「オールド・テロリスト」村上龍 | 食べて飲んで観て読んだコト+レストラン・カザマ

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「満洲国の人間」を名乗る老人からのNHK爆破予告電話をきっかけに、元週刊誌記者セキグチは巨大なテロ計画へと巻き込まれていく。暴走を始めたオールド・テロリストたちを食い止める使命を与えられたセキグチを待つものは!?横溢する破壊衝動と清々しさ。これぞ村上龍と唸るほかない、唯一無比の長篇。(BOOKデータベースより引用)

 

折しも、オウム真理教のテロ事件に関わった元幹部等の死刑執行がなされ、世論もかまびすしい。

地下鉄サリン事件が起こった時、自分はもちろん年齢的には大人で、リアルタイムに報道されていく出来事に戦慄を覚えたものだった。驚かれるかも知れないが、これらの事件を指してテロと言うのだと始め自分は知らなかった。凶悪な者どもが起こした悲惨な事件、あるいはタガの外れた宗教団体が起こした許せない事件と思ったが、テロというのは主に異国で起こる政治や民族の対立から起こる破壊行為と思っていて、日本で起きたこの事件がそれとは気づかなかったのである。報道も最初からテロと報じていたものは無かったかも知れない。何故なら、ある時外国人の識者か何かが、「これはテロだ。」と指摘した談話が新聞に載っていたのを読み、そうだったのか!と納得した記憶が鮮明にあるから。

 

オウム真理教の起こしたテロは、首謀者が何も語らなかったために、未だに「いったい何だったのか」と解明されていないが、それ以来幸いにして日本ではテロは起こらず平和ボケとも揶揄される。しかしながら諸外国では頻繁にテロが起き、なんの罪もない人々が犠牲になっている。日本でもいつなんどきそのような事件が起きるか分からないし、得体の知れない「心の闇」とやらを抱えた者による無差別殺人事件なども起きている。

 

このような状況の日本でもしも、戦争体験者である筋金入りの元気な老人たちがテロを起こしたら、というシチュエーションの本作は、テロについての色々な事を教えてくれる物語だ。

 

 語り部役の元週刊誌記者セキグチは、予告電話により半信半疑でNHKロビーに出掛けて行くと、ほんの少し様子のおかしな若者が目に留まる。番組制作のクルーのような風体、荷物を持つその人物は目がうつろな感じだが、荷物から何かの容器を出すと液体を流し火を付ける。可燃性の液体はあっという間に燃え広がり死傷者多数の惨事となる。

 この事件を目撃した記者として、ネット配信の記事を書いたセキグチは、手がかりを求めていく内に、第二の事件の予告を受け取る。その予告現場へ行ってみると、電動の枝刈り機で自転車に乗る人の首を落とすという悲惨な事件が起きた。

 そして、さらなるヒントからアイドルグループが主演の映画が封切の映画館に赴くと、可燃性液体とびらん性毒ガスを散布して火事を起こし、満員の館内ので多数の焼死者、毒物による死傷者を出す大惨事に遭遇し命からがらの脱出を果たしたのだった。

 3件のテロの犯人と主張する人物たちは、声明文を残していずれも自殺した。

しかし、セキグチは彼らは操られていて本当の首謀者は別に存在すると確信し、ある老人たちのグループとの接触が始まった。

 

というような発端から、セキグチが老人たちのテロ計画に巻き込まれるのだけど、老人たちのテロの目的は何なのか。またその手段として、満州国から密かに持ち帰った88ミリ対戦車砲というすごい兵器を使い原発を狙うというが、果たして。

戦争の生き残り、またその息子たちの世代の老人たちが、元気に生き残っているだけでも強いと言えるのだが、さらに経済的に成功していたり、ある種の才能に恵まれていたり、決して弱い立場のお年寄りでは無い者たちが、日本を再び焼け野原にして一からやり直すのだという主張を行動に移したとしたら。

 

奇想天外なストーリーではあるけれど、村上龍さんの筆はリアルにテロの凄まじさを描き出し、戦慄させられる。また一方でこの何物をも恐れず、自らの信念に従って、たんたんと事を勧める老人たちを実にカッコ良く愉快に、爽快さを覚えるほどに表している。彼らの考えの恐ろしさや、88ミリ対戦車砲の威力を間近にして怯え、チビるセキグチに情けないと思い、そんなセキグチに不満を覚えるのは、この姿は我々世代を代表しているのではないかと、思うからかも知れない。

 

ともかくも読みごたえのある長編を、読書として楽しめた村上龍らしい作品。

村上龍さんの本を自分のブログで知り面白かったと言ってくれた、もう会えない所に行ってしまった大好きな人のことをまた思い出す。きっと彼女もこの小説を面白く読んでくれるだろうな、、、。

 

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