[お酒で赤くなる人は骨折に注意?]
(家庭の医学 2017年8月15日)
<若いうちから骨貯金を>
お酒を飲むと赤くなる人は珍しくありません。
このような体質の人は、そうではない人に比べ、骨粗しょう症になりやすく、
大腿骨近位部(股関節に接する辺り)の骨折のリスクが高いことが、慶応義塾
大学医学部の研究チームが明らかにしました。
アルコールを摂取すると、アセトアルデヒドという有害物質が発生しますが、
この有害物質は「ALDH2」という酵素で分解されます。
しかし、お酒を飲むと赤くなりやすい人は、このALDH2の働きが遺伝的に
弱いまたは欠けていることがわかっています。
ALDH2の機能が失われると、アセトアルデヒドが体内に溜まりやすくなり
ます。
アセトアルデヒドの血中濃度が高まると、骨を作りだす骨芽細胞に機能障害が
生じてしまうのです。
今回の研究では、大腿骨近位部骨折を経験した92名と、骨折したこともなく
骨粗しょう症でもない48名の遺伝子を比較。
その結果、骨折した患者は、ALDH2の働きが遺伝的に弱いまたは欠けて
おり、骨折のリスクが2.48倍高くなることがわかりました。
また、ビタミンEの摂取によって骨折予防の効果が期待できるとも報告されて
います。
マウスの細胞を使用した実験段階ですが、ビタミンEの摂取で、骨芽細胞の
機能不全が避けられることがわかっており、さらなる研究が待たれます。
骨粗しょう症による大腿骨近位部骨折は増加しており、2014年で19万件も
発生しています。
高齢者の場合は、この骨折をきっかけに寝たきりになるケースも多く、
健康寿命にとって大きなリスク要因です。
持って生まれた遺伝子は変えられませんが、例えば節酒を心がけたり、骨を
丈夫にする生活習慣を続けたりすることで、骨粗しょう症による骨折をできる
だけ予防することができます。
しかし、骨粗しょう症の予防は短期的には難しく、若いうちから「骨貯金」を
しておくことがすすめられています。
バランスのよい食事、カルシウムやビタミンD(カルシウムの吸収を促す)が
豊富な食品の摂取のほか、定期的な運動も必要です。
ふだんから積極的に体を動かすようにしましょう。
(監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳)
http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/124621/