君は眼で欲望を語る | 1.5人称の恋

1.5人称の恋

私たちの時間は、いつのまにか26年になった。
絡んだ小指くらいでつながる遠距離の婚外恋愛は、焦がれすぎても続かない

「待つ。・・・って、何を待つんですか?何に賭けるんです?」

 

「君の仕事が声を上げるのを待つ、ということ」

 

「わかりません、事務局長が何を言いたいのか」

 

 

「もう少し大人になりなさい。気にするアンテナを鈍くする。ハリネズミみたいにしないの」

 

 

 

 

そう言うと、私の頭にぽんと手を載せた。

 

 

「妥協ってことですか」

 

 

「・・・妥協は諦めることでも負けることでもない。曲げることでもないよ」

 

 

「年齢にふさわしくあれと言ったかと思えば大人になれって・・・どうしたらいいんです?」

 

 

「・・・いちいち若い。自分の若い時を見ているみたいで余計に歯がゆい。・・・君が男だったら面白かっただろうに、もしくは24ではなくて35歳の君に出会いたかった、40歳でもいいな・・・それなら」

 

 

そう言うと、ふっと目の光を緩めた。

 

「タラレバだ。そうじゃないのが現実で。じゃじゃ馬には腹を据えて一から教えなきゃならない」

 

「・・・・」

 

 

 

「それと、ああいうすがるような目をしちゃいけない。私以外には」

 

 

「ああいう目?」

 

 

「言いたいことを言い放つのに悲しそうな苦しそうな眼をしてはいけない。負けるよ相手に。緩い隙を突かれる。もっと強くメリハリをつける。その発言に自信を持て。ただし」

 

 

そう言うとぐっと抱き寄せる。 強い力に肩の力が抜けそうになり向かい合う。

事務局長は口元にいつもの、見抜くような笑みを浮かべて

 

「私には構わない。その裏にある“今日は抱いて”を読み取れるから。君は眼で欲望を語るから飲み込まれそうになる。」

 

 

「・・・・違います、そんな」

 

 

「違わないはず。こう思ってない?今日は抱いて、こんな気持ちをずっと持ってはいられないって」

 

 

「・・・ずるい、そんなの」

 

 

「何が。こうやって心の辛さを身体で癒すのも大人になる近道です。自分のごまかし方を知りなさい。行きつくまで溺れたらいい。そこから次に進める」

 

 

「ごまかす?ムカつきの片棒をかついだの事務局長ですからね」

 

 

「言ったでしょ、仕事も恋も全部教えるって。仕事も恋も不都合の集合体なの、思うとおりにはいかない、だからのめり込む」

 

 

事務局長には手が届く時と手が届かなくなる時がある。遠くにいるかと思えば近くで、近くにいるつもりなのに遠くて。ひらりひらりと。

 

おもわず口をつく。

 

「遠い」

 

 

「だから距離を縮める。手を離すのは君、君が手を離すまでは離さないって前にも言った。勝手に遠く感じないで。近くにいると何度も言ってるのに何を怖がる、俺はここにいる」

 

 

 

わかってくれない事務局長は嫌い、どうしてと思う気持ちもありながら、でも合わせ鏡のような痛みを心の中に潜ませるこの人を私は絶対に嫌いにはなれないと思った。

理解されているのは間違いなかった、私の裏も何もかも読まれている。その心地よさは束の間だと思っても抗えない、飲み込まれているのは私で。そして抱かれたら安心していられる。

 

 

ドン、と悔し紛れに胸をこぶしで叩いた。もう一度叩こうとした腕は押さえこまれて

 

「またごまかす。・・・抗っても身体は正直。どう弁解するの?さて、と」

 

 

 

 

 

 明日、が遠のいていく。

 

 

「身体で相手を理解する」ことは、確実に意識を支配していった。

 

 

 

 

 

 

 


女の本音・女心ランキング

にほんブログ村 恋愛ブログ 秘密の恋愛へ
にほんブログ村