川崎F1‐3北京国安~観客身の上話~その2 | 残留戦線

川崎F1‐3北京国安~観客身の上話~その2

「こんな寒い中、来るんじゃナカータ」

なんて思考は、ネタとして今思い付く位なものだ。

実際には、こう叫んだ。

(」゜□゜)」「てんけんくん に、よろしく」

僕が読んだ事の無い、漫画ブラックジャックによろしく みたいなノリでは無い。

てんけんくん は、どうしたものか土曜日に引き続きお休みであったからだ。

二試合続いて、てんけんくん を欠いたふろん太くん。

白い株に、多くは望めない事だけは確かであった。

だからこそ、彼の存在を確認しておきたかった。

ふろん太くんからは 、一瞬気負いを感じたものの……。

直ぐに元気いっぱいに、ポーズを決めていた。

そしてゴール裏に向かうも、観客はふろん太くん に気付いてあげられ無い様子。

また、ここで叫ぶ必要性が発生した。

「ふろん太くん が、きたよ~」

ふろん太くん は、フレンドリーにも最前列の人と握手を始めた……。

すると、今までの空気が一変はしなかった。

残念ながら、観客は身の上に降りかかる みぞれ雪にこそ注意を払うものの……。

ふろん太くん のフレンドリーに応える様子は、最前列の人にしかナカータ。

そうして、こうして試合も終わり……。

アウェイ側サイドスタンドでは、選手挨拶が行われたものの……。

それ以降は、散発的ながらブーイングが起こっていた。

そのために選手達は、てんけんくんへの愛(いと)しさと切なさと心強さを抱きつつゴール裏を後にしたのであった。

そんな表舞台の裏で、僕の両手は心底冷え切っていた。

さらに悪い事に、ポリ袋に入れた荷物を振るって雪を払う際に……。

決定的なダメージを負った。

そこでじっとしていれば、楽になるならば僕は時間をスタジアムで過ごしていたかもしれない。

しかし、現実は何も両手を助ける術は無かった。

既に赤くなった指は、目に見えて膨らんでいた。

そして指の感覚すらも、失われつつあった。

この時に、冬季シベリア出兵を決断した指導者達の愚策を身をもって体験した。

寒さは身体の自由を凍り付かせ、理性を浸食するのである。

逆にこんな極限と呼べる環境化でこそ、エクストリームアイロニングが光輝くのだ。

そんなネタを今思いついて、心に光が差し込んだ。

帰り道、少年達と大人の冷淡さを比べる余裕すら失った中で……。

サントリー自販機で、ホットミルクティーを握り締めて帰路についたのであった。