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この場合クーリングオフできる?(事前に業者と電話してから訪問を受けた場合)

【相談内容】

 自宅のリフォーム工事をしようと思い、インターネットで見つけた業者に電話して情報収集をしようとしたところ、「ご自宅を訪問してお話ししたい」と言われたことから了承しました。担当者が後日自宅に来て、いろいろと勧誘された結果、その場でリフォームの契約をしてしまいました。

 

 しかし、工事内容があいまいである上、他の業者よりかなり高額であることも分かりました。

 

 そこで、「訪問販売は8日以内ならクーリングオフできる」と聞いたことがありましたので、契約してから3日後に、業者にクーリングオフを申し出たところ、「そちらから自宅訪問の希望があり訪問したので、クーリングオフの適用除外となりクーリングオフはできませんよ」と言われました。

 

①この場合訪問販売としてクーリングオフはできないのでしょうか。

 

②また、契約してから2週間経っている場合はどうでしょうか。

業者から渡された契約書面では、工事内容が「工事一式」とされていて、クーリングオフができるという説明も書かれていません。

 

【回答】

①業者の訪問を受けて契約した訪問販売の場合であってもクーリングオフができない場合(「適用除外」)の1つに、消費者が契約のために自宅を訪問してほしいと業者に請求した場合があります(特定商取引法26条6項1号)。

 しかし本件では、消費者は情報収集のため業者に電話をしたところ業者から話をするため自宅を訪問したいと言われてこれを了承したに過ぎませんので、クーリングオフができない「適用除外」のケースには該当しません。

 よって、クーリングオフが可能であると考えます。

 

②クーリングオフは「法定書面を受領した日から8日以内」に申し出(発信)しなくてはならないという期間制限があります。

 

しかし、本件では契約書面には「工事一式」としか書かれておらず不明確であること、クーリングオフができるという記載もないことから、「法定書面」に該当しないと思われます。

 

本件では「法定書面」を受領していないので、クーリングオフ期間は経過していないといえます。

 

よって、2週間経っていてもクーリングオフが可能であると考えます。

 

【解説】

(注)以下の説明の前提として、

 「クーリングオフの適用除外に当たる」=クーリングオフできない

 「クーリングオフの適用除外には当たらない」=クーリングオフできる

 ということになるので、ご注意下さい。

 

 

 いきなり自宅訪問をされた場合ではなく、事前に電話などで消費者が自宅訪問を了承や希望し、それを踏まえて業者が自宅に来訪するケースは多くあります。

 このような場合のうち、「その住居において売買契約もしくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約もしくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」(特定商取引法26条6項1号)(訪販請求)にはクーリングオフの「適用除外」とされ、クーリングオフができないとされています。

 

しかしこれは、「こういう契約をするために自宅に来て欲しい」と言って消費者が業者に訪問を請求して業者が自宅を来訪し、実際にもともと消費者が思っていたような内容で契約をした場合を言います。

 

契約をしたいと思って業者を呼んだ場合であっても、もともと思っていた内容と大きな開きがあるような契約をさせられた場合や、契約までする気はなくて業者を呼んだら契約させられた場合などは適用除外には当たらずクーリングオフができると思われます。

 

 したがって、以下のような場合には「適用除外」には当たらず、クーリングオフが可能です。

 

(事前に電話で業者の自宅訪問を了承・希望した場合であっても、「適用除外」には当たらずクーリングオフができると思われる例)

 

見積りを依頼しようと思って業者に電話して自宅に来てもらったところ、その場で勧誘されて契約を締結した場合

 

●消費者が台所の水漏れの修理を要請し、その修理のために業者が来訪したが、台所のリフォームも勧誘されて契約した場合

 

●知人から「とりあえず商品の説明だけ聞いてみないか」と言われて消費者が承諾したのを受けて業者が来訪し、契約した場合

 

●自宅ポストに入っていたチラシに「鍵の修理5,000円~」とあったので修理を依頼したところ、業者が自宅に来て自宅の鍵を見て「特殊な作業が必要です」と言われて結局修理費60,000円で契約してしまった場合。

(チラシの表示額と実際の請求額に大きな開きがあることから、消費者としてはチラシを見て業者に連絡した時点では5,000円程度で修理を依頼するという認識しかなく、実際に業者から提示された60,000円というような高額な金額で契約を締結する意思は有していなかったとみられる。

そのため、このような場合であっても、自宅での契約締結を請求した者とは言えず、適用除外の対象とはならないと主張することは可能な場合があると考えられます。ただし、チラシの記載内容などによって判断が分かれる可能性はあります。)

 

●1回目に訪問販売して勧誘が終了したが、その場で2回目以降の訪問を約束し、2回目の訪問販売で勧誘された結果契約した場合

(※これに対し、1回目の勧誘の際に消費者から改めて再訪してほしいと求めて2回目以降の来訪があり、1回目の勧誘の際と同様の勧誘を受けて契約した場合は適用除外に当たりクーリングオフできない可能性があります)

 

 

今回は、事前に電話などで自宅訪問を了承・希望し、それを踏まえて業者が来訪し契約した場合にクーリングオフができるか(適用除外に当たらないか)について検討しました。

 

これ以外の場合でも業者から「適用除外だからクーリングオフできない」「訪問販売には該当しないからクーリングオフできない」などと言われることがあるかもしれませんが、あきらめずに弁護士などに相談してみて下さい。

 

※上記質問②のように、8日以上経っていても、「法定書面を受領」したと言えないケースも多く見受けられますので、「クーリングオフ期間が過ぎてしまったのではないか」と思ってもまずは相談してみて下さい。

 

 

愛知市民法律事務所

 名古屋市西区城西1-12-12 パークサイドビル2階

 TEL(052)529-6155 

 今回の記事を書いた弁護士:弁護士 榊原真実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民事執行法の改正により、養育費の取り立てがしやすくなりました

(事例)

A子さんは、2年前にBさんと離婚をしました。

離婚の際、養育費月5万円を払ってもらうという公正証書を作成しました。

しかしその後Bさんは養育費を支払ってくれなくなりました。勤務先や預貯金口座などもわかりません。

どうすればいいでしょうか。

 

 このようなA子さんの場合、債務者であるBさんが任意で支払ってくれないことから、強制執行手続(預貯金口座や給与債権の差押え)などで回収することが考えられます。

 

しかしBさんの勤務先や預貯金口座などが分からない場合、これまでそれらの差押えもできず養育費の回収が困難でした。

 

このような問題点を踏まえ、令和2年に民事執行法が改正されました。

 

養育費の回収に関しては、債務者の給与債権(勤務先)についての情報まで得られる手続ができたこと、公正証書も情報開示制度の対象となったことから、今後強制執行による養育費の回収の可能性が高まることが期待されています。

 

 

2 令和2年民事執行法改正のポイント

 

改正のポイントは大きく分けて2つです。

 

(1)債務者以外の第三者からの情報取得手続を新設

 

強制執行の申立てには、執行の対象となる債務者の財産を特定することが必要です。

 

平成15年に、債務者の財産に関する情報を債務者自身の陳述により取得する手続として、「財産開示手続」が創設されました。

 

⇒ しかし, 「財産開示手続」の利用実績は年間1000件前後と低調であり、債務者財産の開示制度の実効性を向上させる必要があるとの指摘がありました。

 

そこで、令和2年改正により、裁判所を通じて、金融機関等の第三者から、債務者の財産や勤務先等についての情報提供を得ることができるようになりました。

 

【情報取得手続の概要】

 

★1 金融機関から、①預貯金債権②上場株式、国債等に関する情報を取得

(銀行、信金、労金、信組、農協、証券会社等) 【新民事執行法207条】

 

★2 登記所から、③土地・建物に関する情報を取得 【新民事執行法205条】

 

★3 市町村,日本年金機構等から,④給与債権(勤務先)に関する情報を取得 【新民事執行法206条】

 

※ 給与債権に関する情報取得手続(上記④)は、養育費等の債権生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立て可能です。

 

 

(2)財産開示手続の見直し

 

平成15年に創設された財産開示手続をより利用しやすく実効的なものにするため、以下の2点が改められました。

 

1 不出頭や虚偽の回答をした場合の刑事罰が新設

 

これまでにも財産開示手続はあったのですが、債務者が出頭しなかったり虚偽の陳述をした場合であっても30万円以下の過料(行政罰であり刑事罰ではない)が課されていただけであり、実効性の低さが指摘されていました。

 

そこで今回の改正では、債務者の不出頭や虚偽陳述等には刑事罰(6か月以下の懲役又は5 0万円以下の罰金)による制裁が科されることになりました。【新民事執行法213条】

 

不出頭や虚偽陳述の場合が犯罪となり、懲役や罰金の対象となることによって財産開示手続の実効性が向上することが期待されています。

 

★2 財産開示手続が使える対象を公正証書等にも拡大

 

改正前の制度では、財産開示手続の申立権者は、確定判決などの債務名義を有する債権者に限定されていました。

 

今回の改正では、申立権者の範囲を拡大して、仮執行宣言付判決を得た者や、公正証書により金銭(例えば養育費など)の支払を取り決めた者等も利用可能になりました。【新民事執行法197条】

 

例えばこれまでだと、本件のケースのように離婚時に締結した公正証書だけでは利用できなかった情報開示手続が、今回の改正によって利用できるようになったことになります。

 

3 養育費回収のための改正民事執行法の利用と注意点

 

このように、令和2年の民事執行法改正により、債務者の財産について第三者から情報提供を得られるようになったり、情報開示制度が利用しやすくなっています。

 

とくに今回の事例のように、公正証書で養育費の取り決めをしたような場合には、

 

1 市町村や年金機構から、給与債権(勤務先)についての情報提供を得ることができる。

 

2 公正証書がある場合でも情報開示手続を利用できるようになった。

 

3 情報開示手続への不出頭や虚偽陳述に刑事罰が科されることになった。

 

この3点から、特に今後強制執行による養育費の回収がしやすくなることが期待されています。

 

(注意点)

上記★1の勤務先についての情報を得るためには、公正証書などにきちんと「養育費」と明記されている必要があります。

 

例えば「解決金」といったあいまいな文言にしてしまうとせっかくのこの制度が使えなくなる可能性がありますので、養育費等について相手方と書面を交わす前に一度弁護士にご相談された方がいいかもしれません。

 

このような養育費の回収や、その他債権回収、強制執行等についてのご質問・ご相談は弁護士までお問い合わせ下さい。

 

(愛知市民法律事務所  弁護士 榊 原 真 実)

 

〒451-0031

名古屋市西区城西1-12-12 パークサイドビル2階 

愛知市民法律事務所

TEL   052-529-6155

FAX   052-524-6424

URL   http://aclo.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

住宅ローンがある場合の債務整理(個人再生手続)

新型コロナの影響で給料が下がり、経済的に苦しいというご相談も多くなってきています。

住宅ローンの返済と他の金融機関からの借入が重なっている場合には、資金繰りに非常に苦労されているかと思います。

 

 

このような場合の債務整理の方法としてよく利用されるのが、【個人再生手続】です。

 

 

個人再生手続では、【住宅資金特別条項】を利用することによって、

「住宅ローンはこれまでどおり返済しつつ、それ以外の債務については例えば5分の1に減額して分割返済していく」ということが可能になります。

 

 

個人再生手続では、住宅ローン以外の債務の額に応じて返済額が以下のように減額されます(以下は目安です。)。

 

 

①債務の額が100万円未満の場合→返済額は債務の総額と同じ

②債務の額が100万円以上500万円未満の場合→返済額は100万円

③債務の額が500万円以上1500万円未満の場合→返済額は債務額の5分の1

④債務の額が1500万円以上3000万円以下の場合→返済額は300万円

⑤債務の額が3000万円を超え5000万円以下の場合、返済額は債務額の10分の1

 

 

個人再生手続を利用した場合、上記のように減額された返済額を、原則として3年間で分割して支払っていくことになります(これとは別に住宅ローンを支払っていきます)。

 

 

例えば、消費者金融や銀行カードローン等からの債務が550万円、住宅ローンが月々7万円の方の場合、

上記③を適用し、住宅ローン以外の債務の返済額は110万円(550万円の5分の1)になり、これを3年(36ヶ月)で返済していくことになるため、1ヶ月の返済額は30,555円となります。

そして、住宅ローンは原則としてこれまでどおり月7万円を返済していくということになります。

 

 

ただし、所有する財産の総額(清算価値)が上記の①~⑤による返済額を上回る場合には、最低でもその清算価値の分を返済しなくてはならないというルール(【清算価値保障原則】)がありますので注意が必要です。

清算価値が高く、清算価値の分を返済しなくてはならなくなるケースとしては、例えば、将来受給する退職金が相当額ある場合、貯蓄型の生命保険に入っており、解約返戻金が数百万円になる場合、所有する自宅不動産の価値が住宅ローンの残債務額を上回る場合等が考えられます。

 

 

個人再生手続については、利用条件(※)や返済計画など、難しい論点もありますので、まずは弁護士にご相談いただければと思います。

 

 

※個人再生手続を利用するには、【将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること】等の条件に当てはまる必要があります。

 

 

(執筆者)弁護士 榊 原 真 実

 

 

愛知市民法律事務所では、多数の個人再生手続申立の実績があります。

お気軽にご相談ください。

 

 

〒451-0031

名古屋市西区城西1-12-12 パークサイドビル2階 

愛知市民法律事務所

TEL   052-529-6155 (月~金 9時~17時)

FAX   052-524-6424

URL   http://aclo.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話応対時間 変更(当面)のお知らせ

新型コロナウイルス対策に伴い、電話応対時間を変更させていただきます。

皆様にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

                                         愛知市民法律事務所一同

 

                          記

 

変更開始日   2020年5月25日(月)~ 

(今後の状況によっては期間を延長いたします。)

 

変更後の電話応対時間  午前9時~午後5時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月30日・5月1日 臨時休業のお知らせ

愛知市民法律事務所は、新型コロナウイルス感染拡大防止への協力のため、以下の日を臨時休業いたします。

 

臨時休業日  2020年4月30日(木)・ 5月1日(金)

 

上記以外の祝日・土日も通常通り休業いたします。

 

このため、4月29日(祝)~5月6日(祝)までの期間中を通して事務所が休業となります。

 

関係者の方々にはご迷惑をおかけしますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

 

2020年4月

愛知市民法律事務所

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