10年に亘り、ASEANの中心国、シンガポールで生活し働いてきて、少しの振り返りをしてみた。実に感慨深い。
最近のASEANとシンガポールの動向を語るときに、EUROという経済体のことを思い出さずにはいられない。 EURO通貨が導入されたことによって、利益を享受した国、逆に不利益を被った国は何処だろうか?ギリシアや、その他の南ヨーロッパの国が得をして、主にドイツが損をしたと、私は思っている。財政難の国が、堅実経営の国を吸血しているようにしか見えないのである。 通貨が共通になって、ユーロという経済共同体(というのは聞こえの良い呼び方で、実際は不公平な共済会)が出来たおかげで、ドイツ国民は、賃金の安い他のヨーロッパの国(ブルガリア、トルコ、ギリシアなど)の労働力に、更に職を奪われる事になり、介護やゴミ回収などのハードシップを伴うとされる職場にドイツ人を見つけることは全く難しい。
過去20年余り、ドイツやその他のヨーロッパの国々を遠くから見てきた私としては、当地シンガポールの過去10年の変遷が、ヨーロッパでの実験結果を踏まえての綱渡りに見えるのである。 現在、外国人労働者の職を限定しようとするシンガポール政府の政策は、国家を護ろうとする当然の行為であり、そうすることでドイツの二の舞を回避する唯一の策である。既にシンガポールでは、職業に貴賎の差が有り(もちろん気持ちの上で)、自国民が就きたがらない職業というものが存在する。これはドイツと同じ状況である。これは、我々、人材紹介業に携わる人間にとっては、極めて日常的で関心の高い問題なのである。
大きな違いをドイツとシンガポールの間に見出すとすれば、それは敗戦国であるかどうかということである。ドイツでは、敗戦の影響が今も続いており、多くの不利な状況に立たされているが、シンガポールには、そのような負い目は無い。そもそも戦勝国である大英帝国の植民地であり、シンガポール人による近隣諸国への国家としての侵略の歴史は無い。域内で不利な条件を押し付けられることなく、自由に自国の外国人労働者に関するポリシーをコントロールできたことは、シンガポールの経済成長に多いに貢献した。
職業に貴賎の差が出ること、国民の間の格差が大きく広がることなどのリスクに片目をつぶって、国家の経済成長を促進させるシンガポールの勇敢さには、大いに敬意を表するが、違う文化圏から来た日本人としては、自分の国が安易に他国の真似をすることはして欲しくないのである。日本が辿る道のりはシンガポールのそれというよりは、ドイツのそれに近くなるイメージがあるからだ。無理やり結論付けるようだが、その国その国に会ったポリシーというものがあり、それはシンガポールとドイツの例を出さずとも容易に理解できると思う。
しげまつ
追伸
6年に亘っての任務を終了し、日本に帰国します。お世話になった皆様、有難うございました。
最近のASEANとシンガポールの動向を語るときに、EUROという経済体のことを思い出さずにはいられない。 EURO通貨が導入されたことによって、利益を享受した国、逆に不利益を被った国は何処だろうか?ギリシアや、その他の南ヨーロッパの国が得をして、主にドイツが損をしたと、私は思っている。財政難の国が、堅実経営の国を吸血しているようにしか見えないのである。 通貨が共通になって、ユーロという経済共同体(というのは聞こえの良い呼び方で、実際は不公平な共済会)が出来たおかげで、ドイツ国民は、賃金の安い他のヨーロッパの国(ブルガリア、トルコ、ギリシアなど)の労働力に、更に職を奪われる事になり、介護やゴミ回収などのハードシップを伴うとされる職場にドイツ人を見つけることは全く難しい。
過去20年余り、ドイツやその他のヨーロッパの国々を遠くから見てきた私としては、当地シンガポールの過去10年の変遷が、ヨーロッパでの実験結果を踏まえての綱渡りに見えるのである。 現在、外国人労働者の職を限定しようとするシンガポール政府の政策は、国家を護ろうとする当然の行為であり、そうすることでドイツの二の舞を回避する唯一の策である。既にシンガポールでは、職業に貴賎の差が有り(もちろん気持ちの上で)、自国民が就きたがらない職業というものが存在する。これはドイツと同じ状況である。これは、我々、人材紹介業に携わる人間にとっては、極めて日常的で関心の高い問題なのである。
大きな違いをドイツとシンガポールの間に見出すとすれば、それは敗戦国であるかどうかということである。ドイツでは、敗戦の影響が今も続いており、多くの不利な状況に立たされているが、シンガポールには、そのような負い目は無い。そもそも戦勝国である大英帝国の植民地であり、シンガポール人による近隣諸国への国家としての侵略の歴史は無い。域内で不利な条件を押し付けられることなく、自由に自国の外国人労働者に関するポリシーをコントロールできたことは、シンガポールの経済成長に多いに貢献した。

職業に貴賎の差が出ること、国民の間の格差が大きく広がることなどのリスクに片目をつぶって、国家の経済成長を促進させるシンガポールの勇敢さには、大いに敬意を表するが、違う文化圏から来た日本人としては、自分の国が安易に他国の真似をすることはして欲しくないのである。日本が辿る道のりはシンガポールのそれというよりは、ドイツのそれに近くなるイメージがあるからだ。無理やり結論付けるようだが、その国その国に会ったポリシーというものがあり、それはシンガポールとドイツの例を出さずとも容易に理解できると思う。
しげまつ
追伸
6年に亘っての任務を終了し、日本に帰国します。お世話になった皆様、有難うございました。