(1)暴言・暴力・多動が目立つ小学校1年生女子
Aさんは小学校1年生の女の子です。
友達や家族とのトラブルで暴言を吐いたり、場合によっては暴力を振るったりしてします。
感情のコントロールが難しく、いったん怒り始めるとヒートアップしてしまうことがしばしばあります。
授業中もぼーっとしていることがしばしばあります。
ただし、ひらがなもカナカナも書けるし、足し算もちゃんとできます。
基礎的な知識は身についているのです。
症状からはADHDやASDが疑われました。
(2)AさんのWISC-IVの結果
WISCX-IVをやりましたが、IQは60代前半でした。
下位検査ではワーキングメモリーが著明に低く、他の群指数も70代前半でした。
ただし、検査者の報告では真面目に検査を受けていなかったようです。
検査者が、「何年生」と尋ねると、「6年生」と答えたそうです。
「鼻はどこ?」と尋ねると、おでこを指したそうです。
質問に答えずに、「ママ」と言って母に抱きついたりしたこともあったそうです。
普通の小学校1年生ならある程度空気を読んで真面目に検査をしてくれるのですが、ASD特性があったりするとふざけてしまい、検査をちゃんとやらないこともあるのです。
このような状態での検査ですので、数値の信頼性は低いと考えました。
(3)検査の数値を鵜呑みにしないこと
「IQの数値としてはだいぶ低いけれど、真剣に検査をやらなかったようなので、この数値はあてにならないと思います。実際のIQはもう少し高いのだと思います」と説明しました。
このように、数値を鵜吞みにせずに、その数値に信頼性がおけるかどうかを考慮すべきだと思います。
WISC結果を解釈する場合、検査者の観察とともに本人の状態と整合性があるかどうかも判断材料になると思います。彼女は1年生の夏休み前の段階で、ひらがなとカタカナの読み書きに問題がなく、合計が9以下の足し算も出来ていました。そのような子がIQ60代ということはASD特性が非常に強いような一部の例外的な場合を除いて、可能性は低いと考えました。
静岡赤十字病院でやっていただくWISC-IVは検査における検査者の観察も記載されているので、数値を信頼してよいかどうかを判断しやすくなっています。
優れた検査者は、判断に有用な観察も行ってくれるのです。