こちらは
お誕生日祭りでぃプチコラボ企画
参加のお話になります。

yayosato様のお話はこちらから

コラボ参加者ご紹介




※  妄想小説です 
実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません BL的表現を含みます






それから俺は、時間を作っては大野くんの居る花屋に通った。

でも、会えない日も多い。

他の店員に聞いた話では、大野くんは業界ではちょっとした有名人らしい。

なんでも、日本屈指のコンクールで賞を取っているとの事だった。

だから、あちこちに出向いて花を活けている。

そんな大野くんの作るアレンジのファンは大勢いて、折角店で会う事が出来ても、二言、三言話せるのが精一杯。


それでも、顔が見られれば嬉しいし
話が出来た日は、俺の顔は緩みっぱなしだ。

出来る事なら、大野くんのスケジュールが知りたい

そうすれば確実に会えるじゃん?

そんな事を考えていた矢先、大野くんの方から言ってきた。

「あの、いつもお店に来てくださってありがとうございます。これ、来月の僕のスケジュールです」

手渡されたのはA4用紙1枚。

見て驚いた。

俺も職業柄かなり忙しいが、大野くんも負けず劣らずスケジュールがビッシリだったから。

「ありがとう。大野くんのアレンジ、俺すっかりファンになっちゃって。
どうしても、大野くんに作って貰いたいんだよね。
ごめんね、我儘で」

なんてね。

半分本当で、半分嘘。

大野くんにアレンジを作って貰いたいのは嘘じゃ無いけど、本当は大野智に会いたくて来てるだけ。

スケジュールを手に入れた俺は、大野くんが確実に居る時を狙って店に行くようになった。

「いらっしゃい、櫻井さん」

柔らかく微笑む大野くんは、男とは思えない程可愛らしい。

ちょっと甘ったるい話し方も声も、マイナスイオンか?と思う程癒される。

「今日はどうしますか?」

「大野くんのオススメでお願いします」

「んふふ、いつもそう言う」

ああ、笑い方まで可愛い。

大野くんにはいつも、小さめのアレンジを作って貰ってる。

誰にプレゼントするわけでもない。

俺1人が観賞して楽しむだけ。

でもその事を大野くんは知らない。

誰かにプレゼントする物だと思っている。

そんな風に、ただの客と店員として関係が3ヶ月程続いた。

大野くんも俺に敬語を使わないことも多くなって、距離が大分縮んだと思ってた。

でも

人間というのは、どうしようも無いもので、どうしても先を求めてしまう。

俺もご多分に漏れずその1人だった。

ただの客と店員という関係から進みたかった。

ある日、俺の方から思い切って食事に誘った。

大野くんはちょっとびっくりしてたけど

いつものふにゃふにゃの笑顔で

「いいですよ。いつにしますか?」

と返してくれた。

「じゃあ、次の木曜日の夜で」

OKを頂けた俺は、まさに有頂天。

色んなお店を候補に挙げ、悩みに悩んで一軒の店に予約を入れた。

そして待ちに待った当日、仕事を定時で切り上げて

待ち合わせの場所に向かう。

暫く待つと、大野くんが現れた。


「こんばんは〜。櫻井さん」

「大野くん、こんばんは。
今日は来てくれてありがとう」

「僕の方こそ〜」


俺が予約した店は、こじんまりとしているが

綺麗で居心地の良さそうな日本料理屋だ。

美味い地酒も揃ってる。

料理は適当にお任せにして、取り敢えずビールで乾杯をする。

「なんか不思議だね。
櫻井さんと呑んでるなんて」

「そう?俺は凄く楽しみにしてたよ?」

「それは僕だって!」

そう言った大野くんの顔がパッと赤くなった。

「本当に?だとしたら嬉しいんだけど」
 
「嘘なんか付かないよ」

あ、ちょっと拗ねた?

唇が少しだけ尖ってる。

分かってのかな?そんな表情も俺には可愛く見えてるって事。

ニヤニヤする俺を見て

「もぅ、なんで笑うんだよ」

って小言を言ってくる。

可愛いから。なんて言ったらまた拗ねちゃうかな?

黙って笑う俺を見て、大野くんがグビーっとビールを飲み干す。

「大野くんってお酒強いんだね?」


「そんなに強く無いよ。お酒は好きだけどね。
それよりさ…」

「ん?なあに?」

「櫻井さんって何歳?」

「言ってなかったっけ?今25歳だよ。
年明けには26だけど」

「へぇ、僕の一個下だったんだ」

「そうなの?じゃ大野くんは…26歳?」

「そ、今年27」

「誕生日は?」

「11月26だけど」

俺が質問してしてる間も、ガンガン呑んでいく大野くん。

出される料理にはちょこっと手をつけるくらい。

「11月26だけど」

そうなんだ…

てか!大野くん、俺より歳上か!

見た目すごく若く見えてたから、てっきり歳下だと思ってたよ。

「じゃあさ、もう櫻井さん呼びは無しにして?
俺の方が歳下だし、翔 でいいよ」

大野くんに向かってニッコリと微笑む。

あれ?さっきより顔が赤い?

つーか耳まで赤いぞ。

大野くんはもじもじしだして…

「翔?」

「うん!そっちのがしっくりくる」

「じゃあ翔!」

え、なんだろ。

お酒飲んだから?いつもの大野くんと大分雰囲気違くない?

「な、何?大野く…」

「ブー!だめぇ!
大野くんじゃなくてぇ〜
さ と し!
名前で呼んで」

いつの間にか3杯目を空にした、大野くんの要求に

もう、なんと言っていいか判らない感情が頭の中を駆け巡る。

嬉しすぎてどーしよう?的な。

「さ、智…」

「うん、なあに?」

いや、智が呼べって言うから。

なんだか気恥ずかしくて、俺も酒の力を借りたくなった。