「Concordeって?」
「コンコルド。聞いたことない?世界で一番早い旅客機。独特な形といいあの速さは素晴らしい」
「・・・ふーん」
事務局長は、自宅のメルアドやHNに「concorde」を好んで使っていた。
早いことは高度な技術の証明、仕事効率がよくて無駄がないから好きなのだと。
今ではネットでどんな飛行機かそれに対する情報も一瞬にして把握できるけど、ネットサーフィンしようにもネット上の情報自体が揃っていないその当時にはどんなフォルムかすら知り得ず、ふーんと聞くだけだったけど。
concordeとついたメールは、事務局長との2年の間に100通以上の往復書簡で私のもとに届いた。
まだ使用媒体はフロッピーディスク、データをメールで送るなんてまだ先の話。
それでも、この電話以外のコミュニケーションツールで随分と色々な話をした。
今のSNSよりもずっと「手紙」な、メール。
仕事の内容が8割近くではあったけれど、立ち話では出来ない話をするのに十分だった。
共有の秘密を「concorde」は抱えて飛んでくれていた。
抱かれて帰ってきたその夜
まだひりつくような手の跡が残る身体のあちこちに触れながら、今日のことを思い出していた。
現場、自部署での仕事のストレスはとても大きかった
退職願を出したのは何日も前のことみたいなのに、それはほんの今朝の話で。
その退職願はもう理事長に破かれてしまっていて。
そのままならば、退職撤回?
でも
きっと辞めるのを止めても何も変わらない。もっと追いつめられるだけなんだろう
事務局長は、私がどうこうでは揺らがない
言われていた仕事は、だいたいめどがついた
誰が味方なのか敵なのか
頭痛と吐き気、色々を思い出すと、足先や指先から痺れのような過呼吸発作が起きてくる
睡眠薬は体に合わないようで、余計に吐き気を増長させた
逃げたい
sanaさんへ
パソコンから軽い音がして、
メールボックスに事務局長からのメールが届いた。
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concorde、を今調べてみて驚いた。
東京-ハワイが3時間、その圧倒的な速さや技術力、ホスピタリティの高さゆえの採算度外視がたたってconcordeは2003年に全機撤退をしてた。
速さや技術力、それらの仕事効率だけではバランスが取れない、技術が素晴らしければ素晴らしいほどに技術に入り込む。かすれがちになってしまうユーザーとの対話、ディベートが一体どのくらい行われていたのだろうか・・・。人々の注目を集めながらも最終的には「やっかい」とまで言われてしまった悲劇の飛行機。
ただ、滅した今でも人気があるそうだけど。
思わずかつての事務局長と重ねてしまった。
そして、あの頃の自分自身とも。・・・ディスるわけじゃないけど。
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