昨日のレミゼ2公演ではある工夫をしてみた。

トランペットにはマウスピースという唄口があり、唇がマウスピースのカップの中で共鳴してそれが楽器と言う増幅体を通して音となる。つまり楽器とマウスピースの組み合わせ、それぞれのバランス、自分の身体の使い方、重心設定等で造られるサウンドの質感、キャラクターが変わると云うことだ。


それのバランスを、2幕のオンマイオウンの後からファイナルバトルの前まで少しコンパクトなマウスピースに変えたらドンピシャでいい感じになった。ファイナルバトルはかなりイエロー/レッドゾーンなので助かる。交響楽団の演奏会では演目中にはマウスピース交換はしないが、スタジオやピットでは度々ある。ブロードウェイの「フォッシー」では、リードトランペットのクレイグ・ジョンソンが三本上手に使い分けていた。


ミュージカルの「オケ」というのは、所謂「交響楽団」とは違った物が要求される。重心移動の柔軟性、様々な音楽のスタイルの理解(今の日本の音大では少なくともトランペットに於いてはこういう教育は皆無) 、サウンドの引き出し、音域等が広めである。


レミゼもクラシカルな要素もあるけど、8ビートな音楽もあり、様々な要素があるから、シンフォニックに吹くとタイミング的に遅れるし、スタイル的に重い。交響楽団の奏者がいきなりミュージカルを演奏したらほぼ絶対タイミングが遅い。シャープにピシッと音の一番太い部分を大きく、軽やかに音の出だしに持ってこなければならない。ただ、これを交響楽団でやると軽すぎるし、速すぎる。何事もTPO。


様々な交響楽団の客演首席奏者として演奏し、ミュージカルもブロードウェイと日本で十数演目やった経験談かな。


個人的な感想だが、ミュージカルのトランペットに関して言えばニューヨークの方がロンドンよりもシャープでアグレッシブな気がする。また、レミゼなんかだとフルオケ編成のアレンジがゴージャスに響くけど、ミュージカルは所謂20人前後編成のサウンドがなんかしっくり来る(去年6月に帝劇でやったキャンディードは14人、2本のラッパパートを1つに押し込み、全乗りというサバイバルな演目だった笑)。


ピットていうのは中々奥深く、楽しく、厳しく、とても身体を張る職業ですわ笑 みんな誇りを持ってると感じます。あとね、笑顔=不真面目というのは違うと思います。余裕あっての集中力だから。