その人は

とても強くてたくましい人でした。

だけど

とても弱くてやさしい人でした。






その人は

自分の弱さがダメなんだと思っていました。

もっと強く

もっとたくましくなって

こんなことでくじけるような人間を卒業せねば!

と思っていました。






彼女は

その人の強さとたくましさが

頼もしくもあり

心配でもありました。





彼女は

その人の弱さとやさしさを

愛おしく思っていました。





たくさんの人が

その人を強くて怖いというけれど

彼女は

あの人はとても弱くてやさしい人なのよ

と笑っていました。






その人は

たくさんの武器と装備を手に入れました。

彼女は

その武器と装備をはずした彼が好きでした。





彼女は

そんな武器と装備がなくても

あなたはとても強くてたくましい人なのに…

そう思っていました。






その人は

ますます強くたくましく

ならないとダメなんだと

もっと強くたくましくなろうとしました。





彼女は

これ以上強くたくましくなると

折れてつぶれてしまうんじゃないか

と怖くなりました。





たくさんの武器を持って

たくさんの装備を身につけて

その人の芯が

折れてしまうんじゃないかと

怖くなりました。







彼女はその人に言いました。

私はあなたの弱くてやさしいところも好きなのよ。



その人は傷つきました。

こんなに強くたくましくなったのに

まだ弱くてやさしいと言われるのか…

と傷つきました。




その人に

彼女の好きは届きませんでした。

その人は

彼女に強くてたくましい人間だと

認められるまでがんばろうと思いました。






その人は

ますますたくさんの武器と装備を身につけたので

彼女は

その人が見えなくなりました。

彼女に見えているのは

武器と装備がいっぱいの黒い塊でした。






彼女は

武器と装備をいっぱいつける前のその人を

思いだしていました。

彼女の目に映るその人は

とても美しく虹色に輝いていました。

とても弱くてやさしくて

とても強くてたくましいその人は

大きな愛の持ち主で

いつも美しく虹色に輝いていました。





とても弱くてやさしくて

とても強くてたくましい

大きな愛の持ち主のあなたに会いたいと

彼女は思いました。







そんなある日

その人は

彼女が目の前にいないことに気づきました。

こんなに強くたくましくなったのに

一番見せたかった彼女が目の前にいないことに

やっと気づきました。




彼女だけではありません。

自分の周りには

人がいないことに

やっと気づきました。

自分の周りには

黒い武器と

黒い装備だけで

重くてかたくて冷たい武器と装備に囲まれて

身動きが取れなくなっていることに

やっと気づきました。





その人は

彼女に会いに行こうと決めました。

この重くてかたくて冷たくて

強くて黒い武器と装備を

すべて外して

彼女に会いに行こうと決めました。





だけど

とっても怖くなりました。

武器と装備をはずした自分は

彼女にふさわしいのか?

と不安になりました。




こんな弱くて頼りない自分で

彼女に会いに行けるのか?

と不安になりました。






不安だったけれど

彼女に会いたい気持ちが

どんどん大きくなっていくので

その人は

勇気を出して

一歩を踏み出しました。





一歩を踏み出して

その人は気づきました。

なんて身軽なんだ!

なんて自由なんだ!




その人は今まで

武器と装備の重みで

歩きにくかったんだということに

気づきました。

自分が弱くて頼りないから

しっかり歩けないんだと

思いこんでいました。




ボクが弱いから

しっかり歩けないんじゃないんだ。

武器と装備があったから

しっかり歩けなかったのか。





その人は

武器と装備をはずして

一歩一歩ふみしめて

彼女に会うために

歩きました。






彼女は

虹色に光り輝く存在が

遠くから

近づいてくるのを

感じていました。





それは

とてもとても美しく

光り輝く虹色でした。





彼女は

その人が

帰ってきたことに気づきました。





武器と装備をはずしたその人は

大きな大きな笑顔で

彼女に手を振っていました。




たくさんの虹色の光を放って

その人は輝いていました。






彼女は言いました。

おかえりなさい。

大好きなあなた。

とっても弱くてやさしくて

とっても強くてたくましい

大きな愛の持ち主さん。

あなたはとても美しい

虹色の光よ。








おわり。