8月のNHK主催のフォーラム「がんと生きる」では、私の所属している「がんピアネットふくしま」の代表と二人のスタッフがパネリストとして参加した。
フォーラム終了後、ロビーでNさんを見かける。Nさんというのは私が食道がんの手術をした病院の「がん相談支援センター」の看護師さんです。私は、がんと告知されてからこのセンターとNさんには本当にお世話になった。
私がブログを書いたりがんサロンの活動に参加するようになった大きな理由の一つはこの「がん相談支援センター」(以下略称センター)を多くの人に知ってもらいたいからだ。そう思わせてくれたのがNさんの存在です。
Nさんは、看護師歴40年以上、緊急外来から訪問看護まであらゆる部署を経験された大ベテランの看護師だ。私が入院していたときにこのセンターの担当をしていました。私が退院して1年後ぐらいに担当を外れ久々の対面となった。
私が最初にセンターを訪ねたのはまったくの偶然だ。たまたま外科の外来に行く通路でセンターの看板をを見て「がんに関することは何でもお気軽にご相談ください」という表示に惹かれ軽い気持ちでのぞいてみた。
実はこのときに気にかかることがあった。歯茎と唇がどす黒く変色し「スワッ、ついにがんが牙を向いたか!」と動揺していた時期でした。
このときに対応してくれたのがNさんだった。
「主治医はなんと言ってるの?」
「がんとは関係ないから気にしなくていい」そうです。
「そう、そう言われても気になるわよね。薬を見せて。これをかじったりしてない」
「飲み込めなくてかじってます」
「多分そのせいだと思うけど薬剤師呼んであげるね」
術後は、食べられないと言えば
「嚥下訓練はどうしてるの」
「氷をペロペロしてます」
「それじゃ味噌汁でもなんでも凍らせてペロペロすればいいの。腸瘻やってるんでしょ。最低限の栄養はそっちから取れるから今の時期は栄養のことなんか気にせずに食べやすい方法で試せばいいから」
「餅は食べれるようになりますかね」
「お餅、全然大丈夫。引っかかるときはサイコロみたいに小さく切って食べればいいから」
「上半身を高くして寝る方法が合わなくて首痛めちゃったんです」と言うと
Nさんは自分のタオルを持ってきてそれを座布団や布団に見立ててクッションの作り方を教えてくれました。
そんなNさんとの3年ぶりの対面。
「入院中はお世話になりました」
「今、私は今日のパネリストを出しているがんサロンのスタッフしています。サロンのメンバーにNさんをぜひ紹介したいんで来てもらえますか」と手招きすると
Nさん、手を振ってキッパリと「けっこうです」
「えっ」
「紹介していただかなくて結構です」
「私は業務の一環で病院から割り当てられた仕事をしただけですから」
「ギョームノイッカンですか・・・」
「あら~もんどさん無事だった!」と抱き合うようなことでもないのだろうが
まあ、「元気だった。よかった~」と手を取り合うシーンは一瞬頭をよぎった。
確かに、警官が犯人を捕まえるように自衛隊員が災害現場で救助に当たるようにNさんはプロフェッショナルな看護師として当たり前のことをしただけなのかもしれないな、とは思ったものの、あのやさしさに包まれたセンターでの時間は業務の一環だったのかと思うとチト淋しい。
「ギョームノイッカンか・・・」
「う~ん、なんだかな~」
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