[粒子線(荷電重粒子線)治療]
(国立がんセンター がん対策情報センター)(2009年時点)
粒子線(荷電重粒子線)治療とは、陽子や重粒子(重イオン)等の粒子
放射線のビームを病巣に照射することによって、主にがんを治す放射線
治療法の総称です。
利用する粒子の種類によって、
・陽子線治療
・重粒子(重イオン)線治療
・パイ中間子治療
等に分けられ、世界の各地で臨床応用や研究が行われています。
例えば陽子線治療では、水素原子の原子核であり、正の電荷を持つ陽子を加速
して高速にしたものを体内に照射します。
これらはX線やγ線(ガンマ線)を用いた外照射放射線治療の臨床経験を
基礎として開発されているものですが、がんの治療に適した特徴を持つ治療法
として期待されています。
<粒子線治療の特徴>
粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器から得られる
陽子線や重粒子(重イオン)線を、がんという標的にねらいを絞って照射する
治療法です。
粒子線のうち電荷を持つもの(荷電重粒子線)の特徴は、一定の深さ以上には
進まないということと、ある深さにおいて最も強く作用するということです。
これらの特徴から、陽子線や重粒子(重イオン)線では、光子線に比べて
がん病巣にその効果を集中させることが容易になります。
したがって、がん病巣周囲の組織に強い副作用を引き起こすことなく、十分な
線量を照射することができます。
<治療に適しているとされる腫瘍>
陽子線や重粒子(重イオン)線はがんに限局して照射できることから、進行
していない限局したがん病巣の治療に適していると考えられています。
がんのまわりに放射線に弱い組織がある場合の治療に、特に有効性が発揮
できると思われます。
今までの実績から、眼球内の悪性黒色腫、中枢神経系の近くにできた脊索腫や
軟骨肉腫、一部の頭頸部がん、I 期非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん
等に対する有効性が明らかになっています。
<粒子線治療の現況と将来>
国立がんセンター東病院では、サイクロトロンを用いた陽子線治療システムが
1998年末より稼働し、主に頭蓋底、頭頸部、肺、肝臓、前立腺等のがん例に
使用されています。
病院に附属した陽子線治療装置としては国内ではじめての装置で、2001年
7月に高度先進医療(医療の名称:悪性腫瘍に対する粒子線治療)の認可を
受けて治療を行っています。
治療の費用(288万3,000円)は自己負担です。
国立がんセンター東病院以外に、わが国での陽子線治療は、
・筑波大学陽子線医学利用研究センター
・兵庫県立粒子線医療センター
・若狭湾エネルギー研究センター
・静岡県立静岡がんセンター
の4ヵ所で行われています。
また、独立行政法人放射線医学総合研究所では、炭素を使った重粒子
(重イオン)線治療が行われていて、2003年10月に高度先進医療として
認可されました。
これら粒子線治療は、国内でも今後さらに数ヵ所での建設が計画されて
います。
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/particle_radiation.html