思いの外面白い。キャラクターの魅力あふれる感動作

 

「アイの歌声を聴かせて」は「サカサマのパテマ」などの吉浦康裕監督によるアニメ映画。土屋太鳳さん、福原遥さん、工藤阿須加さん、大原さやかさんらが出演している。

ストーリー:星間エレクトロニクスによる、最新技術を実験的に使用している都市、景部市。そこで暮らすサトミは、男性社会でのし上がってきた母のため、優等生として頑張っていた。しかし、ある事件をきっかけに周囲からは浮いてしまっている。一方、サトミの母のチームが人型AIの実験を秘密裏に行うことになった。白羽の矢がたったのが景部高等学校のサトミのクラス。「シオン」と名付けられたそのAIをAIとバレないように生活させて溶け込めるかを見る実験だ。しかし、シオンはクラスに入るなりサトミに「今幸せ?」と聞き、歌い出すなど奇怪な行動を見せる。サトミは母の実験だと気付き、その成功のためにシオンをクラスに溶け込ませようとするが……。

 

思いの外面白かったです。

正直、そんなに期待していなかったんですよ。失礼な話ですが、テーマというか、扱っている題材に興味がそこまでわかなかったし、タイトルもダサいなあって思っていたし。

でも、面白かったです。まず、この景部市という設定が良かったですね。AIなどの実験都市が舞台というのは現代だけどちょっとSFな世界を上手く表していて、すんなり世界に入っていけました。日常の地続きなイメージが持てましたね。

風力や太陽光発電が大々的に使用されているところもいかにも実験都市という感じでしたし、進んでいるテクノロジーもやたらめったらAIというわけではなく、ありそうだな、って思うレベルの進み具合だったのも良かったです。

一方で、娘のいるクラスで実証実験するはずがない、とか、法律違反しても実験を敢行するだろうか、とかそういう細かい設定や物語の展開には結構無理やり感がありましたし、どうなんだろうか、と思わなくはないです。ツッコミどころは多い気がしますし。そういうところが引っかかる人は、あまり入っていけないかもしれません。

でも、登場人物がみんな良かったんですよね。何よりシオンが非常に魅力的でした。あんまり土屋太鳳さんの声、好きじゃなかったんですが、今作でちょっとイメージが変わりましたね。多少加工されているとは思いますが、演技も絶妙に人間から離れた感じが出ていてリアルに感じましたし、良かったです。

あと、個人的に好きなところが結構ありました。

例えば、サトミと母親とで毎朝「今日も、元気に頑張るぞ!おー!」っていう「行ってきますの儀式」みたいなのがあるんですが、なんかちょっとこっちも元気になれそうな気がしたし、その意気で1日を始めるのは良いなあ、とか。まあ親とこれをやりたいかと言われると小さい頃から習慣になってないとキツいだろうけど。

ラストの方はしっかり泣かされましたし、期待していなかったこともあるかもしれませんが、思ったよりもずっと当たりな作品でした。ただ、登場人物が苦手だと思ってしまうと厳しい気がしますし、前述のような設定の齟齬とかが気になる人は物語に入れない気もします。

 

そんなわけで、誰にでもおすすめします!というほど完成度が高いわけではないですが、すごく好きな作品でした。

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