今回はドラマ部分はしっかりしていて、プロットは良く出来ているのにも関わらず、突っこみどころが目立つ上、怖くないホラー演出もあった日本のホラー映画を紹介します。


犬鳴村

主演:三吉彩花

出演:坂東龍汰/古川毅/宮野陽名/大谷凛香/奥菜恵/須賀貴匡/田中健/寺田農/石橋蓮司/高嶋政伸/高島礼子


・あらすじ(ネタバレ)

11月3日、赤い橋の近くにある電話ボックスの前、西田明菜は「2時になりました。」と言いました。彼女の前には恋人の森田悠真がその様子を撮影していて、電話ボックスの公衆電話が鳴らないと告げます。明菜がもう少し待とうと言い出しますが、公衆電話が少し遅れて鳴り始めます。明菜は悠真の声を無視して公衆電話の受話器を取りました。応答すると、明菜だけに聞こえているのか、受話器から聞こえるのは水の音だけで、音声を聞いた明菜は「今からそちらに向かいます。」と言って電話を切りました。


明菜は悠真を連れて旧犬鳴トンネルの中に入ります。悠真はカメラを回しながら一緒に帰るよう訴えますが、明菜は撮影を続けるよう求めました。明菜は「"絶対に行ってはいけない""生きては帰れない"と噂される。あの日本最恐の心霊スポット『犬鳴トンネル』から、私、アッキーナがお送りしています。」とカメラに向かってリポートし、先に進んでいき、悠真は気味悪がりながら撮影を続け、彼女のあとについていきます。トンネルを抜けると、明菜は「アッキーナ、見つけちゃいました。」と倒れている古い看板を見つけます。看板には"コノ先 日本國憲法 通用セズ"と書かれていました。先に進むと、明菜は大喜びで一軒家を発見し、家屋が並んでいる村にたどり着きます。彼女は「これが正真正銘、実在した犬鳴村です。」とカメラに語りかけ、ライトであたりを照らし、悠真は暗すぎると指摘しますが、明菜は小屋の前に向かいました。明菜は扉を叩き、扉の向こうを覗いたあと、「ちょっとカメラ止めて。」と悠真に言いますが、トイレを行くために撮影を止めただけでした。明菜がトイレを使っている
間、悠真は撮影を再開し、外で彼女を待ちました。待っている最中、悠真が別の小屋に入ると、檻の中の床に血痕があるのを見つけます。更に彼は小屋の中で古い鏡を見つけました。鏡には"寄贈 昭和24年 筑柴電力KK"と書かれていました。鏡を見ていると、鏡に映った自分の背後に女性のような人影を見つけ、後ろを振り向きます。

その頃、用を足した明菜は持っていた水で手を洗い、小屋から出ようとしますが、扉が開きません。明菜は悠真のいたずらかと思い、扉を開けようとしますが、獣のような唸り声と激しく扉を叩く音を聞いて凍りつきます。彼女は後退りし、小屋の障子に持たれかかりますが、障子の隙間から出てきた何者かの腕に掴まり、悲鳴をあげます。明菜の悲鳴を聞いた悠真は彼女の元へ駆けつけると、取り乱している明菜は悠真を追い払い、彼を置いて逃げ出しました。彼女を追っている悠真が捕まえようとしても取り乱したままで、明菜と悠真が旧犬鳴トンネルに戻
ると、悠真が明菜をなだめたことでようやく明菜は落ち着きを取り戻しますが、明菜の目には何者かが見えていました。明菜は再び取り乱したまま逃げ出し、悠真は明菜を追いかけます。2人は旧犬鳴トンネルから抜け出しました。

翌日、臨床心理士の森田奏は病院で遼太郎という少年を担当していました。奏は遼太郎が悪夢に悩まされているため、どういう夢なのかを遼太郎に尋ねますが、話してくれません。同席していた優子は「私にも話してくれないんです。でも毎晩毎晩うなされるんです。すごく苦しそうな悲しそうな顔をして。」と告げます。優子と看護師の映美が退席すると、カウンセリングルームは奏と遼太郎だけになり、奏は「何かママに聞かれたくないことでもあるの?」と聞きました。すると遼太郎は「だって、ママが言っちゃダメだって。」と答え、奏は「ママは今、部屋出てったでしょ?」と言いますが、遼太郎は「あっちのママ。内緒なの、ママ悲しくなっちゃうから。」と答えました。カウンセリングを終えると、奏は映美と一緒にエレベーターに乗る遼太郎と優子を見送りますが、優子が「先生にさよならは?」と遼太郎に促すと、遼太郎は奏とは別の方向に向けて手を振っていました。遼太郎に手を振っていた奏は傍らに女性の幽霊がいるのに気づき、エレベーターに付いている鏡に目を向けると、そこには手を振っている女性の幽霊が鏡に映っていました。奏は気味悪く感じ、「あの子の担当外してもらおうかな。」と呟きます。そんななか、携帯に兄の森田悠真から電話が入りました。


悠真から連絡を受けた奏は実家に戻ります。実家の部屋の壁には父親の森田晃の祖父らの写真が飾られています。晃と母親の綾乃が仏壇にお参りするなか、奏が悠真に話を伺うと、悠真は「明菜がおかしいんだ。今朝帰ってからずっと。」と言いました。奏は「今朝って、どこに行ってたの?」と尋ねると、悠真は旧犬鳴トンネルに行ったと答えます。そこに弟の康太が2人の前に現れます。康太は旧犬鳴トンネルという言葉を聞いて興味を示し、犬鳴村の都市伝説を小学校の自由研究の課題として調べていました。しかし悠真と康太とは違い、奏は有名な心霊スポットである旧犬鳴トンネルをよく知りません。康太は旧犬鳴トンネルが有名な心霊スポットだと教えますが、晃は「そんなものあるか!首を突っ込むんじゃない。」と言って不快に感じ、「くだらないことに康太を巻き込まないでくれないか。あの子までお前のようになってほしくないんだ。」と悠真に注意しました。晃は外出しようと玄関先に向かい、「誰に似たんだか。やっぱりあいつはお前の卑しい血筋だな。」と側にいた綾乃に告げます。綾乃は何も言わずに聞き入れ、外出した晃の背中に向けて「行ってらっしゃい。」と言いました。

その後、悠真は奏を明菜がいる自分の部屋へと連れていきます。部屋に入ると、明菜は鉛筆で紙に黒い犬と人のようなものを描いていて、「稲もできなきゃ ふたしちゃろ ふたしちゃろ 赤子は見ずに ながしちゃろ」とわらべ歌を歌っていました。奏は「調子悪いの?」と声をかけますが、明菜は「メッチャ元気!」と笑顔で答えます。悠真は明菜の身に起きたことを理解できていません。明菜は「見たんだよね。犬。犬が西向けば、尾は東だけど、犬が白ければ、そりゃ"尾も白い"よね?」と意味不明な発言を奏に言うと、「おしっこ。」と言って部屋から出ていきました。彼女の様子を見た奏は病院に連れていくべきだと提言しますが、悠真は「お前、何か昔から見えたりしてたんだろ?小さい頃妙なこと言ってたの覚えてる?」と問いかけました。奏は幼い頃から霊感を持っていて、悠真はその事を持ち出したものの、奏は気味悪がりました。同じ頃、康太は2人が話している隙に悠真のカメラを奪い、2階にある自分の部屋で動画を確認していました。その最中、康太は外でわらべ歌を歌っている明菜の声を耳にし、カメラのSDカードを抜き取ると、窓際に立って部屋の外を見ました。外には明菜が失禁しながら裸足で家の庭を歩いていました。明菜は自分を見ている康太に視線を向け、笑みを浮かべます。


康太は明菜の絵を見ている奏と悠真がいる悠真の部屋に向かうと、扉をノックしました。悠真は晃に注意されたため、部屋に来るなと忠告しますが、「明菜ちゃんがおしっこしてる。」と勝手に家に出てお漏らししていたことを悠真に報告します。それを聞いた悠真と奏は康太と共に明菜を捜索しました。悠真は明菜の携帯に電話をかけると、明菜は少し遅れて応答します。悠真は「お前どこにいんだよ?」と尋ねると、明菜は「もうすぐだから。もうすぐ行くから。」と答えました。やがて明菜の声が近づき始め、悠真は上を見上げました。その直後、携帯を持っていた明菜が笑顔で悠真の目の前で落ちてきました。明菜は森田家の実家近くの鉄塔から飛び降りたのです。悠真は腰を抜かし、変わり果てた明菜の姿を見て恐怖を感じました。

後日、11月8日、明菜の葬儀が営まれ、森田家と明菜の親族が葬儀に参列していました。明菜の父親、郁男は娘と一緒に旧犬鳴トンネルに行った悠真に「何があったんだよ?一緒にいたんだろ?」と問い詰めますが、悠真は上手く答えられず、明菜の母親、真由美が郁男を止めに入ります。しかし郁男は怒りを抑えきれず、晃に掴みかかると、「お前んとこのボンクラ息子なんかと付き合うから!明菜が…明菜がなぁ、こんなことになっちまったんだよ!どうしてくれんだよ!」と激昂します。郁男の父親が晃に深々と頭を下げ、明菜の親族が郁男を取り押さえると、「森田の息子が明菜を殺したんだ!」と非難しました。真由美と明菜の弟は深く悲しみます。明菜の親族が彼女の別れを惜しむなか、老医師の山野辺も葬儀に参列していました。山野辺は葬儀の前に晃から明菜の検死を頼まれていて、「明菜ちゃんの体はね、肺の中にたくさん水が入ってた。溺死だよ。」と告げました。晃は検死してくれた礼を言い、山野辺は晃の父親も先代も同じ死に方をしていたことを話すと、「あの当時のことを知ってるのは私とあんただけだ。次はそろそろ我々なのかもしれない。」と何かを悟ったかのような素振りで言いました。山野辺は検死で判明した明菜の秘密を言おうとしますが、奏がやって来ると、「長女は勘が鋭い。気をつけなさい。」と口を慎みます。彼は奏に挨拶すると、その場から去りますが、その時に山野辺が奏の前を横切ると、奏の耳には「犬殺しが!」という山野辺の囁き声が聞こえていました。

その後、葬儀では火葬場で骨あげが行われ、明菜の親族が竹ばしで明菜の遺骨を骨壺に入れていました。初めて近親者の葬儀に参列する康太は「あれ、明菜ちゃんなの?」と奏に尋ね、悠真は彼女の死を受け入れられなかったのか、火葬場から抜け出します。悠真は実家に戻り、親族から預かっていた明菜の遺品を確認している、そのなかに彼女のものとされる母子手帳を発見します。明菜のお腹の中には赤ちゃんが宿っていたのです。それを知った悠真は静かに涙を流しました。

一方、骨あげを終え、奏と康太は実家に戻っていました。奏が康太の部屋に行くと、康太は電話ボックスを模した小さな箱に何かを入れて遊んでいました。康太は明菜が旧犬鳴トンネルに行って不可解な死を遂げたため、犬鳴村の都市伝説を自由研究の課題にするのをやめると言い出し、突然ハンマーで布を被せた何かを叩いて壊そうとしますが、奏は康太が壊そうとしていたものが気になり、布をめくりました。それは康太が自由研究のために作ったジオラマ模型であり、模型を見た奏は「すごいじゃん!せっかく作ったんだから壊すことないのに。」と言いました。奏は「犬鳴村ってさ、どこにあるの?」と康太に尋ねると、康太は「そこが分からないから都市伝説なんじゃん。地図から消された村だし…。でもこの峠のどこかにあるはずなんだ。」と話し、自慢げに模型を使って旧犬鳴トンネルや呪われた電話ボックスを紹介します。その直後、康太は外で悠真とその仲間のヒロ、ユウジ、シンが話し合っているのを目撃し、部屋から出ていきました。奏は呼び止めようとしますが、自分の背後に男性の霊の気配がすることに気づきます。

明菜の死に怒りと悲しみを抱いた悠真は犬鳴村に火をつけようとユウジ、シン、ヒロ、仲間のリュウセイを連れて車で旧犬鳴トンネルに行きました。近くの山道に車を停めると、悠真、ヒロ、ユウジ、リュウセイは歩いて旧犬鳴トンネルに行き、シンは車中で待機しますが、カーオーディオから流れるラジオの受信が悪くなり、トランクにいる何かを見て恐怖を感じます。シンは逃げようと思って誤って車をフェンスにぶつけてしまい、恐怖のあまり思わず車から飛び出しますが、トランクにいたのは悠真が犬鳴村に行くと知り、こっそり悠真の車のトランクに隠れていた康太でした。一方、悠真たちは旧犬鳴トンネルの前まで着いたものの、トンネルには大きなバリケードが入口を塞いでいて、バリケードを見た悠真は「この前明菜と来た時には無かったぞ!」と告げます。悠真たちが入るには不可能で、ヒロたちは犬鳴村に入りたい悠真を止めようとすると、悠真は「お前ふざけんなよ!」とヒロを罵倒します。悠真は「意味わかんねぇんだよ。俺だって意味わかんねぇんだよ!」と言ってバリケードをよじ登ると、バリケードを越えてトンネルの中に入っていきました。

その頃、夕方、病院で勤務している奏は医師の内田からカウンセリングルームに呼び出されますが、トイレの入口付近に女性の幽霊がいることに気づきます。彼女は平静を装い、カウンセリングルームに入ると、内田は部屋にいた遼太郎の父親、圭佑を紹介します。圭佑は「遼太郎は私たちの本当の子じゃないんです。あの子にも、というか妻にも話してないんです。」と言い出し、耳を疑った奏は「どういうことですか?」と尋ねました。内田の話によると、5年前に優子は死産したのですが、遼太郎は優子を悲しませないよう優子にそれを隠し、養子縁組を組んでいました。そして丁度同時期に院内で亡くなった身寄りのないシングルマザーがいて、養子に出された遼太郎はそのシングルマザーが出産した子供でした。話を聞いた奏は院内にいる女性の霊が遼太郎の本当の母親であることを知り、トイレの入口付近に女性の霊がいるか確認しますが、さっきまでいたはずの女性の霊はいなくなっていました。彼女は遼太郎が投げたボールを拾い、親切にボールを渡しました。しかし遼太郎の側に女性の霊の気配を察し、奏は恐怖を感じて息遣いを荒くします。遼太郎は「ママ、怖くないよ。」と声をかけますが、奏が女性の霊のいる方向に目をやると、女性の霊は奏をじっと見つめていました。それを見た奏は「やめて!」と大きな声をあげ、辺りは静まり返りました。


その頃、トランクから出た康太は旧犬鳴トンネルへと向かっていました。康太は引き返すヒロ、ユウジ、リュウセイに気づかれないよう身を隠しつつ、旧犬鳴トンネルに着きますが、トンネルの中から悠真の怒鳴り声が聞こえてきました。悠真は明菜の恨みを晴らそうと「出てこい!俺のこともやってみろよ!」「何で明菜なんだよ!」と暗闇に向かって叫んでいたのです。康太がバリケードによじ登り、その上に乗って悠真に声をかけると、悠真は康太が勝手にこの場所に来たことに驚きます。すると悠真は暗闇に何かがいるのに気づき、「康太!こっち来るな!そこで待ってろ!」と呼びかけました。悠真は「そっから下りて来るなよ。」と忠告すると、よじ登れるようライトで自分の周りを照らすよう康太に頼みますが、ライトで照らしていた康太はバリケードの上から落ちてしまい、トンネルの中に入ってしまいます。暗闇のなかだと康太の姿は見えず、悠真は康太とみられる人影に近づきますが、康太ではなく和服を着た女性の幽霊でした。恐怖を感じた悠真は「康太、来るな!」と告げますが、康太は明菜のような姿をした幽霊に捕まっていて、悠真はわらべ歌を歌う村人たちの幽霊に取り囲まれます。やがてトンネルの中から悠真と康太の悲鳴が響き渡り、2人は行方をくらますのでした。


翌日、悠真の仲間、ヒロたちは警察を呼び、悠真と康太が旧犬鳴トンネルに入ってから行方不明になったことが奏、晃、綾乃の耳にも入ります。ヒロたち、奏、晃、綾乃はふたりの警官と共に旧犬鳴トンネルの入り口にやって来ます。晃はヒロから悠真が旧犬鳴トンネルの先にある犬鳴村で亡くなった明菜と共に襲われたと聞き、バリケードが入口を全て閉じてないと文句を言います。すると綾乃があの時康太が所持していた悠真のカメラを見つけると、奏は康太が悠真についてきてここに来たのではないかと指摘します。ヒロたちは自分たちは止めたが、悠真が自分の意志で入ったと警官に説明し、悠真と康太がトンネルの中にいると思った綾乃はバリケードをよじ登ろうとします。晃とふたりの警官が綾乃を止めに入りますが、綾乃は暴れまわり、制止しようとする警官の首を爪で引っ掻き、晃の腕に噛みつきます。豹変した綾乃の姿は犬のようでした。綾乃は正気に戻りますが、晃は拒絶し、綾乃は無意識に犬のような仕草を取り始めます。警官は旧犬鳴トンネルの中は危険のため、悠真と康太の捜索は自分たち警察に任せるよう一同に告げました。

その日の夜、奏が病院の仕事に戻ると、看護師からパニック発作を起こして緊急搬送され、今は入院していると聞かされます。奏は遼太郎が病室に向かいますが、上の階に向かおうしている内田たちが目の前を横切ります。奏が話を伺うと、そのなかにいた看護師の谷口は詳しいことは分からないが、山野辺が自宅で溺れて危篤状態になり、緊急搬送されたと説明します。内田たちがエレベーターに乗り込むと、内田は「状況が分かったら伝えるから。」と告げ、エレベーターで去っていきます。奏が遼太郎の病室に入ると、付き添いに来た優子と圭佑がいました。奏は「あとは私が見ますので、ご心配でしょうがお引き取りください。」と優子と圭佑に告げ、優子と圭佑は代わりに付き添ってくれるよう奏に託します。

奏は遼太郎に付き添いますが、その途中で居眠りしてしまい、目を覚ますと、遼太郎は病室のベッドからいなくなっていました。彼女は遼太郎を探した末、遼太郎がひとりの患者の病室の前で立っているのを見つけます。彼女が声をかけると、遼太郎は「おじいちゃんがね、呼んでる。」と答えました。病室から聞いたことのある不気味なわらべ歌が聞こえていましたが、奏は意を決して病室のなかに入りました。その病室は病院に搬送された山野辺の病室でした。奏は山野辺に歩み寄りますが、山野辺は突然彼女の腕を掴むと、「水が来る…逃げろ。」と囁きました。奏が周りを見ると、病室に沢山の村人の幽霊が集まっていました。彼女は遼太郎を連れて村人の幽霊から逃げ出し、一室に隠れますが、村人の幽霊は2人に襲いかかろうとしていました。


奏は遼太郎の病室で目覚め、今までの出来事が夢だったことに気づいて安堵しますが、布団の中から幽霊になった山野辺が現れます。山野辺は「お前の血が!お前ら"犬殺し"の血のせいだ!」と訴え、彼女に襲いかかります。しかし2人とも同じ夢を見ていたのか、病室にいる遼太郎と居眠りをしていた奏は目を覚ましました。その直後、奏は谷口から山野辺が息を引き取ったことを知らされます。

その頃、悠真の仲間、リュウセイはバイクで夜道を走っていると、電話ボックスの前を通ろうとした矢先にバイクが故障してしまいます。彼は携帯でヒロに電話をかけようとしますが、電波が悪くて電話ができません。やむを得ずリュウセイは電話ボックスの公衆電話を借りてヒロに電話をかけました。ファミレスでユウジと食事をしていたヒロが電話に応答すると、リュウセイは「クソバイク止まっちまったんだよ。拾ってくんねぇ?」と迎えに来てくれるよう頼みます。連絡を受けたヒロとユウジは車で電話ボックスの前に行きますが、そこにはバイクがあるだけで、リュウセイの姿は見当たりません。2人がリュウセイを探していると、突然公衆電話が鳴り出します。怖くなったヒロはユウジに受話器を取るようお願いし、ユウジが受話器を取ると、受話器からリュウセイの声が流れますが、それは「クソバイク止まっちまったんだよ。拾ってくんねぇ?」「今、赤い橋んとこ、早く来てくれよ。ここ何かヤベえよ。」とヒロがさっき聞いた音声と同じ音声でした。ユウジがリュウセイの声だと伝え、ヒロに電話を代わると、受話器から流れるリュウセイの音声はまたさっきと同じ音声でした。やがて受話器から同じ音声が何度も流れると、電話ボックスのドアが固く閉ざされ、ヒロとユウジは電話ボックスに閉じ込められます。ヒロがいくら開けようとしてもドアは開いてくれません。電話ボックスの内壁に手形がつき始め、ヒロとユウジは気味悪く感じます。そして電話ボックスのなかから水が沸き出ると、たちまち電話ボックスに水が溜まります。ヒロとユウジは狭い空間で身動きが取れず、2人が助けを呼ぼうとしても、その声は届きませんでした。翌朝、電話ボックスの中の水は無くなっていましたが、ヒロとユウジに加え、リュウセイの遺体も入っていました。3人は電話ボックスで溺死を遂げていたのです。



一方、綾乃と警察は旧犬鳴トンネルの前で悠真と康太の捜索にあたっていました。そこで警察はトンネルの入口付近で康太のカバンを発見し、カバンを見た綾乃は警官からカバンを奪おうとしますが、警察は康太のカバンは遺留品として預かると綾乃に告げました。同じ頃、仕事を終えた奏が実家に帰ると、晃が居間でうつむいていました。奏は昨夜山野辺が亡くなったことを報告すると、明菜と山野辺が死に、悠真と康太が行方不明になったのには何か理由があると思い、「ねぇ教えてよ。うちの血筋って何なの?この家で何があったの?」と訊ねますが、晃は「お前までおかしくなったのか?」と答え、逃げるように居間から立ち去ろうとします。奏は「おかしいのはうちでしょ?ねぇ何で?私に話すことがあるよね?」と訴えると、晃は「俺だって知ったら一緒に…。怖いんだ。俺はお前らが怖いんだよ。お前だって子供の頃から妙なものが見えたりしてたんだろ!混ざっちゃ血だったんだ。」と答え、実家をあとにするのでした。その後、奏は車で山の奥深くにある母方の祖父、隼人の家を訪れます。隼人は久しぶりに来た奏を見て喜び、奏を家にあがらせました。奏は亡くなった祖母の耶英に挨拶すると、隼人は「耶英もきっと喜んでるよ。」と言い、奏が幼い頃、耶英と仲良くしていたことを語りました。その話を耳に入れていた奏は縁側で景色を見ながら幼少期の頃を思い出します。

幼少期の頃、祖父母の家で泣いていた奏は耶英に兄の悠真にいじめられたことを話しました。話を聞いた耶英は「そりゃ兄ちゃんが悪いよな。婆ちゃんが2つずつあげた飴なのに。そんな兄ちゃんには罰が当たるぞ。」と言いますが、奏は自分の飴を取られたことを話していません。奏は「どうして飴を取られたって分かるの?」と尋ねると、耶英は「奏にも分かるはずだ。」と言っておまじないをかけました。すると奏は近くのお墓の前で遊んでいる悠真の姿を見かけました。奏は悠真に警告しますが、悠真はお墓の敷地内から飛び降りようとした時に転落してしまい、足を怪我してしまいます。奏と耶英は悠真に罰が当たったので笑い合いますが、奏はお墓の前に若い青年の幽霊がいることに気づき、耶英は奏が自分と同じように幽霊が見えるようになったことを知ります。耶英は「何か言いたげにずっと見守ってくれてるんだ。大丈夫、あの人は怖くない。」と告げます。



現在、隼人は奏にお茶を出すと、耶英には不思議な能力を持っていて、明日の天気や赤ん坊が生まれる日を予知していたと話します。お墓の前には若い青年の幽霊が今でもそこにいて、奏は若い青年の幽霊の気配に気づきます。奏は「おじいちゃんの他に親戚の人って?」と隼人に尋ねると、隼人は「お前たち以外に親戚はいない。」と答えました。隼人は耶英が赤ん坊だった時、家の前に捨てられていたと語り、耶英は犬鳴村の子なのかもしれないと言います。奏は真実を知るためにも犬鳴村に行きたいと言い出しますが、隼人は「犬鳴村は今じゃもう、ダムの底だ。」と教えます。その事を知った奏は犬鳴ダムに向かい、ダムの底を見つめていました。すると彼女は背後に幽霊の気配を感じ、後ろを振り返り、幽霊の腕に掴みました。奏の前にいたのはお墓の前で自分を見つめていた若い青年の幽霊でした。奏が「なんでつきまとうの?あなた誰なの?」と訊ねると、青年の幽霊は「お上のやることはいつも一緒だ。臭いものには蓋をする。」と答えました。奏は「この村で何があったの?自分がどう生まれて、何者かだなんて、気にしたこともなかった。誰でもいい。あなた何か知ってるでしょ?犬鳴村って何なの?」と尋ねました。

若い青年の幽霊、成宮健司は奏を昔の資料が保管されている場所に連れていくと、そこでフィルムを手に取り、映写機を操作しました。フィルムは唯一残された犬鳴村の記録映像であり、健司はそれを奏に見せます。江戸時代、迫害された犬鳴村の村人は山犬をさばいて生活の糧にしていて、周りからは"犬殺し"と呼ばれていました。そんな村人たちの前に理解を示す人々が現れます。映像には彼らのなかに健司の姿もあり、映像を観た奏は「あなた、村の人じゃないよね?」と尋ねます。しかし彼らの正体は電力会社の回し者であり、彼らは犬鳴ダム建設のために犬鳴村の村人たちを暴力でねじ伏せていたたのです。映像を観た奏は回し者のなかにいる髭面の男が晃の先祖にあたる人物だと知ります。健司は「こいつの娘や息子は今ものうのうと生きてる。奴は村の娘を無理矢理閉じ込めて、「犬と交わっている」と言いふらした。」と語ると、犬鳴村の真相を知って目を背ける奏は壁際に立ち、「もうやめてよ。」と叫びます。奏のシャツに映写機の映像が重なり、健司は「そうやって、すぐ蓋をしようとする。ダメだ。君は見なければいけない。彼らから…彼らから目を逸らさないでくれ!」と訴えます。やがて奏の目には回し者たちに苦しめられた村人たちの幽霊が見え、村人たちの幽霊が睨み付けると、奏は涙を流しながら「もうやめて!」と言って部屋から出ていきました。部屋に残った健司は記録映像に映る村の女性を見て、涙を流しながら「摩耶…。」と呟きます。


その後、奏は車で実家に戻ろうとしていました。彼女は母親の綾乃が犬鳴村出身の耶英の血筋を引いてることから父親の晃が「混ざっちゃいけない血だったんだ。」と言ってたのではないかと考えます。奏は電話ボックスの前を通りかかりますが、電話ボックスの前に佇んでいたヒロたちの幻影が彼女の乗る車を追跡し始めます。奏の車は実家近くの鉄塔付近まで進みますが、今度は鉄塔から転落して死んだ明菜の幻影が車のフロントガラスに落ちてきました。奏は思わず急ブレーキをかけて停車します。奏は怖がりながら走行を続けますが、どういうわけか、後部座席にはヒロたちの幽霊、助手席には明菜の幽霊が乗車していました。




夜になり、奏は実家に到着します。怯えてうつむいていた奏が周りを見ると、目の前にいたヒロたちの幽霊と明菜の幽霊が消えていました。彼女は車から降りると、実家の壁には「呪われた家」「出ていけ」「汚れた血」など沢山の落書きがされていました。奏は驚きつつ、実家に入ると、犬鳴村の村人が歌っていたわらべ歌「ふたしちゃろ」を歌っている綾乃の声が聞こえていて、居間には耳を塞いでいる晃の姿がいました。晃は綾乃の元に行くなと忠告しますが、奏が綾乃のいる部屋に向かうと、犬食いで残飯を食べている綾乃の姿がありました。綾乃は犬のような犬歯を持ち、犬のような唸り声をあげていて、まさに犬そのものでした。奏は変わり果てた綾乃の姿を見て言葉を失い、晃が綾乃を必死で止めますが、綾乃は「犬が西向きゃ尾は東だけど、犬が白けりゃ、"尾も白い"よね?」と告げます。奏は泣き出し、2人の前から立ち去ります。

奏は2階の康太の部屋に向かうと、康太が電話ボックスを模した箱に何かを入れていたことを思い出します。奏はジオラマ模型に置かれたその箱を手にし、中を開けると、SDカードが入っていました。彼女はSDカードをパソコンに差し込み、その映像をプレーヤーで再生します。映像には明菜が映っていて、明菜は「犬鳴川にやって参りました。そしてこちら、2時に電話が鳴ると噂の電話ボックスです。」とレポートすると、携帯を見ながらカウントダウンしました。明菜は「2時になりました。」と言って携帯の画面を見せ、撮影していた悠真は「鳴んねぇじゃん。」と言いますが、公衆電話が少し遅れて鳴り出します。明菜が受話器を取って応答すると、「今からそちらに向かいます。」と言いました。映像を観た奏は午前2時に公衆電話の受話器を取ると犬鳴村に行けると確信し、車で電話ボックスの前に行きました。奏が午前2時を待つと、公衆電話がひとりでに鳴り出し、奏は規制線を破って電話ボックスの中に入り、受話器を取りました。彼女が「もしもし」と話すと、受話器から水の音と共に悠真と康太の助けを求める声が聞こえてきました。彼女は「待ってて。」と応え、電話を切ります。

奏がライトを持って旧犬鳴トンネルに向かうと、入口を塞いでいたバリケードが消えていました。トンネルに入ろうとすると、背後から健司が現れ、健司は「やっぱり来てくれたんだね。」と言いました。健司は「君に託したいものがある。」と告げると、奏を犬鳴村に案内しました。トンネルを抜けると、ダムに沈んだはずの犬鳴村がありました。奏が健司の案内で先に進むと、村人たちの死体が道で転がっていました。健司は「電力会社の差し金だ。連中は全て無かったことにしようと…。ここはもうすぐダムに沈む。地図から消されてしまうんだ。」と語ります。奏はダムに沈む前の犬鳴村に来ていたのです。更に先に進むと、村人の遺体を食べている山犬を発見し、その様子を見た奏は驚きます。健司が山犬を追い払います。

奏は健司の案内で一軒の小屋の前に着き、健司は小屋の中で悠真と康太が閉じ込められていると教えます。2人が小屋の中に入ると、幾つか檻があり、奏はライトで明かりを照らしながら見回しますが、檻から何者かの腕が出てきて、腕は背後から彼女の顔を掴まえました。奏は悲鳴をあげようとしますが、奏の背後にいたのは悠真でした。奏は檻の中にいた悠真と康太に再会します。2人がいる檻には南京錠がかけられていて、悠真は「奥に…鍵が。」と鍵の場所を教えます。奏は健司と共に奥に向かうと、奥の檻には山犬がいびきをかいて眠っていました。檻の扉には鎖がかけられていて、健司が鎖を外し、檻の中に入ると、奏は山犬を起こさないよう慎重に壁に立て掛けられていた檻の鍵を手にします。奏は悠真と康太の元に戻ろうとしますが、健司は「おい、こっちだ。」と囁き声を出し、奏を更に奥の檻へと案内しました。奏が階段を上り、檻の中に入ると、そこには健司と関係がある村の女性、龍井摩耶が壁際にもたれかかっていて、摩耶の前には生まれたばかりの赤ん坊がへその緒に繋がれたまま放置されていました。晃の先祖が小屋の中に閉じ込めたのは摩耶で、摩耶の隣には眠っている山犬の姿がありました。健司は赤ん坊に繋がれたへその緒を噛み千切ると、赤ん坊を渡し、「この子を連れていけ。」と奏に頼みます。奏が躊躇っていると、2人の様子を見ていた摩耶は「私の赤ちゃんを返して。」と訴えます。しかし犬鳴村はダムに沈む運命であり、健司は摩耶を止めると、「この村が沈む前にその子だけでも!君しかいないんだ!」と言いました。別の檻にいた山犬が吠え出し、奏は檻の扉を閉じます。



奏は赤ん坊を抱いて悠真と康太の元に向かうと、悠真に鍵を渡しました。悠真が南京錠を外し、康太が奏の持ってるライトで悠真の手元を照らしてる間、摩耶を止めている健司は「俺たちの子を頼む!その子が村人みんなの望みなんだ!村の血を絶やさないでくれ!」と叫びます。赤ん坊を抱いている奏が悠真と康太と共に小屋をあとにしますが、健司は赤ん坊を返すよう訴える摩耶に異変が起きていることに気づきます。摩耶は呻き声をあげると、犬歯を伸ばし、黒目を大きくさせました。

奏たちは旧犬鳴トンネルの中まで逃げ、康太は疲れて立ち止まりますが、後ろを振り返ると、健司がいました。悠真と奏も引き返して康太が見る方向を見つめます。健司は凶暴になった摩耶に襲われていて、健司の背後には摩耶の姿がありました。摩耶は犬のように豹変していて、3人の元に近づいて来ると、摩耶の背後には村人たちの幽霊と犬鳴村の呪いで亡くなった人々の幽霊が現れます。そのなかには明菜の幽霊もいました。悠真は明菜の幽霊に声をかけますが、返事は無く、自分の赤ん坊だと思ったのか、明菜の幽霊はゆっくりと歩み寄ります。悠真は「この子は俺たちの子じゃない。」と明菜の幽霊に告げます。奏で抱えていた赤ん坊は泣き声をあげ、犬鳴村の呪いで亡くなった人々の幽霊は呻き声を出します。


摩耶は止めようとする健司を振り払うと、奏たちに威嚇し、襲いかかろうとしますが、悠真は奏と康太を守ろうと意を決して摩耶に立ち向かいます。摩耶は悠真の左肩に噛みつき、健司も再び摩耶を止めに入ります。摩耶は「私の赤ちゃん、返して!」と訴えますが、健司は「俺たちの子を頼む!」と告げ、赤ん坊を抱いてる奏は悠真と健司が摩耶を止めている間に康太を連れてトンネルから出ました。

奏と康太は山道を歩くと、民家の庭で倒れました。2人は元の時代に戻り、奏が抱いていた赤ん坊だけが残ります。その後、幼少期の祖父、隼人が民家から出てきました。隼人は庭に捨てられていた赤ん坊を発見すると、父親に赤ん坊が捨てられてることを伝え、その赤ん坊を拾います。一方、現在、隼人が家を出ると、庭には奏と康太が倒れていました。隼人は驚きつつも2人に声をかけ続け、救急車を呼びます。病院に搬送された奏と康太は病室で目を覚ましました。奏は病室に悠真がいないことに気づき、康太は「何かすげえ怖い夢見た。(悠真が)夢ん中で女の化け物から俺たちを助けてくれて…。」と語りますが、奏は「あれは化け物じゃないよ。摩耶さん。あの人がいなかったら私たちは生まれて来なかったかもしれない。」と言います。

後日、若いカップルが犬鳴ダムの前で記念写真
を撮っていました。彼らが写真を確認していると、水面に遺体のようなものが浮かんでいることに気づきます。警察はその遺体を回収すると、身元確認のために奏を呼び出しました。奏が遺体を確認すると、明らかに悠真の遺体でしたが、警察が悠真の下半身をシートで隠していることに不審を抱きます。遺体安置所にいた刑事は「お兄さんの遺体は、実は…不可解な状態で発見されまして…。」と告げ、刑事や検視官はみんな複雑な表情を浮かべます。奏は警察の制止を押しきってシートをめくると、悠真の下半身には健司と摩耶の白骨死体がしがみついていました。

翌日、奏は隼人の家に行って事情を説明すると、先祖である健司と摩耶の遺骨を耶英の墓に入れてもらいます。奏は「お婆ちゃんのお墓に入れてもらえてよかった。」と言って2人の名前が書かれた位婢を耶英の墓に置き、隼人は線香をつけると、「やっと両親と一緒になれて喜んでるよ。」と笑みを浮かべて喜びます。2人が両手を合わせると、奏はお墓の横に耶英が微笑んで立っているのを発見し、「お婆ちゃんも笑ってるよ。」と告げました。隼人は「そうだね。」と返し、奏は隼人と共に健司、摩耶、耶英がいるお墓の前から立ち去ります。その頃、康太が戻ったことで綾乃は落ち着きを取り戻します。晃と康太は悠真を失った悲しみを抱きつつ、病院に入院している綾乃と共に微笑んでいました。


その後日、職場に復帰すると、パニック発作で入院していた遼太郎が退院します。奏は迎えに来た優子と圭祐に「遼太郎くんは勘が鋭い子です。もし何か急に不思議なことを言い出したりしても否定しないで優しく聞いてください。」と助言します。彼女は別れの言葉を遼太郎に告げますが、遼太郎は「「お友達によろしく」ってママが…。」と奏の耳元で囁きます。奏は遼太郎の本当の母親に身寄りがなかったことを思い出し、両親と一緒に帰る遼太郎を見送りました。すると遼太郎は立ち止まると、奏の前で手を振りました。奏は周りを気にしますが、周りに幽霊がいないことを確認し、遼太郎に手を振ります。

しかし遼太郎は再び立ち止まると、看護師と一緒に立ち去る奏の後ろ姿を見つめていました。遼太郎の背後には自分の本当の母親の幽霊がいました。実は遼太郎の本当の母親は犬鳴村を出た身寄りのない人であり、遼太郎はその血筋を引いていたのです。遼太郎の黒目が大きくなり、鼻口部が犬のような見た目になります。奏は犬のような犬歯を見せながら指で唇を拭っていました。

THE END

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感想
この映画は『呪怨』シリーズ、『輪廻』など日本を代表するJホラー監督、清水崇監督による実在する心霊スポットを題材にしたジャパニーズ・ホラー。東映の『実録!恐怖の村』シリーズの第1弾で、興行収入14億円超え・動員110万人を記録している2020年上半期のヒット作です。

評判が結構悪かったので不安を覚えつつ、2020年の邦画のヒット作のひとつなので試しに観てみたのですが、言いたいことは無くもないですし、突っこみどころはあるんだけど、まあまあ面白かったです。全体的には恐怖度は低めで、視覚的な恐怖は無いんだけど、ドラマ部分は良く出来ているのでJホラーというジャンル映画としては悪くないと思いました。

物語は臨床心理士の森田奏が犬鳴村に行った兄の恋人が不審死を遂げたり、兄と弟が旧犬鳴トンネルで行方がつかなくなったりと周辺で奇妙な出来事が起こるようになり、真相を知るために旧犬鳴トンネルに入り、犬鳴村に向かう様子が描かれています。

この映画のベースになっているのは「血族の呪い」「家族という逃れられない地獄」ということでしょう。ジャンルとしては手堅いJホラーではあるんだけど、都市伝説を題材にしたホラーであると同時に悲しくも切ない家族ドラマの語り口が織り込まれていて、少なくとも脚本は割りと良く出来ているのではないのかと思いましたね。中盤以降はホラーとして純粋に楽しめるんだけど、終盤で健司と摩耶が実は曾祖父母で、健司に頼まれた赤ん坊が祖母の耶英だったことが明かされた時は「これは家族ドラマだったんだ。」と驚かされるし、それと同時に奏が健司の赤ん坊を連れていったことが後の未来に生かされていたことを考えると、自然と感動させられます。

また、ホラー映画としてはガッツリ怖がらせてくれるホラー演出があり、普通に満足させられます。例えば、序盤で奏たちが放尿したまま家を出た明菜を探すくだりで悠真が明菜と電話している時に明菜が「もうすぐ行くから…。」と告げるんだけど、その時に悠真の前に鉄塔から
転落する描写は犬鳴村に行って常軌を逸した明菜の異常性が露呈していて非常にゾッとさせられるし、荒唐無稽ながら観客に不穏な気持ちを増幅させる演出に仕上がっていて、初見で観た時は驚いてしまいました。或いは前半で旧犬鳴トンネルの中にいる悠真と康太が村人たちの幽霊に襲われるくだりは敢えて康太がバリケードから転落する様子を見せず、康太の声だけを流すあたりなんかはミスリードが効いていてストレートに面白いし、暗闇のなかから村人たちの幽霊がゾロゾロと出てくるところは普通に怖かったですね。あとは中盤の病院内での奏の夢オチシーンは奏と遼太郎が村人たちの幽霊に襲われそうになって、ここで夢から覚めたかと思いきや、まだまだ奏の悪い夢が続いていて、布団から山野辺の幽霊がわーっと出てくるあたりは観客を楽しませてくれる演出としては本当に素晴らしかったです。

役者陣は最近だと着実に知名度を獲得しつつある三吉彩花さんや実写版『弱虫ペダル』などの話題作に出演している坂東龍汰さんといった将来有望な若手俳優をメインに立たせている一方で、高嶋政伸さん、高島礼子さん、石橋蓮司さんとTVドラマや映画で実績を残している実力派俳優で脇を固められていました。個人的には主演の三吉彩花さんが美しいと思う人がいるかもしれませんが、『ミスミソウ』では小黒妙子を演じていた大谷凜香さんはなかなか可愛く、序盤で悠真の部屋の場面で見せる笑顔は良かったし、家の庭で失禁するシーンは実際にやってるのか分からないけど、普通によく引き受けたなあと思いました。少なくとも主にやってる仕事はテレビ東京でやってる『ポケモンの家あつまる?』のみなのか、役者の仕事はこれからなんだけど、出来れば当たり映画に出演して着実にキャリアを積んでいってほしいです。

ラストは様々な意見があるかと思いますが、物語としてはとてもいい着地だと思いましたね。遼太郎を生んで亡くなったシングルマザーが犬鳴村出身の女性だったのは良くも悪くもサプライズになっていたし、奏が綾乃や摩耶のように犬のようになっちゃうあたりは様々な解釈が出来そうです。恐らく奏は自分のルーツを知ったことで、ふとした瞬間に犬女になってしまっても運命を受け入れて前に進もうとしたのでしょうか。或いは遼太郎や耶英のように犬鳴村の血が受け継がれ、一件落着だとしても決して犬鳴村の呪いは終わらないと暗示しているのでしょうか。いずれにしても余韻が残る終わりかたになっているので割りと上手くできていたんじゃないかなと思いました。

ただ、これまで様々な海外のホラー映画を観てきたんだけど、突っこみどころは目立つどころか、怖くないホラー演出があり、そのせいで完成度があんまり高くない映画に仕上がっていました。例えば、古川毅さん演じる成宮健司の役割でしょうか。実質前半だと奏の周りにいる青年の幽霊になっているんだけど、健司が資料館らしき場所でフィルムに触り、映写機を操作して記録映像を奏に見せるので彼が幽霊なのか?生身の人間なのか?何がなんだかよく分からないことになっていました。恐らく推察するにあたって健司は幽霊じゃなくて何らかの方法で奏たちが生きている今の時代に来ていて、奏に接触を試みた生身の人間という解釈が取れそうなんだけど、だとしても中盤で奏の先祖のお墓の前でなんで突っ立っていたのか分からないので整合性がつかないし、辻褄が合わないです。

或いは、クライマックスでトンネル内で奏、悠真、康太の前に赤ん坊を取られた怒りで豹変した摩耶が立ちはだかるシーンでどういうわけか、明菜、ヒロたち、山野辺と犬鳴村の呪いで亡くなった人々の幽霊が村人たちの幽霊と一緒に出てくるんだけど、犬鳴村の呪いで亡くなった人々の幽霊をここで出させるのは必要性が全く感じられませんでしたね。そもそも明菜は遊び半分、悪ふざけで行ったからというのが根本的にあるし、ヒロたちは悠真を止めてるから犬鳴村に行ってないものの、リュウセイが呪いの電話ボックスを使ったせいで溺死してしまったからだと言えるでしょう。しかし山野辺先生は森田家の一員じゃないし、彼が晃と同じように犬鳴村の事情を知ってる割りにはあまり掘り下げが無いから犬鳴村と直接的にどう関係し、どうような背景があるか分からないから説得力に欠けるんですよね。しかも山野辺は彼が溺死しちゃった理由は推察の余地を与えているんだけど、健司の役割そのものは厳しく言えば万能過ぎてるので、せめて犬鳴村の真実を語ったり記録映像を見せたりする役割は健司だけに担うんじゃなくて山野辺にも与えたほうが良かったんじゃないのかなと感じました。

また、このシーンでは悠真が明菜の幽霊に「この子は俺たちの子じゃない。」と告げるんだけど、結局明菜が実は妊娠してたというエピソードが記号的で中途半端であり、村人たちの幽霊と明菜たちの幽霊が赤ん坊が奪おうとしたり摩耶を止めようとしてこないのはおかしいし、どう考えても作り手が悠真と明菜の幽霊を対面させるくだりをこのシーンでやりたかったように見えない感じになっていて、いわゆる作り手の意図だけが先に立っちゃってる場面だと思いました。おまけに細かいところを挙げると、序盤で悠真とヒロたちが旧犬鳴トンネルに行ってる間に車中で待機していたシンが一切登場せず、生きてるのか死んでるのか分からないのもどうかなと感じましたね。

あとは一部のホラー演出が的外れで、恐怖があまりにも伝わって来なかったことでしょう。特に中盤以降は的を得ていないホラー演出になっていて、ヒロとリュウセイが電話ボックスに閉じ込められて溺死するくだりではわらべ歌の「ふたしちゃろ」をバックに周辺に誰もいないのに電話ボックスの中が満タンになっていくところを映す引きのショットは素晴らしかったのですが、次のカットに切り替わると、マジックの種明かしみたいな感じで村人たちの幽霊が電話ボックスを囲む俯瞰のショットになるので恐怖感が一気に萎えるんですよね。或いは後半で健司が奏に犬鳴村の映像を見せるくだりで奏が犬鳴村の真実を知って拒絶するシーンがあるんだけど、そこで出てくる幻影のように出てきた村人たちの幽霊が奏を囲んで睨み付ける描写が映像表現としてはどストレート過ぎてて、もうちょっと編集で回し者が村人を痛めつける残酷描写を入れるとか、村人たちの動きを工夫しないと非常にいただけない作りにはなってるんですよね。

あとはクライマックスで犬と化した摩耶が襲いかかろうとするくだりが冗長気味で、犬と化した摩耶だけではスケールが非常に小さくなっていることです。このシーンでは奏たちにとっては摩耶が突然豹変するので状況的に怖いんだけど、摩耶が抜き足差し足しても、俊敏な動きをしても凄みや緊迫感が全く無く、演出上全然恐怖を与えることができないことになっていました。それに加えて、さっきの話と繋がるのですが、そのあとに健司と悠真が摩耶を取り押さえるシーンがあるんだけど、クライマックスで村人たちの幽霊と明菜たちの幽霊が役割が無いまま消えるせいで盛り上がりに欠けていて、非常に納得しづらい展開になっていました。それならいっそ明菜の幽霊とヒロたちの幽霊が健司と悠真に手を貸して摩耶を止めたほうが物語上まだ良かったんじゃないのかなと感じました。

ということで、犬鳴村の都市伝説が題材になっているのでやってることは間違ってない。この映画が大ヒットしたことは非常に喜ばしいことだし、肝心のドラマ部分はしっかりしていてこてんぱんに叩かなくてもいいほど良く出来ていたんだけど、結果的には世評通り、突っこみどころが目立つし、ホラー演出のせいか、怖くないシーンがあるしで純粋に評価し難い映画であることは間違いないと思いました。個人的にはこの映画で若手俳優を顔と名前を改めて知ったり清水祟監督の手腕と資質を知ることはあっても、この完成度じゃいくらなんでも日本でヒットした名の知れたホラー映画のほうが完成度が高くて他人にオススメしやすいんじゃないかなと思いましたね。それでも山口まゆさんと山田杏奈さん主演の『樹海村』が『犬鳴村』よりも完成度が上であることを祈りたいし、日本のホラー映画にはなんとか頑張ってほしいという思いも込めて是非ともレンタルや配信で観賞してみてください。