成人後大学に進学した子に関する婚姻費用支払義務を認定した例 (大阪高裁決定平成30年6月21日) | 愛知市民法律事務所のブログ

成人後大学に進学した子に関する婚姻費用支払義務を認定した例 (大阪高裁決定平成30年6月21日)

 

婚姻費用に関する裁判例 
成人後大学に進学した子に関する婚姻費用支払義務を認定した例
(大阪高裁決定平成30年6月21日)(判例時報No.2417 P62)

(事案)
妻である相手方(X)が、別居中の夫である抗告人(Y)に対し、婚姻費用分担金の支払いを求めた事案。
XとYは1990年に婚姻。1995年生まれの長男、2002年生まれの二男がいる。
Yは2007年から単身赴任した後2016年に自宅に戻った。
XはYが単身赴任から戻る間際にYに連絡せずに長男と二男を連れて自宅を出て、別居を開始した。
その間、長男は2014年に高校を卒業したが、2014年度も2015年度も志望大学には合格しなかった。
二男も2015年に中学校に入学したが、学業成績が悪かった。
そこで、Yは長男及び二男の学業不振を憂慮し、2015年2月から同年3月にかけて長男の大学受験を支援し、二男を学習塾に通わせた。
二男は遅くとも2016年5月からG塾(月謝2万8080円)に通い、2017年4月からはH塾(月謝1万7820円)に通った。
長男は2017年に大学に入学し、二男も2018年に高校に入学した。

Xは2016年、Yに対し婚姻費用分担調停を申し立てたが、2017年に不成立となり、審判に移行した。

Xは、2015年に成人(20歳)に達した長男の生活費や二男の学習塾費用も含めた婚姻費用の支払を求めた。

(論点)
これに対し、Yは、
①Xは無断で自宅を出て別居を開始したので婚姻費用支払義務はない
②長男はすでに成年に達していることから長男の分の婚姻費用の支払義務はない
③二男の学習塾の支払義務はない

と主張した。

(原審)(神戸家裁尼崎支部平成30年3月1日)

原審は、Xの請求に対し、「長男は既に成人に達しているので、自ら扶養料の請求をすべきである」として、長男の分の婚姻費用を認めなかった(上記②の論点)。

また、二男の学習塾費用についても、「二男の学習塾費用の分担についてYの明示の承諾がない」とし、月額14万円の婚姻費用のみ認めた(上記③の論点)。

(本抗告審の判断)

①XがYに無断で自宅を出て別居を開始したため婚姻費用の支払い義務を負わないかどうかという点について

「本件の経緯からは、XにおいてYの単身赴任解消間際に唐突にも別居するなど、いささか不相当な行状もなくはないが、これのみをもって、別居又は婚姻関係破綻の原因が専ら又は主としてXにあるとし、Yに対する婚姻費用分担請求を権利の濫用であるとして排斥すべきとまではいえない。」

とし、妻が夫に無断で自宅を出て別居を開始したからといって婚姻費用分担請求が権利の濫用に当たるということはないという判断をした。

② 成年に達している大学生の長男の生活費について

「長男は、成年に達した後に大学に入学し、現在も在学中であり、抗告人も長男の大学進学を積極的に支援していたのであるから、婚姻費用分担額算定に当たり、長男を15歳以上の未成年の子と同等に扱うのが相当である」

として、成年に達している大学生の長男の生活費を婚姻費用に含めることを認めた。

2 二男の学習塾費用について

「抗告人(Y)は、二男に学習塾に通わせたのであるから、その費用についても相応の負担をすべきであり、抗告人(Y)と相手方(X)との収入の較差に照らすと、抗告人がその8割ないし9割を負担するのが相当である。

したがって、G塾(月謝2万8080円)に通っていた2016年7月から2017年3月までは月額2万5000円、H塾(月謝1万7820円)に通い始めた2017年4月から中学校を卒業した2018年3月までは月額1万5000円を負担すべきである。」

として、学習塾費用を夫婦の収入で按分した額を婚姻費用としてYが支払う義務があることを認めた。

(弁護士榊原コメント)
①このように妻が夫に無断で子を連れて家を出た場合でも、婚姻費用支払い義務が発生するのが通常です。

②このように、成人を迎えた子が大学に進学したり、まだ監護親に扶養されているようなケースにおいて、これを婚姻費用の対象となる未成熟子として扱うことができるのかという点に関しては、非監護親が進学へ同意・承諾していたかということのほか、両親の学歴や経済状況等を総合的に考慮して決められることになります。

③子の学習塾費用についても、夫がそれを同意・承諾していたかどうかが重要となります。

(証拠の例)
妻側である場合には、夫が子の大学進学や通塾を認めていたことを後日証明できるようにするため、以下のような証拠を残しておくとよいでしょう。

・子の大学進学や通塾に関する夫とのラインやメールのやりとり
(メッセージ画面のスクリーンショットを撮って保存しておきましょう。)

・夫から子に対する大学進学や通塾を勧めたり励ますような手紙やライン・メール等
(手紙は原本を保管しておきましょう。ラインやメールはメッセージ画面のスクリーンショットを撮って保存しておきましょう。)

・大学入学式等に夫が参加したのであればその写真

このように争点があるような婚姻費用・養育費のケースでは、争点に対する主張・立証の仕方によって月額が左右される可能性があります。

納得がいかない内容の婚姻費用・養育費の額に合意してしまう前に、弁護士にご相談下さい。

愛知市民法律事務所
弁護士 榊原真実