我々カンパニーのサイゴン、幕開けです。キャスト、オーケストラ、スタッフの思い、決意、情熱が込められている舞台です。


プレビュー公演は日本では馴染みのない習慣です。ブロードウエイなんかでは大抵オケ合わせがあり、テック・リハーサル(舞台稽古)、ドレスリハーサル等を経て、4週間のプレビュー期間があります。この中で修正事項があれば色々直しを入れたり、ヴァンプの尺を試したり決めたり色々します。


日本のミュージカルはプレビューなしに怒濤のようなスケジュールで通常やるので、よくやるなぁと思うこともあります。ただ、ブロードウエイは一度ショーの流れが決まったらそれで大体セットされます。だから日本に較べたらショー的要素が強いかも知れません。オレもブロードウエイでレギュラー、エキストラ含め8つのショーで演奏しましたが、日本での限定期間公演により「芝居が変わり、成長する」楽しさ、喜びがあると思います。


このサイゴン、役者稽古をオケ合わせの前に二回観に行きました。役者の空気感、息遣いを感じたかったのと、ブロードウエイでやった先入観を捨て、2012日本プロダクションに臨みたかったからです。


それぞれのメンバーの意気込みと想いにはとても熱いものがあります。人生懸けて表現しようという人間の集まりですね。だから様々な化学反応からミスやリスクも出るかも知れない。


でも、生の空間の化学反応を取り去ったら生命は生まれないものです。オレらはリスクを怖れない人間です。ミスよりも芸術の死を恐れる人間です。だから誰が何を云おうと全開で叩き込みます。自分の感じている事を舞台を感じながら冷静に映し出す事と、エネルギーの塊をぶつける炎と氷を同居させるのが芸術と信じる人間です。


感情に囚われて己を見失うことはしない。しかし命は産み出さねばならない。それがプロフェッショナルだと思います。


自分の中での感覚の修正事項が幾つかあったのがわかったのでそれをより良くしていかねば。でも今日は充実のプレビュー初日だったと思います。皆さん、お疲れ様でした。2012年ミスサイゴンの旅が始まりました。