回は、▲46銀型を作ってから仕掛ける形を見ていきます。