当然、宮廷内にも国の現状を憂い解決の方法を探すものはいた。

宰相アニエッロ…ではなくその家臣トロフィエだ。

宰相アニエッロ(暁雅火)はカルボナーラ王の家臣ボロネーゼの末裔で代々宰相を歴任した名家ではあったがアニエッロ自身は非常に温厚な性格で切れ者というわけではなかった。またチニアーレ宰相時代の横行を見かねた貴族たちが無理にアニエッロを宰相に推したという経緯もあって尚更アニエッロの宮廷内での意見は軽いものとされていた。
しかしながら、アニエッロにはトロフィエ(室井俊介)という膂力百人力にして知謀術数に長けた家臣がいた。
トロフィエは今回のアルデンテの剣盗難において少なからず国内の人間の誰かの画策によるものと推察し、その動向を探らせていた。しかし事が核心に近付く度に、放った忍びは殺害されその中核を窺い知ることは出来なかった。

トロフィエはその事をアニエッロに相談に訪れた。
「アニエッロ様、こたびのアルデンテの剣盗難についてどのようにお考えでございますか?」
「ふむ。わしも事態の収束をはかるため幾人か影のものをやったのだが、みな行方知れずとなった。これには裏で糸引くものがあるに違いないと思う。」
「閣下もそのようにお考えでございましたか。」
「うむ。しかも大体の目星はついている。」
「それは、まさか。」
「うむ。なんなら、せーので互いに怪しいと思う者の名を言ってみようではないか。」
「はは!」
「せーの!」
アニエッロ「クアリア!」
トロフィエ「チニアーレ!」

…。

「閣下…。ばらばらじゃないですか!それにクアリア様は現王ファルファッレ様のお妃が弟君、よもや謀反の企てなどなさろうはずもありますまい。」
「やっぱり?」
「やっぱり、じゃなーい!ともかく、チニアーレの動向は怪し過ぎます。私、なんとかして奴の尻尾を掴んで見せます。」
「いや、それには及ばない。これは余程の事がない限り他言無用だが、200年前、カルボナーラ王は宮廷内だけでなく、城下町にも妾をおき、その血を決して絶やすことはないようにと厳命された。その子孫に当たる子がこの度のスパゲティ渓谷への探索に名乗りを挙げ、宮廷内を平らげる予定となっておる。ただ…その知らせを持ったソフトバンケリオーロがわが家へたどり着いてこんのだ。どうなっておるのか。」
トロフィエはしばし頭を抱えたがすぐに明るい顔でこうアニエッロに進言した。
「アニエッロ様、それではわたくしめも、探索の応募に馳せ参じ、そのきみを探し、供をするというのはいかがでしょうか?」
「おお!名案ではないか!そのようにいたせ。幸い、そちはまだ宮廷内でもあまり知られてはおらぬ。事のついでにチニアーレの動向も探ってくるがよい。」
「ははっ!それでは早速支度をして傭兵練兵場へと向かいます!」
こうしてトロフィエは勇躍しカロータへと向かった。アニエッロの胸には一抹の不安がよぎっていた。
「…明日から誰が朝起こしてくれるのだろうか?ご飯は?風呂…。誰か雇うか。」

かくして運命の矛先は、第一の都市カロータの傭兵練兵場へと向けられた。
チニアーレの野望は阻止されるのか?アマトリチャーナ王国の運命は?

やっと長かった説明の文を終えて物語が動き出す!!