[胃の薬で腎不全に? プロトンポンプ阻害薬とH2ブロッカーの比較]
(MEDLEY 2016年6月17日)
<17万人を5年追跡>
薬を長く使い続けることで、腎機能が悪化する場合があります。
胃酸の分泌を抑え、胃潰瘍などの治療に使われるプロトンポンプ阻害薬の
影響を調べた結果が報告されました。
<プロトンポンプ阻害薬は腎臓に影響するか?>
この研究では、プロトンポンプ阻害薬と、違うしくみで胃酸の分泌を抑える
H2ブロッカーを比較しています。
研究班は、アメリカの兵役経験者の治療データベースを参照して、プロトン
ポンプ阻害薬を新たに使い始めた人173,321人と、H2ブロッカーを新たに
使い始めた20,270人の経過を5年以上にわたって調べ、腎機能の変化に違いが
あるかを調べました。
<H2ブロッカーよりも慢性腎臓病が多い>
次の結果が得られました。
調整Cox生存モデルにおいて、H2ブロッカー群と比べて、プロトンポンプ
阻害薬群は新規発症としてeGFR<60ml/min/1.73m2に至るリスク(ハザード
比1.22、95%信頼区間1.18-1.26)および慢性腎臓病の新規発症のリスク
(ハザード比1.28、95%信頼区間1.23-1.34)が増加していた。
H2ブロッカーを使った人よりも、プロトンポンプ阻害薬を使った人の
ほうが、新たに慢性腎臓病となる人の割合が大きくなっていました。
プロトンポンプ阻害薬を使おうとするときには長期的な影響も考えるべき
なのかもしれません。
ただし、この結果だけで慢性腎臓病が副作用と判断することはできません。
日本ではプロトンポンプ阻害薬の使用期間は限るように決められていますが、
この研究で使われたアメリカのデータには、360日以上にわたってプロトン
ポンプ阻害薬を使い続けた人も含まれています。
使用期間をどの程度にするのが適切か、今後の研究からもデータが集まる
ことで新しい共通理解ができてくるかもしれません。
https://medley.life/news/item/5760e68db0547222008b6edc