その前(号泣キャラの邂逅)からの続き。
…ですが、ロビン・ウィリアムズ氏の亡くなった8月11日には、
『スター・ウォーズ』(1977)と『帝国の逆襲』(1980)に貢献した、
パイロテクニシャン(火薬・爆発効果担当)の、
ジョー・ヴィスコサル(Joe Viskocil)氏も亡くなったので、
日本のブログで取り上げるのは、
おそらくウチぐらいのものなので、
63歳で亡くなったヴィスコサル氏を悼んでおこう。
ところで、
“Viskocil”なら「ヴィスコシル」(ビスコシル)
じゃないかと言われそうだが、
vinyl(ビニール)が
「ヴァイニル」ではなく「ヴァイナル」
なのと同じようなもんで、
ネイティブは誰も、ヴィスコ「シル」とは言わないんである。
ヴィスコシル=ビスコ汁?
では本題。
『スター・ウォーズ』(1977)の撮影のために、
原型師が新品バリバリの状態で納品した
マスク、ヘルメット、ボディアーマー等は、
撮影現場で、
使い古されたり、
汚れてくたびれた感じに、
わざわざ化粧直し(ウエザリング)されるが、
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こうした現場のいわゆる「汚し屋」
=塗装職人の名前が公表されることは、
めったにない。
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だがしかし、
ダース・ベイダーのマスクとアーマーの、
第一世代ベイダーコスチュームの、
↓胸当てやショルダーパッドの、
↑2色塗り分けが読み取れるスチル2点。
2階調(ブラックとガンメタル)の
大胆不敵で奇抜な色分け処理に限っては、
2010年に公開された、
このドキュメンタリーで、
ロン・パンター(Ron Punter)氏
の功績だったことが判明している。
パンター氏の前職は、
大型家具店の木工仕上げ職人で、
ある日、「映画界で働いてみないかい?」
と声をかけられ、
面接に行ったら、
「早速明日から働いてよ」とトントン拍子に話が進み、
「初仕事は、『スター・ウォーズ』(1977)で、
↓ドキュメンタリー内でインタビューに答える、2010年頃のロン・パンター氏。
ダース・ベイダーの
顔とボディアーマー(の追加塗装)だった」
と述懐している。
パンター氏はその後、
スタンリー・キューブリック監督のオフィス階下に、
自分専用の工房をかまえるようになり、
『シャイニング』(1980)では、
*タイプライターの塗り替え、
*黄金の間の内装、
*豪雪に埋もれたホテル、
*垣根の迷路
等々の多岐にわたる塗装作業で、
巨匠の期待と信頼に見事に応えた。
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パンター氏は、キューブリック監督を、
「非常に折り目正しく、的確な指示を出す温和な人」
と感じていたが、
スタッフには「なにかにつけて、キレやすい監督」
と怖れられていたことも覚えている。
パンター氏は
「キューブリックは、自分自身にいらだっていただけなのでは」
と分析しているが、
「昼食休憩時にキューブリックから
『午後の撮影までに、タイプライターの塗り替えをしておいてくれ』
と申しつけられたので、早めに食事を切り上げて、
きちんと間に合わせたら気に入ってもらえて、とても感謝された」
とも述べている。
おそらく無能なスタッフは、
監督の要求に応えないからキレられたんで、
パンター氏はきちんと仕事をこなすので、
関係は円満だったんではなかろうか。
こうした逸話が示すように、
イギリス職人魂ここにありと言った感じの
ロン・パンターは、
ベイダー造形を担当したブライアン・ミュワに負けず劣らず、
かなりの天才肌。
初仕事で、
↓いきなりこの仮面に、
これほど豪快に左右非対称の塗り分けをする人なんて、
どの時代のどの国をあたっても、
パンター氏以外には絶対いるまい。
前職はあくまでも木工職人で、
その最後の仕事が、
バラ園の柵作りかなんか?(rose bushes=バラの茂み)だったのに、
映画界ではもっぱら塗装職人(シーニック・アーティスト)として才能を発揮した、ロン・パンター。
たまたま彼の映画業界での職歴の第一歩の通過点だったことで、
ダース・ベイダーが不世出のキャラクター・アイコンに昇華したのだから、
この世には本当に、フォースの導きや集中というものがあるらしい。
イギリス人の職人魂、恐るべし。